Jリーグのクラブ名ってどう付ける
Jリーグを目指して岡崎に誕生するクラブはどんな名前になるんでしょうか?
「みんなでつくるプロサッカークラブ岡崎」(みんつく岡崎)は、7月に続いて8月15日にもオンライン(Zoom)で市民参加ワークショップを開き、クラブの名前につながる「想い」や「キーワード」などを一緒に考えてもらいました。「サポーターとの距離を近く」「街のビジョンと一致した取り組みを」「市民全体の共通の話題に」「クラブのカフェを」など、さまざまなアイデアや意見が集まりました。これをもとにして、いよいよこれから名前を考える作業に入ります。
が、その前に! 今あるJリーグのクラブの名前はどんなふうに付けられているのか、Jリーグ公式サイトで調べてみました。知ってる人には当たり前なんですが、改めて予習ということで。
■英語、スペイン語、イタリア語、造語!
まず基本の確認。Jリーグは「地域に根差したスポーツクラブ」を目指し、呼称は「地域名+愛称」としています。
J1、J2、J3を合わせた57クラブを見渡すと、愛称は「外国語系」「造語系」「FC系」に分類できそうです。
ドラゴンズとかグランパスとか、シンボルやマスコットなどの外国語を愛称にするパターンを「外国語系」とくくりました。スポーツ界では一般的で、プロ野球は12球団すべて英語なのですが、Jリーグはスペイン語やイタリア語など多彩です。
■水戸は徳川御三家・水戸藩の家紋「葵」から
英語の例は、グランパス(シャチ)、アントラーズ(鹿の枝角の複数形)、レッズ(赤色の複数形)など。J2の水戸は徳川御三家・水戸藩の家紋である「葵」の英語表記ホーリーホックです。徳川家康生誕の地・岡崎としては「これはありだったかも」という感じでしょうか。
「結ばれた」「団結した」などの意味を持つユナイテッドを千葉、福島、鹿児島の3クラブが使っています。地元地域の連帯感を表しており、特に鹿児島は「本土、離島、そして県外、世界中の鹿児島にゆかりのある人の鹿児島愛をひとつに」と壮大。J入会に向けて2クラブが統合したのも関係しているのでしょうか。英プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドなどのイメージもあり、サッカーっぽい名前です。
■選手が常連だった喫茶店
スペイン語はマリノス(船乗り)、セレッソ(桜)、アビスパ(クマンバチ)、ジュビロ(歓喜。ポルトガル語でもある)、アルディージャ(リス。スペイン語の発音は末尾がリャ)など。
イタリア語はフロンターレ(正面の)、ガンバ(脚)、ファジアーノ(キジ)。ヴォルティスはVortice(渦の意。発音はヴォルティチェ)から。
ポルトガル語はパルセイロ(パートナー)。ヴェルディはヴェルデ(緑色)からの造語だそうです。
ドイツ語はブラウブリッツ(青い稲妻)。1993年のJリーグ発足時にあった10クラブ「オリジナル10」の一つで、マリノスと合併してしまったフリューゲルスはドイツ語の「翼」でした。
京都のサンガは、インドなどで使われた古代語のサンスクリット語で「仲間」を意味する仏教用語とのことです。
日本語もあります。鳥栖のサガンは、長い年月をかけて砂粒が固まって「砂岩(さがん)」となるように、小さな力を集結し立ち向かうことを意味しています。松本は1965年に長野県選抜の選手を中心に結成された山雅サッカークラブとして活動が始まっていますが、結成当時の選手たちがよく通った駅前の喫茶店の名前が「山雅」です。こういう歴史や街のストーリーがある名前って納得です。
■新しく言葉を作り上げる
「造語系」としたのは、新しく言葉を作るパターン。かなり工夫やセンスが必要と思われます。
エスパルスはサッカー、清水、静岡の頭文字「S」と英語のPulse(心臓の鼓動)を、サンフレッチェは毛利元就の教え「三本の矢」から「三」とイタリア語のFrecce(矢)を組み合わせたもの。ヴィッセルは英語のVictory(勝利)とVessel(船)から生まれた言葉です。
