今年の映画
今年は、あまり映画を観なかった。
観に行きたい映画はたくさんあったのに、ひとりではなかなか腰が重くて動かないものだから、ついつい先延ばしにしているうちに映画が終わる、ということが多かった。
印象に残っていない、ということもある。
観に行ったのだが、記事にしなかった、という映画も多い。
コンクリート・ユートピア、ゴールデン・カムイ、猿の惑星/キングダム、SALAAR /サラール、オッペンハイマー、告白コンフェッション、ソウルの春、シビル・ウォーアメリカ最後の日、パリの小さなオーケストラ、グラディエーターII
この中で、記事を書いたのは『ソウルの春』、たったの1本だけだ。
毎年話題になる「今年の1本」についても、まだ夫と話もしていない。
今年の1本は決められないが、簡単に観た映画を振り返っておこうかと思う。
普通にネタバレがあるので、ネタバレを回避したいかたはご注意を。
コンクリート・ユートピア
韓国映画。突然大災害が起こって、壊滅的な打撃を受けたソウル。唯一、倒壊しなかったマンションで起こる悲劇を描く。どうやら全世界的になにがしかの災害が起こったらしく、情報も入ってこなければ、物資もない中、生存者たちはそのマンションの噂を聞き殺到する。マンションの住民が自分たちだけ助かろうとするさまはまるで芥川龍之介『蜘蛛の糸』で蜘蛛の糸を独占しようとするカンダダそのもの。住民たちの間でも諍いは絶えず、必要に迫られて住民の代表に選ばれた男が実は訳アリの男で・・・と、単なるパニック映画ではなく、サイコサスペンス的な要素を併せ持っていて飽きない展開。最後には復興に向けての救いが見えたが、マンションという閉ざされた空間で追い詰められた人間たちがどう振舞うかにはリアリティがあり、災害も恐ろしいが人間も恐ろしいと思わせてくれる映画だった。今はパク・ソジュンが出ているのが気になる人が多いのかもしれないが、私はイ・ビョンホン世代。
ゴールデン・カムイ
邦画。漫画原作の映画化。といえば当然主人公を演じるのは山崎賢人。漫画の実写化といえば小栗旬と山崎賢人(最近は山崎賢人オンリー)、時代劇と言えば岡田准一がほぼ定着。とはいえ、再現度高いと評判だったので劇場に観に行く。原作は読んでいないけれど、キャラ設定と物語の骨子が良いのか、漫画を読んでいなくても楽しめた。不死身の杉元の身体がすごい。役作りのための肉体改造に力を注いだのだろうとわかる体格で、それだけでも山崎賢人の気迫と本気を感じた。物語は途中で終わっているので、当然続編があるものと思って観た。杉元の相棒となるアイヌの少女が妙齢の女性になっていることに違和感があるというのを何かで読んだが、漫画未読のため気にならなかった。続きが楽しみ。
猿の惑星/キングダム
『猿の惑星』は第一作の記憶が鮮烈すぎて、それ以後どんな「猿の惑星」を見ても「うーむ」と思っていた。繋がりが見えなかったからだと思う。今回は前回の『猿の惑星 聖戦記』から300年後、シーザー亡きあと、猿の世界で支配するものと支配されるものが生まれている世界。次に続く1968年の代一作との間をつなぐ物語らしい。期待して観た。確かに、第一作目との間を繋ぐようなものが存在したりしていたり、人間も、動物の様な人間と、人間の文明を維持し続けている人間の二種類がいることが示唆されていた。『猿の惑星』を見るたびに、人間ってやっぱり地球にとっては要らない生き物なんじゃないかなと思う。
SALAAR /サラール
『RRR』が楽しかったので、ものすごく期待して観た。が、『RRR』のようなものとはひと味ちがっていた。バイオレンスアクションに重きを置いた映画で、架空の王国(マフィアの国っぽい)が舞台。「ヒーローが放逐され、帰還して無双する」、簡単に言えばそう言う話だったけど、登場人物が多すぎて結局最後どうなったんだっけ、と今思っている。
オッペンハイマー
