気付かないフリ
思えば色々な事を気づかないフリしてきた。
恋愛に関しては特にそうだ。ましてや[終わり]なんてものには気づきたくもない。
ふとしたタイミングでそれに気づいてしまった時はいつもとても怖く、悲しい。
[終わり]に気づいても、惚れている方は気付かないフリをしがちだと思う。まだ一緒にいたいから。離れたくないから。寂しいから。色々な理由があると思う。
今回の私の場合は[始まっていないから]だった。
そうだ。虚しいことに私1人の恋は始まっていたが、2人の恋はまだ始まっていない。いないはずだ。
だからもう終わりなのだろうと思いながらも[いや、まだ始まっていない]と駄々をこねる自分がいるのだ。まるでお菓子を買って貰えない子供のように。
でもね、ずるいと思う。
始めてもいないくせに何も言わずに勝手にひとりで終わりに向かっていく彼が。とてもずるいと思う。
、、、始まっていない、とは言ったものの、1度だけ彼から「好きだ」と言われたことがあった。絶対に絶対に忘れてたまるものか、と何度も思い返している、彼から言われたたった1度きりのあの「好き」だ。
それを口から発した瞬間に彼の恋が始まり恋が終わったのかもしれない。その一言だけで満足したのかもしれない。ここ最近私はそう考えている。
人の恋にも色々ある。セックスをしたら満足する人。結婚してもまだ満足しない人。
彼の場合「好きだと確認しあったら満足する人」だったのかもしれない。そうだとしたらあんまりだ。
私からしたらそんなこと知ったこっちゃない。
私の中の小さな恋は、彼のその一瞬の恋を、「2人の恋である」とカウントしなかった。
だから私は今日も[既読]の文字を見ながら、彼との恋の終わりを見て見ぬふりしている。
なんて虚しいんだろうな。
みおり