首里城、再建へ
今日は特に真面目な話です。
先日、無事消防設備士試験に合格しました。私がが消防設備士に挑戦した理由の1つ、2019年10月31日に発生した首里城火災について今回お話ししたいと思います。
※当時の火災の映像を含む動画を使います。
首里城公園
首里城公園の過去
冒頭に「2019年10月31日発生」と記載したことには訳があります。首里城の創建は1400年台半ばごろとされていますが、500余年の中で何度か焼失してきた歴史があるからです。
自然発生的な火災もありましたが、戦禍に巻き込まれたこともあります。太平洋戦争の際には、首里城の地下に旧日本軍の司令部が置かれたことにより、攻撃の対象となってしまいました。
そして5年前の今日、正殿をはじめとする9施設を焼失する大規模な火災が発生しました。
※この後当時の火災の映像を含む動画を引用します。
「建物火災、出動目標、首里城方面」
非番の方を含めて沖縄中の消防士さん達を招集するも、鎮火には11時間もの時間を要しています。後ほど引用するOTV(沖縄テレビ)のドキュメンタリー動画の中では、高い城壁や燃えやすい部材と戦う難しさが語られています。
木材で作られ、漆仕上げであればさぞ燃えやすかったことでしょう。
この火災について、消防や警察が原因究明を試み、電気設備の老朽化が濃厚とされました。しかしながら、多くが焼失している中では因果関係が追求できず、最終的には原因不明と結論づけられています。
「火災の原因は不明」の意味
原因不明という報道により、「うさんくさい」などの批判も見かけました。しかし、調査報告書における「原因不明」は【全く検討がつかない】という意味ではなく、【恐らくこれが原因だろうが、因果関係が追求出来ない】という意味なんですね。報告書らしいなと感じると同時に、今後の防災対策のためのヒントが見つかっていることに少し安堵しました。
もう二度と沖縄のシンボルを失うまい。
首里城公園のホームページには、その決意が綴られています。
当時の建物の状況
規定以上の消防設備
火災前の首里城には、消防法に規定された通りに消防設備が設置されていました。むしろ、本来規定されていないものまで自主的に設置されていたことが分かっています。
当時の正殿の中にスプリンクラー等の自動消火設備が無かったことも火災拡大の理由の1つではないかと指摘があるようです。建築基準法の適用が除外される復元建築物において、常時自動消火設備用の水を抱えるだけの耐性があったのかという点も論点として上がっています。(沖縄県:再発防止報告書第4章より)
首里城は建築基準法適用外
確かにその通りだと思いました。普段の仕事で復元建築物に関わることがないので、「復元建築物は建築基準法の適用外」とは考えたこともありませんでした。
延焼ラインやら窓の数やら防火区画やらと言っていたら全く違う間取りの建築物ができてしまうかも知れませんし、そうなったら復元建築物の意義が損なわれてしまいます。
実際、火災が上の階へ急速拡大した原因として、防火区画が無く竪穴(階段エリア)に火が入りやすかったことや、天井高が低く室内で発火した場合にすぐに天井に着火しやすい構造だったことなどが原因の可能性として考えられています(沖縄県:再発防止報告書第4章より)。
また、正殿からの出火が周囲の建築物へ延焼したのは建築物同士の距離の近さ等が挙げられています。
消防法における重要文化財
私たちの周りには住宅や店舗、学校など様々な種類の建築物があります。この多くは【特定用途防火対象物】と【非特定用途防火対象物】に分類されます。特定防火対象物のほうが、非特定防火対象物より設置すべき消防設備の種類が多く設定されています。
首里城公園は消防法令別表第1の17項(重要文化財)で良いかと思いますが、重要文化財は先にお伝えした2種類のうち、【非特定用途防火対象物】なんですね。
この国の重要文化財は、非特定用途防火対象物と分類されるらしい。
首里城火災の3年前、身内や友人たちが大きな地震を経験しました。熊本地震です。あの時には、熊本城が崩れました。首里城焼失の報に接し、馴染みの場所が崩れた時の記憶が蘇りました。重要文化財が非特定用途防火対象物として設定されていることを知って驚きました。
無資格で建設業に就くのは厳しいと思った時、ふと湧いて来たのが首里城火災でした。消火設備に関する免許は無いか。あの日の驚きが転じて、5年越しで消防設備士を取得するに至りました。
首里城、再建へ
2019年10月31日、首里城公園内では多くの建築物が焼失しました。しかし、首里城公園外は火の手を免れました。首里城は民家に囲まれた城であり、首里城から火の粉が飛べば民家への延焼の可能性がありました。
あの日、首里城城下町が守られたのは現場で消火活動に当たられたすべての皆さんのおかげです。
復元建築物の再現性と防災性能を両立する大変さを抱えながら復興に向けて歩んでいく姿を見守りたいと思います。
現在、3年後の完成を目標に正殿の復元作業中です。その現場が見られますので、年末の旅行の行き先に迷われている方、候補の一つにいかがでしょうか。
それでは、本日はこれで失礼致します。
※出典※
沖縄県公式:「首里城火災に関する再発防止等報告書の掲載」
沖縄県公式:「首里城復興課」
首里城公園:「首里城復興へのあゆみ」