転校と、残念な父親
娘たえこ。
転校初日、
クラスのたくさんの子に囲まれて、
帰りは自宅近くまで一緒に帰宅したらしい。
隣の席は、素朴な感じの男の子らしい。
“友達になろう”“今度一緒に帰ろう”と娘に言って、周りの子達は“告白だ!!”と騒いだそう。
(私もそう思った。可愛い!)
自己紹介で続けているスポーツの話をすると、
クラスの皆が“すげえ!”となったそうで、鼻が高そう。
今度何人かで集まってswitchをするらしい。
授業の進度は、
元いた中学の方が概ね少しだけ進んでいて、色々滑り出しが良い感じ。
週半ばには、長年通っている体育館へ行く。
そこで幼馴染達にも会える。
私は内心ははらはらしているが
もしかして壁に当たる事があっても、
どんな出会いも糧にしていってと願うばかり。
新しい学校は転入生が多く、
教室は机がぎゅうぎゅう。
あと一人増えたら学年は学級は二つになる、
担任から説明があった。
クラスの人数が多い分、
別の先生が補助に入り、空き教室に分かれて授業を進めるそうだ。
朝、元夫からLINEがあったが朝は慌ただしく、
夕方の買い物帰りに私が促す。
娘は相手に電話を入れた。
相手は開口一番、
“学校に外国人がたくさんいるんでしょ?”と。
私の実家近くの移民の多さを警戒しているらしい。
危険な地域であると、たえこにもさかんに注意しているそうだ。
さて、私が数回学校に出入りした時には
外国人らしき子は一人も見なかったけど。
たえこも同様に答える。
次いで相手は娘に聞く。
一学年に何クラスくらいあるのか。
たえこの学年のみ、ひとクラスだけと聞くと、
相手はすかさず
“え!?そんなに人数少ない学校なんだ”
そうそう、娘は元夫に電話する際は通話を私も聞けるようにとスピーカーにする。
変なこと言ってくるから、と。
娘はムッツリして、早々に“じゃあね”と電話を切る。
切ってから
“そういうことばっかり聞くんだよね”と呟いた。
転校した娘の心情
緊張したか、しなかったか、
どんな挨拶をしたか、
友達になれそうな子はいたか、
授業の進み具合はどうか、
クラブ活動は何があるか、
好きなスポーツの授業は二学期にもあるのか、
気になっていたり、不安なことは?
そんなことには全く触れない、興味無いのかな。
移民のコミュニティがあり、危険だ。
人口の少ない僻地に、連れ去るのですね。
というのが相手が私に送って来たLINE。
確かにバスの本数は少なくなっている片田舎だ。
足の弱い母は、買い物難民になりつつあった。
街外れは工場が並ぶ。
とは言え、実家からは車で5分内に
スーパーが数軒、映画館のあるイオン、クリニック十数軒、市立病院、大型書店、図書館などがある。
それでも、相手のフィルターでは僻地ということなのだろう。
そう言えば彼が生まれ育った自然豊かな村は、
人口4千人台、限界集落とされている。
言い方によれば僻地だ。
人は自分の気にしていることを、相手にぶつけると言うけれど。
自からの素敵なふるさとを、貶めることになってはいないのかな。
知らんけど。
娘は言う
“たえこに言ってくることが、もう決まっているんだと思う、脳内で。”
私の高齢の父も、講師として人前で話をしに行くが、
家庭ではそのような傾向が増えて来た。
既定路線の話を繰り返し述べ、
人の話には露骨に興味を示さない、
ひそかに苦笑してしまう。
それは会話ではなくて、講釈だと思う。
しかし、たえこの父は、まだ若いのに。
また娘に呆れられていること、気づいているのだろうか。
知らんけど。
今日も、憂の篩にこんな思いをしまって、仕事に出掛ける。
仕事が楽しいのは幸せだ。
忘れていられる。