わたしを選んでくれた、いのち
こんにちは、Miriです。
わたしのnoteを見つけてくださって、有難うございます。
以下は、妊娠、出生前診断、中期中絶の内容を含むものになりますので、ご注意ください。
産後検診を異常なく終えてまして、これでわたしの今回の出産はひと段落となりました。
お世話になった産婦人科のクリニックには、以前一緒に働いてた先輩がいて、出産前からわたしのことを気にかけてくださり、今日も優しく声を掛けてもらいました。
もうすぐ仕事復帰するつもりであると伝えたら、少し時間が経ってくるとぷつんと気持ちが切れるかもしれないと話してくださりました。その通りかもしれません。
わたしは現実を受け止めているつもりでも、今はまだ現実から逃げてるだけかもしれないですね。
助産師としての仕事をしているわたしは、以前のように妊産婦さんと関わることができるのでしょうか。不安がありますが、助産師としての仕事を続けていきたいと思っています。
わたしのお腹の中に来てくれた小さないのちは、17週でお空に帰りました。
出生前診断をした結果、赤ちゃんに心臓に病気があることが分かりました。夫とともにたくさん考えて、私たちの意思でいのちの選択をしたのです。
今回はなぜ、出生前診断をしたのかについてお話ししようと思います。
出生前診断に関しては、人それぞれ様々な考えがあります。わたしの考えが正しいというわけではないことを前提に、以下をお読みいただけると幸いです。
第一子のときは、出生前診断のことは殆ど考えませんでした。通常の妊婦健診のみ受けて、順調に妊娠経過を辿り、そして長男は健康に生まれてきてくれました。今も元気に育ってくれています。
わたしは現在30代で高齢妊婦ではなく、身体の基礎疾患もなく、健康に生きている方だと思います。ハイリスク妊娠には当てはまらないと考えていました。
(高齢妊娠や基礎疾患があるから出生前診断を受けるべき、というわけではないです。)
では何故、今回は出生前診断を受けることにしたのか。シンプルにわたしの勘が働いたのだと思います。今回は出生前診断を受けた方が良い、妊娠が分かってから、わたしの心の中にその思いがずっとあったと思います。
夫にそのことを相談したら、夫も出生前診断を考えていたとの事でした。
夫と真剣に出生前診断について話し合いました。
出生前診断は、出生前に赤ちゃんの身体に起きているかもしれない可能性を知ることができます。医療の進化で、細かな部分まで知ることができるようになりました。
可能性を知ることができた親は、生まれる前に赤ちゃんのいのちの選択ができるようになりました。いのちの選択に関しては、色々な意見があって当然だと思います。
私たちには長男がいます。長男のやりたいこと、学びたいこと、将来についてなど、長男だけの人生があること。
そして私たち夫婦としての生き方があること、仕事や趣味などを含めて一人の人間としての人生があること。
万が一赤ちゃんに疾患があった場合、家族役割や生き方への影響があること。
生まれる前に赤ちゃんについて分かることがあるのならば知りたいと思いました。私たちの心の準備、赤ちゃんを迎える環境の準備ができるからと考えました。
出生前診断を受けることに、気持ちに変わりはありませんでした。
出生前診断といっても、様々な診断の方法があります。
私は胎児ドック(妊娠初期の精密超音波検査)を検討していました。
こちらのクリニックのホームページでは、胎児ドック・NIPT・クアトロテストなど、分かりやすく出生前検査について記載されています。
良ければご参照ください。
こちらを開院している医師と以前職場が一緒だったこともあり、私の中で信頼がありました。
もちろんトリソミーなどの染色体異常が気にならない訳ではありませんが、まずは胎児ドックでの形態異常を早期に発見できるのなら、それが良いと思っていました。胎児ドックの結果によっては、NIPTや羊水検査を検討しても良いと考えていました。
私の考えに夫は賛同してくれました。
妊娠12週になり、胎児ドックの予約の日がやってきました。
その前日に夫と少し言い合いになってしまって、私たちの空気はあまり良くない状況でした。長男を実家に預けて、夫の運転でクリニックへ向かいました。
クリニックに向かう車の中、不安な気持ちと赤ちゃんのエコーが見れる楽しみな気持ちで、わたしの心はざわざわしていました。
でもきっと、何も異常はないだろうと言ってもらえると、そう信じていました。
綺麗なクリニック、大きな超音波検査の画面のある検査室。
夫とともに胎児ドックの説明を受けました。
血液検査で母体血清マーカーを検査し、妊娠高血圧腎症のリスク・コンバインドテストを受けました。
そして、超音波検査が始まりました。
通常の妊婦健診では見えない週数なのに、赤ちゃんは鮮明にエコー画面に映し出されました。とても可愛くて、お腹の中を気持ちよさそうによく動いていました。その姿を見て、夫も喜んでいる声が聞こえてきました。
