読書記録#002:『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいのかわからない人へ』( 著者:西口一希)
前回の読書記録から2カ月以上空いてしまいました。(言い訳すると、その2か月の間に、今回記録をつける本とは別の書籍を2冊読んでいます!そちらもまた記録に残したい。)4月からマーケティング関連の読書を試みつつ、現状月1ペースでの読書量です。欲を言わなくても、もっとペース上げたいというのが本音です。(なかなか難しいよね・・・)
さて、今回は『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいのかわからない人へ』という、タイトルにドキッとさせられる本の読書記録です!
■今回読んだ本
●本の紹介:『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいのかわからない人へ』
今回読んだのは、2023年2月に出版された『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいのかわからない人へ』です!言わずと知れた、P&G出身のマーケター西口一希さんの著作です。
●ひと言で言うと、どんな本?
この本のメッセージをひと言で言うと、
「HOWではなく、WHO・WHATの発掘に注力せよ・・・!」です。
●WHO・WHATとは?
HOWとは、デジタル広告だったりインフルエンサーの紹介だったり、TikTokの配信だったりと、様々なマーケティング"手法”のことを指します。いろいろな施策を経験したり、新しいツールを使えるようになったりすると、いかにもマーケティングが「出来るようになった」気がしますよね。一方、西口さんは、このようなマーケティング手法や手段について、時代とともに移り変わるもの/あくまでマーケティング活動全体の枝葉である、として、HOWの追求の前にその前提である”お客様”を理解することが重要だとしています。
では、この顧客理解やWHO/WHATが何を指すかというと、
WHO:(私たちの商品を買ってくれる)お客様は誰か
WHAT:お客様は自社の商品のどんなところに”価値”を見出しているか
ということです。この価値をさらに分解すると、それは、便益と独自性だと西口さんはおっしゃっています。
まとめると、WHO・WHATとは、「どんなお客様が、なぜ自社の商品を買ってくれたのか、なぜ他の商品を選ばなかったのか」を理解し追求するということですね。HOWはこのWHO・WHATがあって初めて成り立つもの、逆に言うとWHO・WHATが見つけられれば自ずと、そのWHO(お客様)にリーチするのに最適なメディアや、WHAT(お客様が感じている価値)を伝わりやすい表現にしたキーメッセージなどが浮かび、戦術としてどのような手段や方法をとっていけばよいのか分かるようになるのです。
●どうすればWHO,WHATを見つけられるのか?
WHO,WHATの重要性が分かったところで、どうすればWHO,WHATを見つけることができるのか?西口さんは3つのアプローチ、中でも特に「N1分析」を推奨しています。
なぜN1分析を推奨しているのか、それは、②・③のような行動データや心理データを分析して顧客を「こういうお客様たちは、こういう理由で、こういう判断をしがち」と大きなグループとしての傾向でとらえると、その購買行動の裏にある本質を見誤ったり、マスに向けた平均的な戦略・施策に陥り強度の高いWHO,WHATが見つからなかったりするからです。そして、必ず目の前の一人のお客様(N1)の背景には、同じようなところに商品の価値を感じているお客様がたくさんいらっしゃるので、N1の追求により結果的には一定の規模の購入を促すことが出来るとおっしゃっています。事業フェーズにあわせて、このWHO,WHATの組み合わせを増やしていき事業を拡大していくことが出来ると西口さんはおっしゃっています。
●まとめ:マーケティングとブランディングの違い
ここまでの議論を経て、西口さんはマーケティング、またマーケティングと並列して議論される”ブランディング”の定義を次のようにまとめています。
もっと平易な言葉で言うと、マーケティングとは新しいお客様に商品の価値を見出して買ってもらうこと、ブランドとは一度商品を買ってもらったお客様にその価値を”覚えていてもらい”次回の購買タイミングで”想い出して”もらうための活動という位置づけになるかもしれません。
■読後の感想
●なぜ、私たちはHOWの追求に陥りがちなのか?:縦割りマーケティング組織の弊害
この書籍を読んで最後に思い浮かんだ疑問、それは「なぜ、私たちはHOWの追求に陥りがちなのか?」ということです。西口さん自身は、その理由を最新の技術などを駆使して常に新たなマーケティングツールや手法が生まれ、そしてその情報が氾濫することで、マーケティングとは手法のハックだと思い込んでしまいがちだから(ざっくりの要約です)とおっしゃっていますが、私自身は多くの会社のマーケティングチームにおける業務分担や評価観点が、この「HOW」ごとに分かれているからなのではないか?と思います。よくありますよね?社内のチームや個人の担当が「SNS担当」「SEO担当」「運用広告担当」「CM担当」のようにHOWごとに分かれていること。(うちの会社もそうです!)そうすると、各個人は自分の業務に真面目で一生懸命になるほど、様々な書籍やwebメディアから自分に割り振られた「SNS」の成功事例や最新手法を集め、それを導入し、活用するといった個別最適の観点に陥りがちです。あくまで、あるWHO(お客様)に対してWHAT(便益と独自性)を伝える手法や手段としてSNSが実際の施策の選択肢としてあがるのであって、SNSの成果を最大化することが目的ではないのですが、個々にHOWごとに業務分担が割り振られると自分の成果を出したいと思えば思うほど、盲目的にHOWの追求に陥ってしまうのです。一方、WHO,WHATを発掘して戦略を立てた後に、どのようにそのWHOにWHATを伝えるのか?といった戦術、HOWの実行を効率的に実施しようとすると、この1メンバー1HOW制が早いということも分かるので、本当にマーケティングの組織作りは難しいなあと思います。ベンチャーは全員でこのWHO,WHATの発掘とHOWの実現に取り組んでいる印象がありますが、大手企業だと、調査担当やマネージャーなどの上位職がWHO,WHAT発掘の担い手の中心になり、メンバーがHOWを実現する、といった役割分担に落ち着いていそうです。全員でN1分析にトライしてみたり、WHO,WHATを見つける議論をしてみたり、もう少しオールメンバーでこのWHO,WHATという視点、顧客理解を深める取り組みが出来たらなあと思った次第です。
■追記
「顧客理解」や「N1分析」の詳しい実践方法については、西口さんの『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』こちらの著書で書かれています!私は以前にこの本を読んだことがあり、『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』は若干こちらの書籍と重なる内容があったため、オススメ度★3とさせていただきました。ぜひ、こちらの書籍も読んでみてください!