Program1.公共施設の広報物をつくる
01_公共施設の広報物
広報物には、広報誌やパンフレットなどがあります。それらはお客さまに向けたメッセージで形成されています。しかしお客さまに向けたメッセージはそれだけではありません。これから説明するブランディングに関わる「物」と「者」に関連する広報物もあります。
ブランディングという言葉を聞いたことがありませんか。公共施設はサービスを提供する施設として民間と同じ土俵でお客さまを分け合っています。そこでは施設や団体として「なんとなくいいな」と思われるようなブランドイメージを持つ「ファン」を作ることが重要となります。核となるファンによる口コミやSNSなどを利用した情報拡散が重要なポイントとなっています。
そのファンをつくる「ブランドイメージ」は、悪いイメージは簡単ですが、良いイメージとなると短期間ではつくれません。日頃の積み重ねによって構築されていきます。簡単に言ってしまうと見た目です。それには「物」と「者」があります。「物」としては、施設そのもの、施設内のポスターやイベント案内などの掲示物、場所を示すサイン、注意をうながす看板などがあります。「者」としては、施設従事者の身だしなみ、振るまい、言葉づかいなどがあります。
「物」と「者」には、広報物という視点から見ると「物」としては掲示物、「者」としては施設従事者のネームプレートやユニフォームがあげられます。これからそれらの考え方とつくり方を説明していきます。
02_「物」目にする掲示物は広報物
ブランドイメージを構築することに意外と関係ないものと考えがちなのが掲示物です。印刷物で専門家に依頼したポスターやパンフレットなどはブランドイメージにつながると解釈されているのですが、施設内のいろいろな場所にある職員がつくる掲示物も、全てお客さまの目に入ってきます。これらを大切にしないでブランドイメージは成立しません。
ポスターやイベント案内、場所を示すサイン、注意をうながす看板など施設内にあってお客さまの目に入るものは、全て広報物です。広報活動に関係ないように思われるものも、お客さまの目に入るものはその施設の雰囲気を形成する情報として広報物なのです。ブランドイメージをつくるものです。十分に、その内容、掲示には注意する必要があります。
各種掲示物をつくるという視点から以下に対処方法を整理しました。
●イベント案内ポスター(規模大)
規模が大きいイベントの場合は、印刷会社に依頼するのが一般的です。ここで、注意していただきたいことが、全ておまかせにしないでください。事前にプランニングシート※と印刷用のロゴデータや写真データ、過去のイベントの印刷データなどを用意して、イベントコンセプトと団体コンセプトをお伝えください。
団体のブランドイメージは年数をかけてつくられます。そのイメージをコントロールできるのは団体の担当に方です。表現イメージのブレを少なくするためには、広報マニュアルなどを制作すると良いでしょう。表現イメージにぶれが少ないものが出来あがる可能性が高くなります。
※プランニングシート:つくりたい物の内容、目的、対象、期間、ターゲット、コストなどをまとめたシート状のもの
●イベント案内ポスター(規模小)
規模が小さいイベントの場合は、担当者が自らパソコンで作成するのことが多いと思われます。担当者は配置転換などにより代わることが多く発生します。そのようなときにも広報マニュアルが強い味方になります。そこに基本のフォーマットまで定められていると、さらに良い結果が生まれます。
広報マニュアルがない場合でも、基本のフォーマットや作成基準など設定することを検討してください。その場限りでは恒常的な表現が難しくなりブランドの形成から程遠いものなってしまいます。
●教室プログラム説明資料
これが一番問題が多く発生するもののようです。なぜかと申しますと、このような複数のプログラムが存在するものをわかりやすく見やすくするのは、意外とプロが作成しても難しいものです。それを、一担当者がつくるのは至難の業です。お客さまのためにも資料の設置場所を考慮した基準フォーマットをつくり情報の統一とわかりやすさを追求してください。
Web情報との連携も綿密に取る必要があります。情報の切り分けをどうするのか、どちらの情報を基準にするのかなどです。Web担当と教室プログラム担当者が異なっていると、連携が難しくなります。そのようなときにも、広報マニュアルなどで運用基準を定めてスムーズな運用を行ってください。
●施設案内サイン
案内サインは施設がつくられたときに同時に設置されています。平成になってできた施設では都道府県や市区町村による公共施設のサイン計画がつくられている関係でどこもしっかりした物が多くなっています。しかし、昭和の時代に建設された施設の中にはサインの重要性が見落とされたわかりづらいものがあります。そのような施設もサイン計画が見直され新しくわかりやすいサインに切り替わってるところがある、という状況です。
そのような状況下で施設のサインの見直し計画が立ち上がったときには、施工が中心の会社でなく設計部門を大事にしているような会社にお願いしたいです。一度変更したら長く使うものです。計画を十分に練ってお客さまに見やすくわかりやすいサインを提供してください。
特に追加やメンテナンスのときにサインの基本コンセプトを台無しにして残念なサインにならないよう、コンセプトをまとめた資料を残し、それに基づくようにしてください。
●注意喚起の掲示物
