英グラム・ロックの雄T・レックス……自分的ベスト曲5選
’70年代のイギリスで全盛だったグラム・ロック。エキセントリックな音とキラキラなビジュアルを特徴とするこのカテゴリーでは、初期のデヴィッド・ボウイが有名ですよね。一時はボウイとともに双璧とも言われた看板バンドが、T・レックスです。
ボウイが亡くなった時、真っ先に思ったのが、「天国でマーク・ボラン(T・レックスのリード・メンバーで、後にソロ)と再会を喜んでるかな」
当時の音楽誌は、ライバルだった二人を「犬猿の仲」と、あることないことゴシップに……。でも、ボラン(ボーカル/ソング・ライター。29歳で夭折)のインタビュー記事をマニアックに追いかけていた私は、気づいていました。二人は別に、仲悪くなんかなかったって……。
例えば、今のAKB48商法(握手券、投票券)のハシリともいえる、アルバム付録の非売レコード応募券。――そんなのも必死に応募して、ボランのレアなインタビュー音源なども入手してました。
ということで、知る人ぞ知るT・レックス。今日は私が特に好きな曲ランキングを決めてみようと思います。
5位 Jeepstar
出す曲出す曲、全てが全英No.1だった頃、なぜか唯一1位にならなかったのがこの曲。アコギをエレキに持ち替えて、グラムロック路線に変身した時期のシングルです。
彼らにしては露骨な歌詞が、フラワー・チルドレン路線の頃からのファンにウケなかったんでしょうか。私は夜な夜な、ベッドの中に持ち込んだラジオから流れるこの曲を聴いて、悶絶してましたけど……。
4位 ベルテーン・ウォーク
T・レックスの特徴は、ごく普通に聴こえる割にかなりひねったコード進行。作曲家の卵だった私は、コロリとやられました。
特にこの曲は、よくある能天気なブギーのようでいて、実は音楽史上の大発明では……?!アコースティック時代後期の作品。
もちろん影響受けまくって(マネしまくって)おります。
3位 ビーナスの美少年
円熟期、9枚目のアルバム”ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー”から、A面一曲目。アルバム用の音作りでは別世界を見せてくれるのが、T・レックスです。
それと、浮世離れした歌詞も独特。シュール・レアリズムっぽく、微糖。例えば、No1.ヒット・シングル「テレグラム・サム」(電報屋のサム)など。当代ときめく人気スターが恋愛と関係ない内容を歌っちゃうところが、破格では?
こちら「ビーナスの美少年」にも、”サイケデリック・メールマン”という歌詞が……。
このアルバムからのメンバー・チェンジで、ボランの黒人ガールフレンド グロリア・ジョーンズがバック・コーラスに加わっています。後に彼の不慮の最期の原因ともなる女性――大胆なサウンド変革は、なかなか真似できないレベル。
2位 Tenement Lady
こちらも8枚目アルバム”タンクス”のA面一曲目。J−ポップでは殆ど聴かない、前半後半ドッキング2部構成の曲。音楽的な幅を見せています。
同時に、元祖ミニマルともいえる単純なメロディーラインは、ボランの十八番。
アルバム”ズィンク・アロイ〜”ともども、"タンクス"も発売当初は不評だったそう。ですが2枚とも、アンビエントやラップなど、’80年代以降の音楽ジャンルの萌芽を感じさせる、近未来的な仕上がりです。
1位 Baby Strange
「なんでこの曲?!」と、T・レックスを多少でも知ってる方は呆れるでしょうね。キャッチーな曲やメロディックな曲、他にいくらでもあるのに……。自分でもそう思います。そう、その不条理さが、いいんです。
それと、ミッキー・フィン(美貌のメンバー)のパーカッションは、文句なく最高でしょう? 「ヘタ」と評判だったボランのエモなギターはもちろん、ひきずり気味のドラムもいいです。2拍目4拍目に入るシンバルが、ツボ!
冒頭写真の黄金期アルバム”ザ・スライダー"収録曲。絶妙な転調の連続が、聴衆をT・レクスタシー(流行語となったT・レックスと恍惚の合成語)へと誘います。(音の聴こえづらさはご容赦!エンディングのブリティッシュな警備員さんも、いい味出してます)
気分が荒んだ時、大音量でかけて浸れる曲って、ありますか? 私にとっては、この曲がそれ。「あなたはおかしい(strange)!私を破滅させないで!」と大声で歌いまくれば、今日もスッキリ。
音楽の力は偉大です!
番外編 Raw Ramp
イギリスのバンドらしく、クラシック・テイストのストリングスを豊富に取り入れたアレンジも、T・レックスの魅力。
こちらニューヨークの五重奏団T.Rextasyは、T・レックスのカバー・バンド……ではないようです。でもこの曲は、歴としたT・レックス初期名曲のカバー(そして、そっくりさんボーカル)。
もちろん原曲も、優雅なストリングスで始まるドッキング構成です。さすがT・レックス。フレキシビリティが違いますね!
黒歴史になるか、真実の告白
ところで……。
実は私、隠れファンなんです。デヴィッド・ボウイの初期をリアルタイムで知る年代の私は、当時シロガネーゼ。港区の私立JKは、イエスとかシカゴを好きと言っておかないと、まともな音楽ファンとは思われませんでした。
間違っても、T・レックス推しだなんて言えなくて……。
そのカッコつけ癖は、未だに残っています。プロフィールの「☆好きなアーティスト」コーナーにも、Tの文字は出たことがありません……。
というわけで、真実のご視聴ありがとうございました。