ジャニス・ジョップリンとマルボロと、嵐と太陽の手紙
病気が人を殺すんじゃない、と思ったことがあります。
以前、身近に「双極性障害(躁うつ病)」と「パニック障害」を持っている人がいたことがありました。そしてその人はたぶん「自閉症スペクトラム」でした。
「いつでも連絡して」と言ってくれた人に深夜3時に電話して怒られて「いつでもいいって言ったのに…」と言ったり、その人を傷つけないように気を使う人たちを「嘘ばっかり言う」と非難したり。
とても生きにくそうに生きていました。
その人の周りには人がいなくなってしまったので、その人はタクシーに乗ることにしました。タクシーの運転手さんは、乗っている間はお話をしてくれるので、寂しくなかったのです。
そしてタクシーに何時間も乗るようになり、その運転手さんに「君とお茶してもいいけど、その間に売り上げが無くなるから、その分のお金を払って欲しい」と騙されて、数か月で何百万も使ってしまいました。
もう駄目でした。
家族は彼女を入院させました。ギリギリでした。
人は孤独になると、お金を変なところにつぎ込んだり、病気になるんですね。
そして病院に入って人と関わることが増えた彼女は、少し寂しくなくなったのでしょう。周りの人を罵倒したり感謝したりと目まぐるしく内容が変わるお手紙を、けっこう元気に書き続けました。
私もお手紙をもらいました。違う日に書いた手紙が同時に届くので、片方が罵倒、片方が感謝の手紙です。嵐と太陽が同時にやってきます。なかなかに強烈です。
でも、私に手紙を書いている間は、彼女は1人ではなかったのでしょう。
彼女は孤独になるとおかしくなってしまうのでした。だけど、手紙を出す相手がいるとちょっと元気になります。そして、少しだけ何かお願いをすると、がんばって街に出かけて買い物をしたりするようになりました。
彼女は人の役に立ちたいし、感謝もされたい。お話もしたいし、未来が欲しかったのだと思います。
孤独って病気よりやっかいなのかもしれない。
孤独が人を殺すこともあるんだろうなと思いました。
昔、ジャニス・ジョップリンという歌手がいました。力強い歌声で有名なブルースロックシンガーです。
彼女は少し変わっていたのか、学校でも周囲になじめず、都会に出て大学に行ってもお酒とドラッグに溺れてしまいました。そしてたった3枚のアルバムを出しただけで、ヘロインで亡くなってしまいました。
ひとりホテルで倒れていた彼女の傍らには、小銭と封を切っていないマルボロがひと箱。
タバコを買いに行った後だったのでしょうか。
あんなに売れて、アルバムも作っている最中だったのに、悲しい最期でした。
最近、毎日ジャニスの曲をヘッドフォンで聴いています。歌を聴いているときは私と彼女の二人きり。ずっと彼女の孤独と付き合っている気がします。
ハスキーな声とパンチのあるシャウトで有名な彼女ですが、私にはどの曲もとても悲しく聞こえます。
来月、2月25日、横浜の日ノ出町にて、ジャニス・ジョップリンを歌います。あまりメインボーカルでライブはやらないのですが、ジャニスはいつか歌ってみたいと思っていましたので、この際、とことんジャニスの孤独と向き合ってみようかと思います。
興味のあるかたはぜひ、お越しください。 ちなみにもう1バンドにも出演しますので、私は3時間近く歌いっぱなしです。体力大丈夫か。
お前はどんな歌を歌うんじゃ?という人に向けて、違うバンドで私が歌っている動画をリンクしておきます。(今見たら、コメント160もついててびっくりした!)
1人目が私です。
そう、2人目のシンガーのレイナさんも数年前に亡くなってしまいました。いつもLINEで猫写真を送り合っていたのに、しばらく返事がないと思ってたら、遠くに行ってしまっていました。
彼女も才能あふれるシンガーで、みんなに愛されていたけど、孤独の色が強い人だったな。
音楽の神様は、なんで才能ある人を若いうちに連れて行ってしまうんでしょう。悲しいですね。