この掲示物が施設の雰囲気を左右すると言って良いものです。「静かに!」「ここで食事しないでください!」「撮影禁止!」とか切りがありません。そのような行為をしないお客さまにはうるさく邪魔な存在です。逸脱した行為には従事する職員がさり気なく注意すればすみます。できるだけ少なくしてください。その表現品質も高くしてください片手間で作成した品質の低いものでは施設全体の品質を下げることになります。
●チケット販売機の説明掲示物
チケット販売機の周りに説明の掲示物を見ることがあります。わかりやすくするために次々と増やして何が何やらわからなくなる、というものを見たことがあります。
この原因は、一部の声高なお客さまの意見をそのまま反映した結果です。ほとんどの声なきお客さまには、もともと何もない方がわかりやすかったかもしれません。
計画性のない掲示物を増やしたために、問題なく使えていた人にわかりづらくしてしまう。という危険性が高いです。十分な調査・ヒアリングで計画的で品質の良い表現に努めてください。
03_「物」掲示物のつくりかた
Step1. はじめにプランニングシートをつくる
計画書とか設計書とかブリーフィングシートと言われているものを知っていますか。これからつくりたい物の内容、目的、対象、期間、ターゲット、コストなどをまとめたシート状のものです。人に依頼するときの必須書類です。これがないと何も始まりません。情報の設計図にあたるものです。ここでは、このシートのことをわかりやすくやわらかい名「プランニングシート」と呼ぶようにします。
最初は面倒かもしれませんが広報物の作成にはプランニングシートをつくります。なぜ必要なのか。その理由には2段階の効果があるからです。1段階は作成途中です。目的がずれたり対象が変わってしまうということがないように進めることができます。大事なことです。外部からの変更依頼に対しては、このシートをもとに説明をすることで、論理的な意見公開ができてよりよいものが作成できることになります。
もう1段階は作成後です。掲示物はデータの再利用が多く発生します。そのときにこのシート内容を確認したスムーズな進行を可能とします。変更する内容や追加情報があれば、プランニングシートをもとにして無条件に情報量を増やすことなく、情報の取捨選択が論理的に可能となります。プラスプラスの情報過多のわからない掲示物になることから救ってくれます。
無駄な時間をつくらないために最初にプランニングシート作成してください。
Step2. 情報を選択
情報をグループにわけます。このときに同時にプランニングシートの目的や対象から情報を絞り込みます。そして足らない情報があれば追加します。情報量の一つの判断基準は「掲示物からお客さままでの距離」です。遠くからの視認性を求めたものであれば極端に情報は少なくなります。例としては交通標識などです。近ければ情報量を多くしても読むこと見ることができます。
ただし、ここで注意してください。手持ちのものでなく掲示物です。持ち帰ることもなく、立ち止まって見るだけです。その場で判断して次の行動に移るための情報です。自分に「関係あるもの」「興味あるもの」などを判断する情報で十分ということを忘れずに情報を絞り込むことが大事です。詳しい内容はWebに掲載や詳細のペーパーを用意するなどの対応が必要です。くれぐれも両方を兼ねたものを作らないようにお願いします。情報に兼ねるはなくどちらにも通用しないものになります。掲示物は詳細情報への窓口と考えてください。
Step3. 情報の理解の順番を塊で並べる
情報には理解しやすい順番があります。その順番を無視すると脳のメモリーを無駄に消費してわからない・拒否・無視につながります。見る人が判断するための情報を順番に表示します。奇をてらったテクニックは必要ありません「誰のため」「条件は」「どうしたら」という投げかけで進めてください。5W2Hを有効に使ってください。
ここで、プランニングシートをかえりみます。そこには、目的が記載されています。何のためにその情報を存在させるのかがわかるはずです。その目的の回答となるような順番が必要です。必要ないものがあれが外します。足らない情報があれば追加します。整理してください。
順番をつけるときに、もう一つ大切なことがあります。塊=グループを大切にしてください。塊となる情報を探してください。脳は情報を塊に分けて理解しようとします。その行為を助けることは脳の負担を減らしわかりやすさにつながります。近くに置くことによりわかりやすくなるのものを塊としてください。
順番の例です。検索する場合の条件を考えて決めるのも一つの方法です。
1.誰・・・子供、何歳以上、女性…
2.何
3.無料・有料
4.日時
5.参加方法
複数の情報が展示される状況(掲示板コーナーなど)、例えば教室プログラムなどは、決まった順番、同じ位置で情報を配置することにより複数のものから探しやすくわかりやすくなります。単体の掲示物で考えないで複数の情報が展示されたときの状況を考える必要があります。つくる人が異なる場合には、フォーマットを決めて同じような表情にする必要があります。個々の作成当事者は特長を出そうと目立つような表現にしがちですが、情報を探すお客さまに取っては目障りな状況になり探せない探したくないという拒否につながり集客に結びつかないことになります。
Step4. 重要度を考えて大きさを変える
