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岡崎で100年先を考える

 Jリーグは理念を分かりやすく伝える「Jリーグ百年構想~スポーツで、もっと、幸せな国へ。」というスローガンを掲げて、「地域に根ざしたスポーツクラブ」を核としたスポーツ文化の振興に取り組んでいます。そんなJクラブを三河地域で目指す「みんなでつくるプロサッカークラブ岡崎(みんつく岡崎)」の地元には、すでに「100年先」を考えて活動しているグループがありました。岡崎市街地を流れる乙川の河川敷活用に取り組む「ONE RIVER(ワンリバー)」。グループの事務局として活動のエンジン役となっている岩ヶ谷充さん(36)を、みんつく岡崎発起人の森山泰行さん(52)が訪れ、100年後の未来を見つめながら語り合いました。

「面白いことやってんじゃん!岡崎」

森山:この前、乙川河川敷にテントが張られていたんだけど、あれは岩ヶ谷さんたちの活動?
岩ヶ谷:そうですね。ぼくらはいま、「ONE RIVER」というチームというか団体をつくっていて、乙川でいろいろな取り組みをしているんです。週末のキャンプイベントやリバークリーンという清掃活動をしたり、乙川のよさをもっと知ってもらおうと啓発イベントをしたり。

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森山:ぼく、乙川で結婚式を見たことあるんですよ。岡崎に来たばかりのころだったから3年くらい前ですね。河川敷をランニングしていたら、結婚式の準備をしていて。
岩ヶ谷:たぶんそれにもかかわっていますね。ぼくの知るかぎり、そのころ乙川の河川敷内で結婚式をしたのは一回だけですから。ウェディングプランナーの方から相談をもらいまして、アウトドアウェディングをやってみたいという話で、岡崎だったらどういうところでできますかね?って。乙川でもぜんぜんできるよっていう話をしてて、じゃあやりたい人が現れたら乙川でやりましょう!って話をしていたんです。そうしたら、たまたま知り合いの新郎新婦がアウトドアでやりたいって言いだして乙川を選んでくれたんですよ。
森山:結婚式を見た時に、岡崎ってなんだ面白いことやってんじゃんって思いましたもん。
岩ヶ谷:みんなが得意とするものを持ち寄ってやれないかって。新郎はアウトドア関連の会社で働いていたんでテントを出してもらったりだとか、乙川で観光船を運行している人が新郎新婦を舟に乗せて川から登場するだとか、本業は自転車屋さんなんだけどすごく音響関係が得意な人が式の音響を担当したり。ほしい暮らしは自分たちでつくる、っていうのが結婚した二人が掲げたテーマだったんですけど、それを体現できた一日で、ぼくもほんとに忘れられない日でした。
森山:すごい。
岩ヶ谷:ていうことで、ほんとになんでもやります。なんでもやっています。

「100年先を見よう」

森山そのウェディングプランナーの方のYouTubeに岩ヶ谷さんが登場していて、「100年後の日常をつくる」という話をしていますよね。Jリーグには「百年構想」というのがあって、「百年構想クラブ」というライセンスを取得していないとJリーグに入れないんです。これが今回、お話をするきっかけなんですよ。
岩ヶ谷:100年先を見よう、と言い始めたのは、ONE RIVERのリーダーをしている井上徹さんですね。委員長というか会長というかキャプテンというか、乙川での結婚式で音響担当をした自転車屋さんです。彼がけっこう面白くて、いつもだいたいそういうものを投げ込んでくるんですよね。固い言い方になっちゃうけど、ぼくが事務局長で、井上さんがまた大きいこと言ってぶち上げとるなあって言いながら、それをカタチに落とし込んでいくということをやっています(笑)
森山:事務局長はいちばん動かなきゃいけないところですね。

