午後7時からの中学生談義 14

narrator 市川世織
翌日。私達、塾生は早速「鏡落書き事件」についての捜査を開始した。捜査の仕方は主に聞き込み。それとなく事件について友人に聞いて、事件解明を目指す。
…って、毎回この捜査をするたびに「私、中学生にもなって、子どもっぽいことしてるなあ」と思うんだけど。
「はー…、ダメだわ」
給食の時間。
大好きなキノコシチューを私が勢いよく食べていたら、裕翔が隣で呟いた。
「今回は難航だな」
と、左隣の貴之。
なんと私達は席まで近くて、私を真ん中にして、前に裕翔、後ろに貴之という奇跡としか言いようがない席順になっている。
ここまで幼馴染が揃っていると、恋愛好きの女子は騒ぐもので…。
席順の神様は存在するのだろうか。いたら、バチ当たりと分かった上で、その神様を全力で殴りたいと思う。
「今回は情報が出てこないもんな〜」
貴之はイカ君サラダを頬張る。そして
「うん、安定の味」
味の感想を言うと、満足げに笑った。
『私達の捜査は安定してない』
「まあまあ、捜査がたとえ安定してなくても、このサラダの味が安定してれば、俺は幸せだよ」
『貴之のバーカ、バーカ!!』
「バカってなんだよ!」
「うるせー、2人ともうるさい。黙れ」
『私は喋ってない!貴之が1人で騒いでるんじゃん!!!』
「こういう時だけ声が出ないのを口実にすんな!!」
「うっせえ!声が出るとか出ないとか、そんなの今はどーでもいいわ!」
『2人ともうるさい!』
「「お前が1番騒がしいんだよ、バカ!!」」
貴之と裕翔が叫んだ、次の瞬間
「お前ら3人!うるさい!!給食中に騒ぐな!」
担任の先生が鬼の形相で、私達に怒鳴ったのだった。

大騒ぎの給食を終えて、お昼休みに入った時、ようやく私達の元に朗報が届いた。
朗報を届けてくれたのは、華鈴ちゃんと、佳奈ちゃん。
「私達のクラスに、事件が起きた時間帯に、女子トイレに入っていく人を見たって子がいて…」
「先輩達、話聞くかと思って、その子に放課後空けておくように言っておいたので、安心してください!」
「れらした(でかした!)」
裕翔が滑舌悪く言うと、佳奈ちゃんは
「先輩達…、なんで昼休みに牛乳飲んでるんですか?」
と、牛乳のストローをくわえる私達に問うた。
「給食中に騒いだ罰。残り物の牛乳。残飯無くすために」
貴之の言う通り。
でも、後輩達の活躍は助かった。私達は放課後、その子に会いに向かう。
「悪い。急に」
髪を肩で切りそろえて、大人しめな印象を受ける後輩の女の子は、私達に無言で会釈をした。早速私達が、女子トイレに入っていった生徒のことについて尋ねると
「2つ結びをして…、先輩だったと思います。上履きが緑のライン入ってたから…」
とだけ答えて、黙ってしまう。
こういう時は、深掘りするのも良くない、と、察した私達は話を止めて、女の子にお礼を言い切り上げた。
「あの」
別れ際、初めて女の子の方から口を開いてくれた。私達は振り向く。
「何にそんなに必死になってるか知りませんけど、そんなんで解決できると思わないでください。私達が、そんな素直に心開くと思ってるんですか?この世界、敵ばっかなのに」
女の子はそう言って、帰ってしまった。
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