1つずつ丁寧に赤ちゃんの臓器を診察してくださりました。可愛い5本指や、長男に似ている鼻や口、立派な背骨、そしてしっかりと男の子の証が見えました。女の子がいいなとは思っていましたが、元気なら男の子でも嬉しい。兄弟になるのか、賑やかになって楽しそうだなあと思っていました。
医師の問題ないですね、の言葉に安心感を抱きながら、赤ちゃんを見つめていました。
しかし超音波で心臓を見ているときでした。医師から「右の心室が小さいかもしれない、後でちゃんと説明します」と言われました。
わたしの心のざわめきが、少しずつ確信に変わっていく気がしました。時間をかけてじっくりと診察されればされるほど、不安な気持ちがどっと押し寄せてきました。
全ての臓器の超音波検査を終えました。
別室に案内され、検査結果を待つ間、夫は静かに手を握ってくれました。これから何を説明されるのだろう、怖い、聞きたくない。現実から逃げたいと思ってしまいました。
医師から、この子には心臓に病気がある可能性があると言われました。
純型肺動脈閉鎖症 または 重症肺動脈狭窄症 の可能性がある
右室低形成、動脈管が細く血流は逆行性である
高圧の右室内圧により三尖弁逆流を認める
心疾患に伴い、左優位の胸水を認める
目の前が真っ暗になり、医師の説明はあまり入ってきませんでした。
採血結果を踏まえ、妊娠高血圧腎症のリスクは低いこと。超音波検査とコンバインドテストの結果、トリソミーの可能性は低いが、心疾患はトリソミーの関連所見であり、染色体異常の可能性は否定はできないこと。
妊娠12週と発達の初期時期であり、心臓の成長によって診断名は変わる可能性があることを説明されました。
しかし病状は重い疾患である可能性が高いこと。胎児循環によって、赤ちゃんはお腹の中では苦しまずに生きていけるが、生後すぐに治療、大きな手術を必要とする可能性があると説明されました。
診察の都合上、時間をおいて再度説明を受けることになりました。
夫と軽食を買って、一旦車に戻りました。どこかに行く気分にはなれません。
何も異常がないねと言われて、夫とお昼ご飯を食べて、長男の待つ家き帰る予定だったのに。
車の窓を開けて穏やかに吹く風を感じながら、我が子の心臓に疾患がある現実を痛感してしました。
わたしの心のざわめきは間違っていなかったのです。
ぼろぼろと涙が溢れてきて、言葉に詰まります。
夫も泣いていました。
そんな夫の姿を見て、私はさらに泣きました。
これは現実なのか夢なのか、夢であってほしい。せっかくお腹に宿った、大切ないのちに残酷なことが起きている、その現実から逃げていたかったのです。
この子に起きている可能性がある疾患名を調べれば、ひたすらに不安になるだけでした。
わたしたちは静かに泣き続けて、時間が過ぎることを待ちました。
現実から逃げたかった。
その後、再度医師から説明を受けました。
わたしにとって信頼のある医師であり、夫にも分かりやすく丁寧にゆっくり説明してくれました。
今日の超音波検査で見えた範囲で、今起きている心臓の状況、可能性のある疾患名、治療方法、予後。
どのような心疾患の診断名であっても、重い心臓疾患である可能性が高いこと。
県内の病院では赤ちゃんの治療ができないため、県外での出産となり、そのままNICUに入院し治療が必要になること。生後の手術は複数回となる可能性があり、治療を受けた予後において現在の医療では不透明な点があること。
医師の説明を頷きながら聞きましたが、わたしの頭の整理は何一つ出来ていませんでした。
夫も同じ気持ちだったと思います。それでも冷静に説明を聞いているように見えました。
今後の心臓の成長によって、診断名は変わるかもしれないため、心臓専門の小児科医師に、2週間後に再度診察してもらうことになりました。
そしてクリニックを後にしました。
何故わたしの子どもがこんなことになるのでしょうか。
私は何か悪いことをしてしまったのか、自分を責める気持ちが消えませんでした。
誰も悪くない。誰かを責めても仕方がない。
分かってはいます。でも、心が追いつかないのです。
私は助産師として、何人も同じような境遇になった妊婦さんと関わってきました。
そういった妊婦さんに寄り添ってきたつもりでしたが、やっぱり他人事だったのです。
自分の赤ちゃんに起きてからやっと実感する、真っ暗な暗闇。
今起きていることを信じたくない。現実を受け入れられない気持ち。
苦しさで息ができないほど、わたしの涙が止まりませんでした。
帰りの車の中、すでにこの子の命をどうするのか、そんな考えが過ぎってきました。
出生前診断を受けるとはこういうことにも繋がってしまうものなのです。
わたしはこのことを、しっかり理解していたのでしょうか。
母体保護法の母体の健康を著しく害する、といった理由として、いのちの選択ができてしまう。
赤ちゃんは生きているのに、親が決めることができてしまう。
長男の人生がある、わたしたちの人生がある。
でもその言葉を口に出すことが、出来ませんでした。
赤ちゃんがそばで聞いているのに。
ただひたすらに、泣くことしかできませんでした。
Miri