freestyle16 似た者同士
NHKのドラマ『野田ともうします。』。
これまで観たことが無かったのだが、まとめてみる機会が訪れた。3回目の接種をしたら、想像以上に辛くて丸1日起き上がれなかった。こういうときはコメディを観るに限る。
『野田ともうします。』は2010年〜2013年にかけて3シーズン放映された5分程度のショートドラマだ。
なんで今まで、観なかったんだろう、と思った。
非常に「私好み」のドラマだった。
そうだ。2010年当時はタイにいた。
しかも、最初の3年くらいはインターネットTVが見られなかった。
再放送されるまでそりゃあ観れんわ。
くうう。リアタイで観たかった。
野田さんは、群馬県出身、埼玉にある東京平成大学文学部の1年生(という設定)の18歳女子である。といっても演じているのは江口のり子さん。もうそれだけでタダものではない気配が濃厚に漂う(出演されている方々が10年も経つというのに現在ほとんどお変わりないことにも驚く)。
野田さんは、いったんスイッチが入ると、その歴史からなにからとことん調べずにはいられず、そしてその知識を唐突に惜しげなく披露する「癖」がある。太宰治と露文学をこよなく愛していて(※ちなみに露文学としたのは、全然戦争と関係ない内容なのにカタカナ表記しただけで関係ある記事の注意書きが出てしまうため)、世の中のことを文学になぞらえて理解したり説明したりするので周囲の人には不可解極まりない。そういう人、なのである。
そのためファッションや恋愛やスィーツに夢中な同世代の女性たちとうまくおつきあいすることができない。地味な服装に眼鏡、長い黒髪を後ろで三つ編みにしていて、いつも本を読んでいる。ブログを書いたりラジオに投稿したりするときの名前は「ノダマーゾフの兄弟」。
癖が強すぎてドン引きされるに違いないと思いきや、周りの人々は、気がつくとそんな野田さんに夢中である。バイト先の同僚も、大学の先輩も、突拍子もない疑問を投げかける野田さんを愛で、観察し、自ら関わらずにはいられなくなる。ある意味、魅惑の女性だ。
かたや、久能整くん。
ドラマになってますます絶好調、弁舌が冴えている。『ミステリと言う勿れ』の主人公。彼もまた某大学で心理学を学ぶ学生だ。たしか二十歳。
天然パーマにマフラーがトレードマーク。10巻まで既刊だが、お話全体がひと冬の話。おそらくは家庭環境が要因のトラウマを抱えていて潔癖症である。美術鑑賞とカレー作りが趣味で、友達がいない。部屋は超〜きれい。
そして彼もまた、博学の知識を惜しまず披露し、その観察眼と洞察力を駆使してひたすらに喋りまくる。
野田さんと整くん。
まさかのまさかでふたりが出会ってしまったら、果たしてどうなるのだろうか。まあ、熱なんかあるときはこういう妄想をしがちである。笑
朝まで蘊蓄が止まらないのでは…なんて想像するだけでワクワクする。
そんなふたりには、たぶん誰もつきあってあげられないだろう。
呆然とし、そのうちみんな寝る。
途中でご飯を食べに行く。
それぞれ家に帰って、また集合して戻ってきても、まだふたりは話している。
見たい…
でも残念だ。
野田さんはわからないが、整くんは好きな人がいるみたいだ。
ああ、ふたりの遭遇。
怖いけど、見てみたい。
しかし。
最悪の事態も想定しておくべきだろう。
「〇〇といえば、知ってますか?」
などは2人の常套句なのだが、2人が話した場合、高確率で、知っている話ばかりかも知れない。
そうなると、こうなる。
そのうち、
と、大喜利みたいになってくるかも知れない。
うまく嚙み合えば話が止まらなそうだけれど、噛み合わなくなるとおかしなことになりそうだ。
それに『銀魂』じゃ、「似てる二人は喧嘩する」というタイトルがあった。もしかしたら険悪になっちゃうんじゃないか。
たまに、知の巨人の対談!などの惹句を中吊りで見ることがあるが、実際の記事を読むと、結構、年齢差でどちらかが遠慮したり、マウント合戦になったりそれぞれの専門分野の話だけを話し始めたりして本題から離れてしまっていることもある。うまく彼らを誘導する第三者が必須だ。
この世には、聞き役がいてこそ成り立つものがある。
運命の相手なのか。
それとも宿命のライバルか。
こういうのは歴史上あり得ない「戦国武将」「軍師」などで想像してみたことのある人も多いのではないか、と思う。織田信長VS伊達政宗、とか。官兵衛VS半兵衛とか。他にもその世界で比肩するもののない実力者同士や、あるいはタイプ的に似ていると思われる同士が戦った場合、果たしてどちらに軍配があがるのか…気が合いすぎて戦えなくなるのか…
そう言えば、最強動物を比べる「対決」シリーズなんて言うのもある。
これ…そう言う話?
まあ、いいや。
そして私が本当に好きなキャラクターは、野田さんの友達でめったに声を出さないが、だれよりも野田さんを愛し心の中で野田さんに突っ込みまくっている重松さんだ。ラジオネーム、ミッション・シゲマッツブル。
重松さんはこの漫画(ドラマ)に欠かせない存在だ。
あらゆる話は、第三者のツッコミがいて初めて面白くなる。
野田さんと整くんがどこかで出会い、その会話を妄想するのは、野田さんの「手影絵サークル」の先輩、三本木さんに近い発想かもしれない。三本木さんは常に野田さんに興味津々だ。ドラマでは安藤サクラさんが演じている。
どうでもいいことだが、このドラマの安藤サクラさんは、お母様の安藤和津さんによく似ている。髪型のせいだろうか。
三本木先輩の妄想に、副部長の佐藤先輩が同調する、と言うかむしろ煽る。この二人、なんだか常に楽しそう。野田さんが入部して、毎日が充実している感じだ。
部室でお菓子を食べながら、
なんて言いそう。笑
そして重松さんなら、昆布でも噛みながら、こう言う(全部心の声)だろう。
そしてピタゴラスイッチでおなじみの栗コーダーカルテットの音楽がまた、ほのぼのとして良い。熱でぼやっとした頭にとても心地よかった。
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