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男性の更年期障害とは?症状や受診する科を解説
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更年期障害は男性にも起こる現象ですが、女性特有の問題というイメージがあります。実際、男性の更年期障害は広く認知されておらず、年齢のせいだと誤解されるケースも少なくありません。
症状はイライラや性機能の変化と幅広く、悪化すれば「仕事にいけない」や「家族と笑って過ごせない」など、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
それらを防ぐには、症状を更年期障害として認知し、適切な診療科の受診が重要です。
この記事では、男性の更年期障害に現れる主な症状や受診する科を解説します。
治療法や対処法もあわせて紹介するので、更年期障害に悩む男性やパートナーの方は、ぜひ参考にしてください。
男性の更年期障害とは
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男性の更年期障害は、男性ホルモンの低下に伴い心身に変調が生じる状態です。
医学的には加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)といわれ、症状が続く期間や程度には個人差があります。
男性ホルモン(アンドロゲン)の主要成分であるテストステロンは精巣で作られ、生殖機能や筋肉・骨格形成に重要な役割を果たします。
加齢に伴いホルモン分泌量が減少すると、精神・身体・性機能に影響が及ぶのです。
中高年代では、社会的役割の変化などによる多様なストレス要因が複雑に絡み合い、男性ホルモンの低下が急速に進みます。
その結果引き起こされるのが、さまざまな心身の不調です。
男性の更年期障害は、認識が不十分なケースが多い傾向にあります。
2022年の「更年期症状・障害に対する意識調査」では、更年期にまつわる不調の認知割合を男女で比較すると、以下のようになりました。
<知っている人の割合>
男性
30~39歳 9.8%
40~49歳 10.1%
50~59歳 15.7%
60~64歳 16.5%
女性
30~39歳 14.2%
40~49歳 30.6%
50~59歳 42.4%
60~64歳 49.3%
更年期障害についての認識は、男女間で大きな差があります。
男性の更年期障害に関する理解を深めるためには、ご自身の状態をしっかりと把握し、必要に応じて病院受診や生活改善といった対策が大切です。
参考:厚生労働省|2022年 更年期症状・障害に対する意識調査(結果概要)
男性の更年期障害はいつ・どのような症状が現れる?
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男性の更年期障害について、以下2点の認識が重要です。
発症年齢
症状
それぞれ詳しく見ていきましょう。
発症年齢
男性の更年期障害は個人差が大きく、30代から70代まで幅広い年代で起こり得ます。
40代以降は、年齢による社会的役割の変化や男性ホルモン欠乏の進行という理由から、発症しやすい年代です。
たとえば、会社での昇進や親の介護といった生活の変化は、心身に大きなストレスをもたらします。
男性ホルモンの分泌量が、ストレスなどの要因により急激に減少すると、心身機能のバランスが崩れて体調不良を引き起こすのです。
2022年の「更年期症状・障害に対する意識調査」では、男性の更年期障害の意識や影響について、以下のような結果となりました。
<症状を自覚しても受診していない人>
40~49歳 86.6%
50~59歳 86.5%
<更年期障害が日常生活に影響を及ぼしている人※>
40~49歳 30.6%
50~59歳 25.1%
※症状が軽度から重症の人を含む
男性は更年期障害による症状を自覚しながらも、医療機関を受診していないことがわかります。
仕事が多忙だったり症状がデリケートだったりする分、受診へのハードルは高く、簡単にはいかないものです。
しかし、症状が悪化すれば、社会生活の継続が難しくなる可能性も出てきます。
男性の更年期障害は、女性と異なり長期的に不調の続く傾向があり、年齢ごとの体調変化をしっかりと把握する点が重要です。
早期発見と適切な対処で生活の質を維持するためにも、専門医を受診する意識を持つようにしてください。
参考:厚生労働省|2022年 更年期症状・障害に対する意識調査(結果概要)
症状
男性の更年期障害は多様な症状を引き起こし、生活の質に大きな影響を与える可能性があります。
主な症状は、以下のとおりです。
<身体症状>
筋力低下
体調不良
睡眠障害
ひげの伸びが遅い
疲労感 など
<精神症状>
イライラ
無気力
抑うつ
不安
集中力の低下 など
<性機能症状>
性欲低下
勃起障害
射精障害 など
女性と同じように抑うつやイライラといった症状は出現しますが、男性では性機能面の多い点が特徴です。
症状の持続期間も異なり、女性の場合には、閉経すれば改善します。
しかし、男性の更年期障害は徐々に進み、幅広い症状が長期的に続くケースもあります。