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岩ヶ谷:ぼくらの乙川での活動はかれこれ丸6年になります。最初は行政からの委託でした。乙川は今でこそ歩道が整備されてきれいになりましたけど、以前はうっそうと草が生えていて、夜になると真っ暗で、あんまり人も寄り付かなかった。そんな、まちの南北の文化を遮断してしまうととらえられていた場所を有効活用できないかと岡崎市が言い始めたんです。ぼくが当時在籍していたNPOが、その活用を一緒に考える仕事を受けて、岡崎市と一緒に動き始めたのが6年前なんですね。当然、岡崎市とぼくらだけではなにもできないんで、一緒に活動してくれる事業者を集めようと声掛けしたら、そのプロジェクトの2年目くらいから参画してくれたのが井上さんです。河川敷は完全に歩車が分離されているんで自転車にとってはすごくいい環境ですし、井上さんは生まれも育ちも岡崎で、やっぱここは岡崎の中心であり真ん中なので、自分としても、ここでなにか活動していきたい!っていう熱い思いで参画してくれて、それ以降はかなり深くかかわってくださっていますね。
森山:自転車はいいよね。あったかい季節に乗り回したい。
岩ヶ谷:井上さんとは、ただイベントをやれればいいよねとか、ただ事業をやれればいいよね、ということではなくて、事業とかその人の得意なことを通して、この場所をどう変革できるかということをたくさん話し合ったんです。井上さんはここで別に自転車を売りたいだけじゃない。岡崎に来ると自転車に乗っている人が増えたり、乙川に来ると自然に自転車に乗っていたりという、まちと自転車の関係性をつくりたいと。まちと自転車の楽しい関係と言ったりしていますが、その時点で、商売人としての域を超えた立場でこの場所のことを考えてくださっていますね。

自分本位じゃ実感できない

森山:100年先って自分は生きてないし、次の世代の息子や娘たちが大人になって、またさらに孫たちの世代の話。そこでなにが残っていくのかっていったら、想いや理念、考え方などを受け継いでいけるような、人とのかかわり合いをつくっていくというのが、すごく大事なのかなと思いますね。

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岩ヶ谷:最初、井上さんが100年先だ!と言った時は、正直リアリティないなあって思ったんですよ。自分が実感できないから。自分は、どこか自分ありきというか、自分本位でものごとをとらえようというところがあるんだけれど、100年先を考えようとすると自分本位では自然といられなくなって、自分たちの子どもの世代になにが残せるか、子どもたちの子どもたちになにが残せるかっていうふうになった。今はすごくしっくりきているというか、そういうものに向かって活動をつなげていくっていうことがぼくたちらしさかなと思えています。
森山:ヨーロッパには100年以上続いているサッカークラブが何チームもあります。ぼくは30代前半にスロベニアの150年続いているというクラブでプレーしたんだけど、おらがまちのチームのことを誇らしげに話しているお年寄りがいたんだよね。日本よりも経済的には豊かではないし、人口もぜんぜん少ないし、でもクラブが地域に根付いている。自分たちが誇れるだとか、自慢できるものを作り上げていくっていうのがすごく大事なのかなと思った。一番大事なのは、自分が主体で入っていって、その思いを伝えて輪を広げて仲間づくりをしていくこと。岡崎でJリーグクラブをつくろうとしてやっていることが、岩ヶ谷さんたちの活動と重なっている部分があって、共感が持てます。
岩ヶ谷:もちろん自分にやれることややるべきことがいっぱいあるんですけど、子どもたちが楽しんでいる様子を見ると、自分だけじゃないと、思いをつないでいく大切さを実感するようになりましたね。特に、毎月の第2土曜日の朝にやっている河川敷の清掃活動、リバークリーンで一緒に活動しているあおいくん(海野碧惟くん)は、それを感じさせてくれます。
森山:ぼくもリバークリーンに参加させてもらったことがあるんですが、お話を聞きながらちょうどあの子のことを考えていました。

