翠の匂いひとしお床しく、
香りものが好きだ。柔軟剤、芳香剤、香水、お香、香木、自然の香り。世の中には様々な香りものがある。シャンプーやボディソープにも香りはつきものだ。
人間は特定の香りから記憶や感情を呼び起こすことが出来る。例えば街ゆく人からふわっと柔軟剤が香ると、同じ匂いのする昔好きだった人を思い出したり。プルースト効果。香りが記憶に残るなんてなんだか素敵だ。
わたしは胸を張って「コレクションしてます!」とは言えないくらいのささやかな香水コレクションを持っている。今数えたらだいたい10個くらい。ヘアミストを含めて15個に満たないくらい。興味のない人に比べたら多いが、香水沼に沈んでいる人たちからしたらきっと少ない。
香水を振ることもわたしの大切な身支度の一部だ。服を選ぶように香りを選ぶ。その日の気分によって服装やお化粧に合わせたり、なりたいわたしのイメージによって使い分けることが多い。ただ、香りものは結構好みが分かれがちだ。わたしにも苦手な香りはある。だから人と会う約束がある日は基本的に万人受けとされている香水を使う。そして会食やアルバイトの日は絶対につけない。何事もTPOは大切だ。香害にならないよう細心の注意を払って楽しんでいる。
「ご自分用には宜しいですか?おうち時間でも良い香り纏っていると気分も上がりますよ〜!」
友人の誕生日プレゼントを探しに行ったJO MALONEのBAさんがこんな素敵な言葉をかけてくれた。なんて商売上手なBAさんだ。わたしはこの日、まんまと自分用にも購入してしまった。予定外の出費。だがわたしはちっとも後悔していなかった。今でも後悔していない。この言葉でわたしは香りものが好きになったからだ。自分の好きな香りを纏っているとふとした瞬間にその香りがしてすごく幸せな気分になれる。
そして好きな香りを纏っているとバリアが作れているような気がして心做しか落ち着く。
香水の多くは香りの変化を3段階持っている。最初の5〜10分ほど華やかに香るトップノート。香りの中心で30分〜2時間ほど香るミドルノート。そして2時間以降の残り香であるラストノート。緩やかに、グラデーションのように変化してゆく。ひとつの瓶に入っているのに3つも顔を持っているのが香水の大きな魅力だと思う。
わたしはひとつの香水で楽しめる3つの香りをなるべく買う前に知りたいので、普段 香水を買う時はムエットという香水を振った紙を貰ってそれから検討している。
ムエットを貰ってまでじっくり考えるわたしがこの前初めてオンラインで香りものを購入した。資生堂から出ている 禅 というオーデコロンだ。
発送メールが届いてから玄関チャイムが鳴るのを今か今かと待っていた。チャイムが鳴って玄関へ飛び出し、すぐに開封した。粋なデザインの香水瓶。見た目に惚れたの初めてかも。(良すぎるので写真貼っちゃいます。良すぎてびっくらぽん。)
わたし好みの香りだといいな。わくわくと少しの不安を抱きながら瓶のふた開ける。マットな瓶の質感とざらざらしたふたに触れた瞬間、胸が高鳴った。どきどきしながら香りを確かめる。花の香りが鼻腔に抜けたかと思うとウッディーな香り。どこか懐かしさを感じさせる和風な香り。普段使いも勿論だけどお着物を着る時、特に纏いたい香り。うわ〜〜〜〜〜!!!!!!なにこれなにこれ!!!!!好きだ〜〜〜!!!!!!!!全国民買って!!!!!!!!!一生香ってたい〜〜〜!!!
想像以上だった。心の中のわたしが拡声器を持ちながら走り回っている。誰彼構わず片っ端から教えたいくらいどストライクの香りだった。それこそムエットを配り歩きたい。またお気に入りの香りが増えてしまった。幸せな悩みだ。
香りを知らないものを知らないまま買うなんて割と大冒険だったけどおかげで良い体験記(?)が書けた。こういう買い物もたまにはいいかもしれない。
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