変わらないで欲しいと思うのはエゴ?
何度も同じ場所に旅をするといつも思うことがあります。
変わらないものって、ないんだなって。
あんなに素敵だった古い街並みにスターバックスの看板ができて、秘境には道路が通って観光バスがたくさん来ていて、映画の舞台になったあそこはお土産物屋さんでびっしりになってしまい、地の果てにたどり着いたと思ったらネトフリでアベンジャーズを見ているおじさんがいたり。
古いままでいてほしい、変わらないでほしいとは思いますが、インターネットとスマホの登場以降、人々の生活も、旅の様式も変わりました。
そして、古いままでいてほしいということは、そこに暮らす人々に古いままの不便な暮らしを期待するということです。
それって、ただ通過する旅人が期待することじゃないですよね。
それでも、チェコにユーロが導入されやしないかとひやひやしたり、近代化の波が届かない場所を必死で探そうとしたり、私もそれなりにエゴの塊のような旅人ではあります。
※マンガは左上からお読みください(左綴じ)
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近代化、観光地化が進むところで、自治体や国が建物や文化を守ろうと頑張っているところもあります。
昔ながらの建物や寺院、お祭りや習慣が残っているけれど、家の中は快適に作り変えてある。
ネットも通っているし、クーラーもある。スマホもパソコンもある。
歴史と近代化が同居している町に来ると、旅も快適です。
でもね。
言葉が通じなかったり、ネットに情報がなかったり、あまり観光地化していないローカルな町に来たとき。
人々の親切が、不便を覆い隠したとき、旅っていいなあと思うのです。
モロッコのややローカルな町で長距離バスに乗る日。
チケットは2日前に窓口で購入していました。今考えたら、それがいけなかった。
私は雨の混じる強風の中、震えながらバスを待っていました。
親切なおじいさんが、俺の横に来たら自分が壁になるから、寒くないよって身振り手振りで言ってくれて、暖かいミントティーを飲みながらバスを待っていたのですが…
バスターミナルは町の両端に二つあったのです。
反対側のバスターミナル発着であることに気が付かずに、何気なくグーグルマップをみて、数か月前に変更になったことに気が付きました。
あたりをよくみたら、確かに発券したバスターミナルと違う気がする。
真っ青ですよ。
バスが来るまであと10分。
しかも、私がいたバスターミナルは、進行方向から見て正しいターミナルの手前だったのです。
他の民間バスの職員さんに、ここにこのバスが停まるかと聞いたら、ちょっと待てという。
事務所に入って行って、電話を片手に戻ってきて「チケットは持っているか」
持ってます!と言うとまた電話をしている。
そう、違うバス会社なのに、電話をしてバスにこちらに回るように連絡してくれたのです。
運よくバスが遅延していたのもあり、お兄さんが言った通り、ちゃんとバスは旧バスターミナルに立ち寄ってくれました。
感謝してもしきれません!
またいつか、あの町に行きたいと思います。
その頃にはもっと近代化して、バスのチケットもオンライン化、電光掲示板もできて、風の当たらない待合室ができているかもしれません。
でも町の様子は変わってしまっていても、たぶん変わらず人々は親切で、周りの人に手を貸しながら暮らしているでしょう。
そこに目を向けられる自分でいたいなと思いました。
英語翻訳:富田梨恵
ネイティブチェック:Shōn Sensei