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岩ヶ谷:小学生なんですが、ぼくに言われたからリバークリーンをやっているんじゃなくて、あの子自身が本当に乙川をきれいにしようと思ってくれているんですよね。そういうのを見た瞬間に、自分でやれることばっかり考えているのってちょっとなんか間抜けだなって思った。100年先に対してリアリティがあるかないかと言われたら、ないんですよ。でもリアリティがないから面白いと思えるようになったっていうのが現状かなと思います。
森山:魂が揺さぶられてやってる感じがするもんね。意欲的にやるってことはなんかハートで感じるものがあるんじゃないかなって。清掃活動を「宝探し」だと言って、楽しんじゃっている。

「楽しくないと続いていかない」

岩ヶ谷:楽しくなかったら続いていかない。楽しいっていうのは広義でなかなか難しいところがあるんですけど、楽しくあれば、欲求に素直になれる。楽しいから乙川のことをもっと知りたいとか、じゃあきれいにするためにそれを阻害する要因はなんだろう?とか、もっとこの場所をよくしていくには何ができるだろう?と欲求に貪欲になっていくので。あおいくんは、あそこにゴミが落ちていた、こういうことをやったほうがいいとか、どんどん言うし、水質のことなんかぼくはもう追いつかない(笑)。子どもに対して大人がなにか与えるっていうふうに一般的には考えるけど、乙川は大人が子どもに教えてもらうこともある。そういう場所にしていきたいと言ってくれた方もいて、まさに今そうなっている。みんなが得意とするものを持ち寄れる場所、それは年代も性別も国籍も問わず、いろんな人が集まって、そういう知を結集させていく場所になっていけば本当にいいと、ぼくは乙川はそういう場所になっていけばいいと本気で思っています。
森山:十人十色ですからね。同じ人間はいないからさあ。
岩ヶ谷:で、それを否定し合わない。
森山:そうそうそう。
岩ヶ谷:そこから学び合う姿勢っていうリスペクトの文化の中でやっていきたいなあというのは常々思う。ぼく自身も、あの時は間違っていたなあ…って思うところもあって。
森山:反省しながらね。

子どもたちに怒られる幸せ

岩ヶ谷:忘年会とかで、ぼくがしゃべりすぎるわけですよ。それで子どもたちが怒る。岩ヶ谷さんしゃべりすぎだって。
森山:ははは。いい意見じゃないですか。
岩ヶ谷:岩ヶ谷さんしゃべりすぎるから、と言ってくれる環境は幸せだなあと。
森山:みんなが教えてくれるんだ(笑)
岩ヶ谷:昨年末のリバークリーンでゴミ拾いの後に河川敷で綱引きをやったんですよ。ぼくはこう見えて真面目な人間なので、いろいろ企画していく中でつまらないことに目がいくことってあるんですよ。ルール的なもので、こうしないとダメじゃないかとか、こうすべきだとか。リバークリーンでなんで綱引きなんだよ、ゴミ拾いのイベントなんだからって言ったんです。その時に井上さんたちが、でも岩ケ谷くん、お祭りの始まりなんてそんなもんだよ、って言うんですよ。伝統の始まりなんてそんなもんだって。たぶん楽しんだ人が残るって話になって。現に綱引きをしたら、そこには自然にみんなの笑顔があって、面白かったのが、綱引きをやっていた時に通りがかった人が、楽しそうだからぼくも入れてください、って言って参加するという、謎の波及効果を生んだりして。
森山:仲間づくりですよね
岩ヶ谷:楽しいことに素直だとすごく場がひらけていくんだという感覚をすごい持った。意味付け、意義付けは後からいくらでも追いついてくることはあるので、そこに意味や意義が与えられるまでやり続けていくことが大事かなと。ぼくのアタマでは追いついていかないほど楽しいことが生まれている。それを今後また見つけていくっていう楽しさもあるし、そういうふうにとらえればなんでもできるな、なんでもやってみたいなという雰囲気にもなりますね。
森山:ただ考えなきゃいけないのは、ぼくは楽しいって思っているけれど、ほかの人は楽しくないって思うことがある。だから、楽しいやつだけを集めれば楽しいんだ、じゃなくて、いろんな人たちが楽しいと言ってくれるような環境をつくっていくのが課題になっていくのかなって。もちろんぼくはサッカーをやっているんで、サッカーが主になっていくと思うんですけど、いっぱい方法はあって、こうやって岩ヶ谷さんとかいろんな分野の人たちとともにまちをつくっていけたらなって思っています。ホントの楽しさをまちに根付かせていくこと、それを追求することが大事になっていくのかなと。
岩ヶ谷:ぜひぜひ。