複数の外国語を並べた名前も多く、レイソルはスペイン語のRey(王)とSol(太陽)。「太陽王」を普通にスペイン語で表すとRey de Solとなるようですが、日本で使うにはdeがない方がスッキリしますね。ベルマーレはラテン語のBellum(美しい)とMare(海)、モンテディオはイタリア語のMonte(山)とDio(神)、ヴァンフォーレはフランス語のVent(風)とForet(林)、アルビレックスははくちょう座の中の二重星を表すAlbireoとラテン語のRex(王)。ベガルタは七夕の織姫(ベガ)と彦星(アルタイル)から、ゼルビアは町田市の樹ゼルコヴァ(ケヤキの英語名)と市の花サルビアからです。
■道産子、じゃじゃ麺、釜玉うどん
造語にも日本語や方言を取り入れたところがあります。トリニータは英語のTrinity(三位一体)と「大分」を合体させ、コンサドーレは「道産子」を逆さ読みにしてラテン語の響き「オーレ」をつけました。
方言では、ツエーゲンは金沢の「つえーげん!(強いんだ!)」、ガイナーレは鳥取の「がいな(大きな)」、カターレは富山の「勝たれ(勝て)」という意味が入っているそうです。グルージャはスペイン語でツルを表しますが、地元の方言で多く含まれる「じゃ」の響きや名物の「じゃじゃ麺」にちなんでいます。カマタマーレは釜玉うどんとイタリア語のMale(海)とさすが「うどん県」のクラブ。
■「いつか世界の強豪と同じステージに」
「FC系」は文字通り「地域名+FC」。シンプルでわかりやすいですね。J1では東京と横浜、J2では愛媛と琉球、J3では岐阜と今治です。FC東京は「都民各層から幅広くサポートされる『都民のためのJクラブ』を目指す観点から、ホームタウン名『東京』を入れた、シンプルで誰にもわかり易く馴染みのあるものとした」。フリューゲルスの消滅を受けて創設された横浜FCは「地域に密着したクラブ作りをめざすため、覚えやすいネーミングに」。愛称があっても町田、松本、山口などはクラブ名に「FC」を入れています。
FC以外にも、英字の略称ではSCがJ2の栃木(サッカークラブの略)と相模原(スポーツクラブの略)。相模原は「世界の強豪クラブが地名のみをチーム名としていることから、SC相模原もいつか世界の強豪クラブと同じステージに立ちたいという思いが込められている」としています。長野パルセイロはAC(アスレチッククラブの略)です。
J3の横浜はY.S.C.C.。1986年に地域の公共財となることを目指して横浜スポーツクラブとして設立され、横浜サッカー&カルチャークラブ(Y.S.C.C.)」へ名称が変わり、2002年の法人化で横浜スポーツ&カルチャークラブ(NPO Y.S.C.C.)となり、「チーム名には地域住民と深く繋がる、スポーツクラブを通じた地域文化の発展を目指す、という想いが込められている」とのことです。
■地域名の範囲は?
以上、さまざまな愛称をまとめてみましたが、地域名も、市町村名、都道府県名、市町村をまたいだ地区・地域の名称などがあります。湘南ベルマーレは1994年にJリーグ正会員になった時はベルマーレ平塚でしたが、2000年に名前を変え、ホームタウンを平塚市から湘南の7市3町に拡大しました。北海道コンサドーレ札幌も当初はコンサドーレ札幌でしたが、2016年に現在のチーム名に変更し、ホームタウンエリアも拡大されました。
親しみやすく、覚えやすく、かっこよく、なるほどと納得できて……。岡崎市を中心にした三河のみなさんから応援していただき、愛される名前を、限られた時間の中でじっくり検討していきましょう。
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