情報は紙面に同じ大きさをで配置するとわかりづらいです。順番通り配置してあるのでわかり易いはずですが、それではわかりづらいのです。このことに意外と気づかないでレイアウトをはじめてしまうと、バラバラ見づらいものができてしまいます。
まず、順番通りに同じ大きさで配置します。その後に重要度により大きさの変化をつけていきます。塊の中でも重要度が異なりますので大きさを変えます。単純に一番重要なものが一番大きくて、順番に小さくするのが基本です。
後、大切なことが、一般的な人が前もって知識として持っている大きさの概念です。イベントのタイトルなどが一番大きいくて次に場所、日時みたいな、これらも重要です。これらの知識として蓄積された情報の大きさの概念から逸脱したものは情報理解が遅くなるので注意が必要です。
Step5. レイアウトの方法
情報の理解の順番に従い配置します。配置には視線の流れを有効に使います。配置する用紙は印刷用紙として使われるA4、A3、A2、などA列の用紙を縦か横に使用するのが基本です。√2矩形と言われるものです。半分に切ると縦横比がかわらない2枚の用紙ができるのでいろいろな大きさの紙を無駄なく作れます。
掲示物とした場合は、用紙はビジネス環境にあるプリンターの最大サイズA3が基準になります。A3より大きいサイズを印刷したい場合には、PDFデータから簡単に印刷するサービスを利用してください。大きいサイズを印刷できるプリンターを導入した運用はコストや手間から得策ではありません。
ここでは、A3縦使いを使う例を示します。重要度による大きさの変化は前工程で済んでいますので、用紙の中に収まるように調整しながら配置します。これで完成です。え!それだけ。それだけです。余計なことを途中でしてなければこれでOKなのです。でも、きっと無理ですねいろいろしてます。そこで、レイアウトの基本をまとめました。
1.揃える
2.余白を使い塊をわかりやすく
3.フォント種は2〜3種にする
4.色は3色以内
以上を確認しながら慎重にレイアウトしてください。
Step6. 印刷
印刷は最後にある工程です。A3サイズまでは事務所にあるレーザー式の複合コピー機やプリンターで十分です。もちろんメンテナンスが行われていて色がある程度正しく出るという場合です。ですが、色が正しく出ているか一般の方にはわかりません。わかる手段もあまりありません。プリンターが2台以上あれば実際に印刷して良い方を採用してください。過去に印刷会社による印刷物とデータがある場合には、プリンターで印刷して印刷会社による印刷物と比べる方法で品質のチェックも可能です。できるだけ品質の良い状態を作ってください。
大量、20部以上刷る場合には外部に依頼することを調査してください。インターネットのPDF送信により印刷物が数日で到着するサービスを全国で行っています。品質も問題ないレベルの会社が多くありますので一考の余地ありです。A3より大きいサイズの外注です。1枚から印刷するサービスがありますので調査してください。くれぐれも何枚刷っても同じような料金なのでと言われて余分なものまで発注しないように気をつけてください。
Step7. ブランディング
公共施設には様々な掲示物が存在しますが、単体で考えるとイメージの不揃いを起こします。広い施設全体を一つの用紙と考えて、どのように統一した表現にしていくかというブランディングが必要になります。
単純に印刷物は印刷会社、サインはサイン制作会社、WebはWeb制作会社という単体で発注してイメージの不揃いを起こさないでください。これからは総合的に考える方法を模索して民間サービスと競合できるブランドイメージの構築を目指してください。そのような考え方が、公共施設を住民のため利用者のためにしていく第一歩になると信じております。
Step8. データ管理
「ブランドとしての統一表現に対する考え方が不足している。」多くの団体とお付き合いをさせていただく中で、この問題に直面することが多くあります。
統一して使用しなければなないロゴマークや地図などのデータが団体内で管理されていない。もしくは、管理されていても使用目的によるファイル形式の違いと使い方がよくわからないという状況です。
そのために、ロゴがボケていたり色が異なっていたりと表現の不揃いが起きております。外部の印刷会社に任せずに、データを内部管理する必要があります。表現統一のために基準書や広報マニュアルを早急に作成してください。
04_「者」ネームプレート、ユニフォーム
公共施設のブランドイメージを形成する「者」としては、施設従事者の身だしなみ、振るまい、言葉づかいなどがあげられました。それらは、接遇といわれるもので民間では接客マニュアルなどにより標準化、均質化を図っています。それを、広報物という視点で見たときには「者」が身につけるネームプレートやユニフォームなどになります。
広報物としてのネームプレートの作成は、外部へ向けたものという目的を明確にしてください。中途半端に内部と外部を兼ねた情報量が多いものでは外部の人には見えないわからないというものになります。気をつけてください。
最近では、個人情報の問題で名前がわかるものは外部に出さないことが増えています。ナンバーで管理して、外部の方にも「何番の人に丁寧な説明を受けた」など情報収集が個人の評価につながっています。
ユニフォームは、お客さまと従事者を明確に分けるものです。お客さまから見たときにひと目で分かる工夫が必要です。当然、非常に目立つものなのでブランドイメージにも影響が大きいです。十分に表現にはご注意ください。