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森山:はたから見て、ぼくがJリーグのクラブをつくろうとしていると聞くと、きっと強いチームを理想にしているんだろうなと思われているんだけど、そうでもない。サッカーって元々はボール遊びじゃん。ボール遊びをここでやっていけばいい、楽しむことが大事で、その先になんかプロチームがあるらしいじゃん、みたいなのでもいいと思うし。勝敗なんかコントロールできないからさ。どんだけ楽しむかがやっぱりいいプレーヤーを生む要因でもあるし、いいチームになる。だから、さっきの綱引きのところで急にボール回しが始まって、ボール蹴りが始まって、楽しかったら別にいいじゃんみたいな。
岩ヶ谷:そうするとサッカーチームの在り方みたいなものにいろんな可能性が広がっていくという気もすごくしますし、ワクワクしてくる。

学校で教えてもらえないことを体験できる場所

森山:子どもたちが不安になるのは、できないとか、失敗したらどうしようかとか、みんなと一緒じゃないと安心できないとか、そういう価値観。学校では減点方式の考え方が多いから、なんとなく子どもたちの生き方が窮屈そう。子どもたちの中で上下関係が生まれちゃって、いじめが出てきちゃったりとか。じゃあ学校以外の時間はすげえ楽しいとなって、その中で大人や社会とかかわって、いろんな学びをしていくようになったら教育が変わってくるんじゃないかなって。
岩ヶ谷:十分にこの乙川の活動の場で体験とか人との出会いとかもできるので、学校で教えてもらえないようなことを体験できる場所にもしていきたいなという話にもなったりします。みんなで学んでいく、みんなで考えていく、みんなでつくっていく、っていう環境が大事だなあと思います。
森山:ぼくは、子どもたちが主体性を持った生き方をしていく、問題が起こった時に自分たちで解決していくとか、友達関係をうまくするために親とか先生に言われずに自分で考えてコミュニケーションをとっていくとか、そういうことを学んでほしいなと思う。生きるためのあり方、社会でちゃんと過ごしていけるように人間関係をトレーニングしている。そこに大人の価値観や減点方式で否定をされて育っていっちゃうと、自信がつかない気がするんですよね。
岩ヶ谷:あとエラーを起こさないようにするっていうのがある。でも、エラーを起こさないでなにを学ぶんだって思います。
森山:エラーが経験になるわけですよね。
岩ヶ谷:エラーからこうしないといけないというのを学び取るのであって、人に言われて、これはやっちゃいけないなんてことは、実感として体感として自分の中に入っていかない。
森山:自分が失敗して痛い目に遭わないと勉強にならない。失敗は経験になっていく。その積み重ねですよ。
岩ヶ谷:その時にぼくら大人の役割って、エラーを起こさせないってことじゃなくて、大きいエラーを起こさせないで、エラーが起きているところを見守るっていうことなんだと思うんです。そういう関係性の中で高め合っていけばいいなあと思います。その見守っていく中で僕らも学び取るものがいっぱいあるだろうし。

