【旅】佐渡島でみた生一本
いつぞやの夏、たしかお盆前のどこかの連休。
新潟県でへぎそばを食べたあと、船に乗り、佐渡島に着陸。
佐渡金山の坑内では、蝋人形の男らが働いていた。
山を掘る
水を汲み上げる
空気を送り込む
杭を打つ
鉱脈を掘り当てる
全てが人力で為された、との看板の説明を読んだ。
「江戸時代はここで金を掘っていたんだよ。」
姉らしく弟に解説をしてみた。
「夏なのに寒いね。こんな中で昔の人は働いていたんだよ。」
寒い、寒いと、キレている弟が面白かった。
「やっぱ長生きはできなかったみたい。お金は結構もらえたらしいけど。」
看板の文章がどこか他人行儀に思える。
ブラック企業で過労死。戦時中の特攻隊。
ここに日本人の労働観が凝縮されているようで、震えた。
道遊の割戸。人々が競って掘り進めたら、山がV字に割けた。
そこには生一本の美しさと危うさが眼前に広がっている。
「お前もこうなりたいか。」
誰かにそう問われているような気が、今もなお消えない。
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