症状の程度は男性ホルモン欠乏の度合いによって異なり、人によっては更年期障害と気づいていない場合もあるのです。
また、自覚していても周囲の人に相談しにくいと感じてしまい、受診につながらないことも少なくありません。
更年期障害の可能性を判断するには、以下のチェックシートを活用してください。
症状の重さに合わせて1〜5点の点数をつけます。
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合計点による症状の程度は、以下のとおりです。
17~26点 なし
27~36点 軽度
37~49点 中等度
50点以上 重度
疲労感や睡眠の質低下などの身体症状は、自覚しても我慢してしまいがちです。
しかし男性ホルモンの低下した状態を放置すると症状は悪化し、以下のような疾病へと進行する恐れがあります。
うつ病
不眠
メタボリックシンドローム
フレイル(加齢や疾病により、心身の機能が衰えもろくなった状態)
認知症 など
パートナーに症状が出現したときは、気持ちを傾聴し尊重するなどの支援が重要です。
共感する気持ちがあれば、お互いを大切にして過ごせます。
もしパートナーに相談するのが難しければ、専門家を頼りましょう。
更年期障害が悪化して日常生活に影響を及ぼさないよう、症状を自覚した際は我慢せずに受診することが大切です。
受診する診療科については、次項の「男性が更年期かなと思ったら何かを受診すればいい?」を参考にしてください。
出典:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン」検討ワーキング委員会|加齢男性 性機能低下症 診療の手引き
男性が更年期障害かなと思ったら何科を受診すればいい?
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男性の更年期障害は、症状が悪化し日常生活に影響を及ぼす前に受診することが大切です。受診する際は、以下の2つを知っておくと役立ちます。
受診する科
治療
それぞれ詳しく見ていきましょう。
受診する科
男性の更年期障害では、症状に男性特有の内容も現れるため、泌尿器科の受診が推奨されます。
ただし更年期障害は、症状が複合して現れる分、他の疾患と判別が難しい傾向にあります。
判断に悩む際は、「症状」で前述したチェックシートを活用してもよいでしょう。
不眠や抑うつの症状がひどく、日常生活に支障をきたす恐れがあるときは、精神科や心療内科に紹介されるケースもあります。
病気ではないのに体調が優れず、日々の生活でもやる気の出ない状況が出現したら、早めの受診が必要です。
治療法
男性の更年期障害では、テストステロン値や症状によって治療方法を選択します。
治療方法は、以下のとおりです。
男性ホルモン補充療法
漢方薬
カウンセリング
検査の結果テストステロン値が低い場合には、男性ホルモンの補充療法を実施します。
身体・精神症状に対する漢方薬も有効です。
男性の更年期障害は、ストレスが大きく関係しているケースも多く、生活習慣や人間関係の改善が求められます。
個々の症状や環境に合わせて、適切な方法の選択が大切です。
症状が他の疾患と類似する部分もあるため、医療機関での正確な診断と経過観察が必要です。
治療には時間がかかる点を認識し、長期的な視点で治療に臨むようにしましょう。
男性が更年期障害になったときの対処法
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男性の更年期障害には、さまざまな要因が関わっており、日常生活での適切な対策が症状改善につながるケースもあります。
とくに、テストステロンの維持・向上に焦点を当てた、以下の対処法が効果的です。
毎朝太陽の光を浴びる
バランスのよい食事を心がける
適度に運動する
十分に休息する
ストレスを自覚する など
テストステロンを高める食材の摂取を心がけると、生成が促進されて症状改善につながります。
そのためには、以下のような食材の摂取が有効です。
牛肉
卵
ブロッコリー
ニンニク
ヨーグルト
バナナ
オリーブオイル など
とくに、ビタミンDは重要な役割を担うため、日光浴や食事により摂取を心がけましょう。
コミュニティに所属するなど、自分の居場所を持つこともテストステロンの低下を防ぎます。
スポーツやゲームによって達成感を味わえば、ストレスが発散され、症状改善に効果を示します。
男性の更年期障害と向き合うには、まずご自身がストレスを抱えている点についての認識を持つことが必要です。
出典:久留米市|心も体も健康に みんなに知ってほしい男性の更年
まとめ
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男性の更年期障害は、症状を自覚しても我慢してしまい、深刻化するケースもあります。まずはご自身の年齢による変化について、そのときどきでしっかりと向き合うようにしましょう。
更年期は誰もが通る道であり、これからの人生に向けて準備する期間です。
日々を笑顔で過ごすためにも、辛い気持ちは溜め込まずに誰かに打ち明けて、ご自身を労わり大切にしてください。