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森山:ぼくらはサッカーやスポーツを通して人づくりもしていきたいと考えているので、子どものためにはなにがいいのかって一緒に考える仲間をつくっていきたいですよね。人って水と火に集まってくるんですよ。河川敷の活用を考えている岩ケ谷さんたちと同じようなことを、もしかしたら100年前の人たちも考えていたかもしれないし、未来で言えば100年先どころじゃなくて200年、300年先にもつながっていく可能性があるんじゃないかと、話していて思い始めた。
岩ヶ谷:まさかこんな話になるとは思わなかった。たしかに川っていうのは昔から人が集まる場所だったそうなんです。商人が集まって市をおこしたり。一方で常に災害のリスクがあって、大雨で市が流されてしまう。それはいつ起きるかわかんないわけだから、そこでやる必要はないんだけど、やっぱ川の魅力はそれを凌駕していて、災害が治まった時にまた市や芝居小屋がをつくられていったのが江戸の文化であり、日本の文化みたいなことが記されている絵本があるんです。たぶんぼくらも川に取り憑かれているんですね(笑)。河川敷ってむちゃくちゃ非効率なんです。イベント広場としては。
森山:そうなんだ。
岩ヶ谷:年に数回は大雨が降ると水が河川敷まで乗っちゃいますので。今の河川法で、堤防道路の階段から河川敷まではすべて川の中っていう位置付けで、川の中には物を置いちゃいけない。
森山:置きっぱなしではいけないってことだね。

「マキタボーイズ」が示した自然との向き合い方

岩ヶ谷:そんな非効率なイベント広場ってないですよね。常に仮設でやり続けないといけないっていう状況がありながらも、この場所での魅力をつくろうとしている。これはもう、100年前の人たちも同じかもしれない。
森山:われわれはつないでいるのかもしれないね。過去と未来をね。そう思うと、壮大ですよね。
岩ヶ谷:どちらかというと非効率性を追い求めている部分があるんです。殿橋テラスっていうプロジェクトがありまして。殿橋の欄干のところに、仮設デッキをつくって、仮設店舗をつくったんです。欄干をテーブルとしてビールを飲んだり、ハンバーガーを食べたりするんですけど、この欄干の向こう側はさっきの話でいうと川の中なんですね。なので、河川管理者は、なにかあって流されたらどうするんだ、そんなものは絶対に許せないというふうだったんです。でも、協議をしていく中で、増水しそうなタイミングで全部解体すればやってもいいよってことになって、ぼくらは4年間、大雨や台風が来る時は市から連絡をもらって、テラスを全部解体して、天候が回復したらまた造ってということを繰り返していたんですね。
森山:なかなか大変そうな作業だ。

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岩ヶ谷:それをネガティブなこととしてやっていなかったというか、やらなきゃいけないことだったら楽しんだもの勝ちだよねって言って、マキタの電動工具を使って解体していくんで、おれらは「マキタボーイズ」だっ、とある人が言い出して、勝手に名前をつけてやっていたんです。そうしたら国土交通省系のプロジェクトに目をつけてもらって、活動が面白いから、ちょっとプレゼンしに来てくれって、東京に呼ばれたんですね。全国の優秀な水辺活用みたいなのが集まる中、僕らは解体チームで呼ばれて、絶対にかませ犬だ、こんな変わったやつらもいるんだよという枠だろうって言いながらプレゼンしたんです。そうしたら、審査員として参加していた大学の先生がマキタボーイズのやっていることって水辺とか自然に向き合う本質なのではないか、って。
森山:確かにね(笑)
岩ヶ谷:その時に芝居小屋の話を教えてくれたんですね。やっぱり昔はそういう川に向き合う文化というか、流されては作ってという営みがあって文化が形成されていったんだ、それを現代にまさにリバイバルしているのがこの殿橋テラスのマキタボーイズの取り組みなんじゃないかって。初めてぼくらは、楽しみながらやっていた解体活動に意味を与えられたわけですけど。
森山:評価されてんじゃんみたいな。
岩ヶ谷:賞をいただいちゃったんですけど。やっぱりほんとにねえ、非効率なんですよ。効率を考えたらこんなことやるものじゃない。テラスに協力してくれたカフェオーナーの方もよくここでやっていただいたなって、すごく感謝しかないんですけど。非効率は避けるべきだとか、非効率はやらない方がいい、というのはだれかが決めたルールであって、非効率ではあるけれど、おもしろいことができるかどうかはやってみなくちゃ分からない!っていうちょっとバカになってやってみることが大事っていうか。
森山:そうそう、それが一番大事なんなんですよ。バカに勝るものはないからさ。バカにならないと超えられないんですよ。普通のまま、常識のままじゃ。

