連鎖の鎖を
20代で3人の女児を産み、仕事三昧な夫の面倒もみながら死に物狂いで駆け抜けた私の母は、義母から「男の子を産めないなど江戸時代では死刑ですよ」と言われ続け、精神を病んだらしい。
21歳で私を成した母は、周りの同年代の人間が楽しく遊んで過ごしている時間を、子育てと夫の相手に勤しんで過ごしたらしい。
跡継ぎが望まれる家に嫁いだ母は、女しか産むことが出来ず、義母にチクチクと嫌味を言われてきたらしい。
そのうちに心身を壊し、通院を始めたようで、私がそれを知ったのは小学校中学年くらいの頃だった。
母は、幼い頃に自分の母を亡くして寂しい思いをしてきたから、早く自分の家族を作りたかった、と言う。結婚すれば暖かい家庭に入れると思った、と言う。
一方、今、私は。
私を産んだ頃の母の年齢を越えつつある。
結婚もしていないし、子供も産んでいない。
私は母と違って、両親も揃っているし、お金に苦労するような家庭で育ったわけではない。が、暖かい家庭に少し憧れはある。寂しい思いをしたこともあった。でも自分の家族は要らない。精神科には通っている。
私は思春期の頃、自分の女性性が嫌いで、女になってゆく自分の体を嫌悪し、憂いては泣いて母に訴えていた。
「気持ち悪い、胸も臀も全部気持ち悪い、切って捨てたい」
喚く私に母は
「貴女は、男の子が産まれますようにって願われながら産まれたからね、その願いをキャッチして産まれてきてしまったんだろうねえ」
と、言った。
祖母の願いは叶わなかったが、私にはしっかり届いているし、母の血は、私がしっかり引き継いでいる。
臍の緒は切れたけど、見えない緒がずっと私を付きまとい、私を見ている。
見えない緒など、どうやって切ればいいのだろうか。