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絆で切り開いた花道 ~M-1アナザーストーリー~

少し遅れたけれど、TVerで「M-1グランプリ アナザーストーリー」が視聴出来る事を知った。関西ローカルだったので諦めていたが、TVerで無事に観られたので嬉しかった。

アナザーストーリーといえば、ウエストランドの井口さんが、他でもないM-1のネタで「アナザーストーリーがウザイ!」と吠えていた。芸人さんの舞台裏なんて、当人達からすれば恥ずかしいだろう。素を隠して舞台で演じているのだから。

しかし、視聴者側からすれば、芸人の素を垣間見てみたいという気持ちもある (敢えて見たくないというファンもいるだろうが)

そういえば、M-1が終わってから、様々な芸人さんの漫才についての持論を語る動画を見漁った。

そこで良く出てきたのが、「ニン」という言葉だった。つまり、ネタも大事だが、演者の人間性や個性も笑いに影響するとの事だった。

人間が人間を笑わせるのだから、単純にネタの台本を読むだけではなく、それを演じている人間の個性があった方が笑えるんじゃないかという意味で捉えた。

例えばモグライダーが良い例で、あれはともしげさんの「かなりおっちょこちょいですぐにテンパる」というキャラ個性を生かしたネタを作っている。あれは他のコンビでは出来ない唯一無二のネタだろう。

前置きが長くなったが、そんな芸人さん達の素の人間性を垣間見るべく、アナザーストーリーを興味深く観た。


ヤレロマの絆

M-1グランプリ2023の優勝は、令和ロマンだった。そして、準優勝はヤーレンズである。

今回のアナザーストーリーは、この2組がストーリーの軸になっていた。

令和ロマンは慶応大学のお笑いサークル出身のまだ若いコンビだ。何でも吉本NSC首席卒業というエリートらしい。

かたやヤーレンズは、ケイダッシュ所属で東京の地下ライブを中心に頑張っていたベテランコンビだ。

この芸歴も所属事務所も全く違うコンビが、2022年のM-1決勝の敗者復活戦で同じ舞台で共に涙を飲んだ。それで、ヤーレンズの楢原さんが令和ロマンに声を掛けたらしい。

2022年のM-1が終わった後、2023年1月から、毎月新ネタ3本下ろしたツーマンライブを開く事になった。

この令和ロマンとヤーレンズの出会いが、2023年のM-1グランプリ決勝を最高に盛り上げたスタート地点となった。

同じ舞台で負けた悔しさをバネにして、ツーマンライブでライバルとして、何よりも同じ道を志す同士として切磋琢磨していた。

そして、共にストレートで決勝進出、更にはファイナルステージで優勝という頂点を競い合う。

本人達も言っていたが、M-1グランプリ2023決勝は、実質「ヤレロマ」だった。1年間、共に努力を重ねた2組に光が舞い降りて、花道が開けた。

こんな出来過ぎた感動ストーリーがあるのだろうか。

「友情・努力・勝利」まるで、週刊少年ジャンプの漫画のような世界観だった。

支え合う同士たち

絆があるのは、この2組だけではない。他のファイナリスト達も、同じ漫才師として苦楽を共にしてきたのだろう。

優勝が決まった後、舞台裏の楽屋では、勝利を称える抱擁が交わされていた。

もちろん、本当は自分達が頂点に立ちたかっただろう。内心では死ぬほど悔しかっただろう。でも、その気持ちを抑えて勝利を称えられるのは、勝負を超えた先に人間としての絆があるからだろう。

印象的だったのが、同じ事務所の仲間であるヤーレンズの事を気にかけるトム・ブラウンの布川さんだった。

トム・ブラウンのネタは、狂気じみていてトリッキーで、完全に人を選ぶネタだ。トム・ブラウンが舞台に上がると荒らされまくって焼け野原になるとまで言われている。

布川さんはロン毛という特徴的な見た目で、ネタではボケのみちおさんの頭を「ダメー!!!」と思いっきりぶっ叩くというエキセントリックなキャラだ。

しかし、その裏でこうやって人間味溢れる所を見てしまうと、落差のあまり次にネタを見た時の印象が変わりそうだ。そうなると、芸人的には「営業妨害」になるのだろうか。だから、井口さんも吠えていたのだろう。

最後に

お涙頂戴は嫌だと思いながら、まんまと番組の思惑通り泣いてしまった。

令和ロマンは、正直若いのに肝が座りすぎていて可愛げがないと優勝時には思っていたが、裏側を見て彼らには彼らなりの苦悩と努力があった。新世代のお笑い芸人としてこれから売れていくのだろう。ヤーレンズも長年の苦労が報われて本当に良かった。

私は主観的な熱量で「推し」とかを作るタイプではないので、これからも客観的に色んな芸人さんを見て応援していこうと思う。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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春原美桜(miosuhara)
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