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岩ヶ谷:乙川の活用は、この場所だからこそできること、その場所の特性を見出して、この場所の魅力をさらに引き上げていくことを念頭に置いてやっていかなければいけないと思います。経済的な効果を生み出す場所にしよう、ここでいっぱいお金を落としてもらおうと考えて、河原をキッチンカーがずらーっと埋め尽くして、あれ?川が見えないよね、となったら、それは別に乙川でなくてもいいんですよ。経済効果は大事だし、そういう日があってもいいけど、毎日そういう日がほしいかっていうと、たぶんそれはこの場所の特性を失っていってしまうなって思ったんですよね。まちの玄関口の近くに、これだけの幅がある河川が確保されている都市構造ってけっこう珍しいと思いますし、川が流れているとそこから夕陽がきれいに見えたりする。来ていただいた方にはぼくは絶対に楽しんでいただける自信はある。
森山:友だちが名古屋から岡崎に来た時、河川敷に来て、お城があって、橋がライトアップされていて、なんか旅行している気分だと言っていたんで、魅力があるんじゃないかなと感じましたね。
岩ヶ谷:きょうの話はおもしろいから、なんかみんなで話す会みたいなのを、川で焚き火でも囲みながらやってもいいかなあと思いました。
森山:ぼくらがやろうとしているのは総合型地域スポーツクラブで、いろんなスポーツが集まって同じ傘の中に入って地域の人たちとつながっていきましょうという感じで、その中にはスポーツもあればカルチャー的なものもあっていいと思っているんで、一緒にできそうなことは多々あると思います。
岩ヶ谷:見えますね、そういう未来が。

乙川の夕陽

岩ヶ谷充(いわがや・みつる) 1985年5月、静岡県焼津市生まれ。2004年から大学進学のために愛知県岡崎市へ。大学では建築学を専攻し、都市計画やまちづくりなどを学び、大学院でもまちづくりを学んだ後に就職。名古屋や東京で建築やまちづくり関連の業務に従事する。2017年からは、岡崎市の中心市街地を舞台に行われるプロジェクト(QURUWAプロジェクト)に参画するために「NPO法人岡崎まち育てセンター・りた」に入り、乙川担当として乙川で行われる様々な活動に関わるようになる。以降、5年間にわたって、乙川河川敷を対象エリアにした水辺空間活用プロジェクト(おとがワ!ンダーランド)の企画・運営を仲間たちとともに行う。現在は、それらの活動から派生して生まれた任意グループ「ONE RIVER」の事務局長兼プロジェクトマネージャー。高校まで部活動はサッカー。愛犬の名はおもち。

森山泰行(もりやま・やすゆき) サッカー元日本代表FW。1969年5月、岐阜市生まれ。東京・帝京高、順天堂大を経て1992年に名古屋グランパスエイトに入団。ベンゲル監督時代に途中出場で高い得点率を誇り「スーパーサブ」として活躍。J1ではリーグ戦通算215試合出場で66得点。1998年にはスロベニアの強豪ヒット・ゴリツァでもプレー。2005年には東海社会人リーグ2部だったFC岐阜に加わり、2008年にJリーグ昇格。2014年から5年間は埼玉・浦和学院高校監督でユース年代を指導。2019年からJFLのFCマルヤス岡崎に所属。愛称ゴリ。

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