原子爆弾の生みの親とされるオッペンハイマーの生涯を描く。アカデミー賞で最多7冠との触れ込み。映画『バービー』とオッペンハイマーをかけた「バーベンハイマー」というネットミーム現象が米国で起こり、日本での公開が遅れていた作品。様々な物議が醸し出されていた。監督はクリストファー・ノーラン。興味津々で観に行った。クリストファー・ノーランらしいシーンは、毒林檎のシーンだけだった気がする。いろいろ言われているけれど、あのシーンだけで、クリストファー・ノーランがオッペンハイマーを「ヤバいヤツ」として描いたのだと理解した。社会のありよう、功名心、戦後の罪悪感などを差し引いても、未必の故意の様な形で人を殺したいと願ったことのある描写がすべてだったのではないか、と思う。米国人である監督にとってあれが精いっぱいだったのではないか。などと思った。
告白コンフェッション
生田斗真とヤン・イクチュンのW主演。雪山で遭難し山小屋に避難したふたりが、過去の殺人をめぐって心理戦から恩讐に塗れた最悪の一夜を過ごす。原作漫画があるらしい。漫画未読。割と最初から夢オチだと思って観ていたが、どうせならこれは、舞台で二人芝居としてやった方が面白いのではないかと思った。同じ場所で延々心理戦を見せられるのに、映画である必要はないなあと思った。生田斗真はいい役者さんなのに、どういうわけか代表作のようなものが無くて、なんか今回も体当たり演技の割には報われなかったんじゃないか、とちらりと思った。
ソウルの春
先日韓国で戒厳令が出たとき、この映画を思い出した人は多かったのではないかと思う。今年の1本はこれかもしれない、強いていえば、だが。
シビル・ウォーアメリカ最後の日
「A24」の映画だったと知っていたら絶対観に行かなかった。トラウマレベルの「ミッドサマー」に始まり、「エブエブ」みたいに何とも言えない作品もあって、「A24」の当たり外れ感がすごいので、できるだけ「A24」の映画は劇場では観ないようにしていたのに、夫に誘われてうっかり観に行ったら「A24」だった、という映画。映画の内容は案の定、微妙。とにかく銃声の音が最初から最後までガンガンに響き渡る映画で、心理的圧迫感がすごい。あと、通りがかった場所で見てはいけないものを目撃してしまい、ピンクサングラスのエルトンジョンみたいな兵士がアジア系の男性二人を殺害するシーンではあまりのいきなりさに「ひゃ!」と声が出てしまい、恥ずかしかった。ああいうのが嫌いなんだよ「A24」。あ、ストーリーは、米国が国を二分して紛争になり、戦場カメラマンの女性と、カメラマンになりたい女子がチームと一緒に激戦区になったワシントンへ大統領に会い行くロードムービー。政治的にどうという話はいまいち語られないので設定がふんわりしているのに、紛争下の狂ったアメリカだけがリアルに語られる映画。
パリの小さなオーケストラ
パリのオリンピック閉会式で演奏した、ディヴェルティメント・オーケストラの成り立ちを元に作られた実話。指揮者であるアルジェリア系フランス人のザイア・ジウアニの伝記的作品。移民のザイアは音楽一家に育ち、指揮者に憧れている。双子の妹とともに田舎の音楽学校からパリの音楽学校に通うことになるのだが、そこでは当然のようにいじめがあり、仲間に溶け込むこともできず、才能には嫉妬され上手く馴染めない。それでも持ち前のパワーと負けん気、面倒見の良さ、そして高い音楽への造詣とテクニックによって、周囲に認められていき、高名な指揮者にも支持することができた。いつしか仲間も増え、田舎の音楽学校の友達と、パリの音楽学校の友達を募って楽団を創る。映画の手法として、シーンごとにカットが多く、余白が多いので説明が少ないにもかかわらず、その余韻が良い感じに作用していた。
配信ではデップーなど他にも観たのだが、劇場で観たものはこれだけ。来年はもうちょっと、映画を楽しみたい。
Merry Xmas⭐️
などと締めたが、そういえばグラディエーターIIを観たのだった。直近すぎて忘れていた。