パンを枕に寝ていた子

食いしん坊の娘が、あのサンドイッチ屋さんに行きたいと言った。
ガラスケースにぎっしりと、種類が豊富で目移りする。
友人夫婦に教えて貰い、たまにだけ寄る楽しいお店。

私はダブルエッグ、イカカツと迷って、
結局サーモンフライサンドに。
娘はハムカツサンドといちごクリームサンドを選び、
いちごクリームは一切れずつシェアすることにした。

あなたのハムカツは随分分厚いですね！
おかーさんのサーモンフライ？、カロリー高そうですよねえー
互いに言い合う。

以前は無料だったパンの耳が有料になった。
でも、一袋が数倍の容量になり、
なんと4斤分に増量したらしく、お値段はわずか50円。
量はともかく有料の方が気持ち良い。　

でも、こんな大量に保管できない。
うち冷凍庫いっぱいだもん、と言う私に

ガーリックラスクにしよう、
パン耳で、クイニーアマンとかできるらしいよ。
みんな食欲だけはあるから消費できるって！
張り切る娘。
渋々買うと、娘はパンを米俵のように肩に担いだ。
華奢な身体に、ごっついパン。
確かに我が家は大食漢ばかり。
母だって、生きる意欲は、まだあるか。

帰り道、娘は、友人関係について、父親についてあれこれ呟く。
たえこはさあ、ずっとこのまま運が悪いのかなあ。

何を言う、あなたのこれからは、あなたが決められるんだよ！
私は目を剥いた。

まあ聞いて？
うちって、変なお父さんじゃん。
お母さんは大変な思いしてるしさ。
それに、A子とB子は、ベタベタじゃん。
なんだかなーって
あ、でも聞いて貰ったらそれだけで楽になるんだよね。

だそうで。
アツいアドバイスは敬遠されたみたい。

後部座席が静かだと思ったら、
まさかの大量のパン耳を枕に、娘は居眠り中。
可笑しくも、
最近の我が家の状況が嫌でも思い出され、
なんだかかわいそうな子という感じがして
胸がギュッとなる。

かわいそうなんて、そんなことはない。
そんな暗示はかけるまい。
まあまあ大変なことが人生序盤にやって来ただけ。
その分、幸せを噛み締められる。
おかしな状況になったら逃げる勇気も持てるはず。

クリスマスに買ったヨギボーの高級枕は
助手席に放置中。
パンの夢でも見たかなあ。
のんびり、幸せに生きて行けますように。