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祝福
焦らすようにゆっくり、少しずつ。
コンコルド広場からピンクのトラックがやって来る。
ーぼぉおん、ぼぉん!
時折、大きなホーンを鳴らして。周りにはレインボーの旗を纏って歌い、踊る人びと。ほぼほぼ裸だったり、パンクだったり、ドラッグクィーンだったり!あふれる色、スタイル、混沌、氾濫、そしてミックス!見上げるとパステルブルーの空に、綿あめみたいな雲がふわりふわり。
「うん? きらきらしてる、あれは…?」
銀色の紙吹雪が夏の日差しに煌めいて、宙を舞っている。ゆらりゆらり、そこだけスローモーションみたいに、実に優雅に。
〈 もし僕らの存在が神さまのミステイクだとしたら、どうして僕ら、こんなにキュートなの?! 〉
大書きされたメッセージボードを得意そうに掲げて、小鹿みたいな男の子が腰をくねらせ、通り過ぎる。みんながうれしそうで、みんな楽しそうで。一緒に歌って踊って、好きな格好して、何でもありで!ああ、天国にいるみたい…。
もし、一人ひとりにそれぞれの天国があるのなら。天国さえも好きにカスタマイズできるのなら。たぶん、私の天国ってこんなところだと思う。〈いのち〉に酔いしれ、軽やかに愛を交わす、甘くカラフルでスパイシーな場所…。ああ、私ももっともっと花火みたいに大きな自由を打ち上げたい。〈わたし〉であることを飛び跳ねて歓喜したい!祝福したい。
クタクタに疲れ切って帰宅した夜、アパルトマンの中庭にふたたび天国をみつけた。持ち寄り、自由参加の隣人パーティ。子供と大人と、男と女とその中間、黒い肌、白い肌、黄色い肌!夾竹桃、アボカド、オリーブに笹竹…、人も緑も、ひとつになって夜風に揺れる。みんなでグラスを交わし、すっかりいい気分になっていたら、夫と同じロランという名の隣人が、特別に〈見て〉くれた。
「君は…宇宙だよ。旅立って辿り着いて、また旅立つ。旅の多い人生になるよ、これからも。それにね、子供時代を取り戻すんだよ、今ここで…。」
びっくりして、うれしくて、泣きながら笑った。
ゲイ・プライド・パレードの日に。
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