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シャドウワークと呼ばれた家事は今……

SNS映えで人気のライフスタイル投稿に、お料理やハウスクリーニングがありますね。洗練されたインテリアのお部屋を、オシャレなインフルエンサーがブランド箒で掃く様は、まるで映画のワンシーンのよう。

見れば「私もお掃除しようかな」という気にさせられます。

私はお料理よりも、お掃除のほうが好きです。前回述べたように、好みでないメニューばかり作ったせいかも……。

妹が好きな肉料理もですが、結婚後も夫と娘とは味の好みが合わず。その上、私には「自分」がなくて、他人が「キライ」と言う食べ物は自分も嫌いになってしまうのです。(自己肯定感が低い人、あるある?)

例えば、若い頃にピアノを教えていた時。生徒の高校生Aちゃんは、細身で甘いものや脂っこいものが苦手でした。レッスンではお菓子を出すことにしていた私は、「Aちゃん、ナッツなら大丈夫かな」と思ったのですが「きら〜い」と言われてしまい……。

それまでナッツが好物で、いつも数種を別々にグラム売りで買うほどだったのに、なんと一切食べられなくなってしまったんです。(今ではクルミなど種類限定で食べられるものもあり)

何が言いたいのかというと、人間は想像以上に言葉に影響され易いということ。

誰にも多少は必要な家事についても、そうです。’80年代にアメリカでベストセラーになった本に、”シャドウワーク”というのがありました (米オリジナル出版は1981年。オーストリアの哲学者・社会評論家のイリッチ著)。

無報酬の家事労働を指す同書の「シャドウワーク」という言葉は、日本でも今でいう「流行語大賞」並みに話題に。

当時から言葉のイメージが人を操作することを思い知っていた私は、「わざわざマイナスイメージの言葉を売るなんて」と気をもんだものです。

家事をするみんなが毎回「シャドウワークか」と暗い気持ちになりそうで……。

幸い、昨今では家事が得意な男性も増えて、カッコいいイメージに。また「シャドウワーク」という言葉は、2011年ごろからアメリカでは別の文脈で使われるようになったことでもあり、ホッとしています。

別の文脈とは、企業が消費者に無償協力を強いるシステムのこと。空港のセルフ・チェックインとか、IKEAの組み立て式家具などがこれに当たります。

ニューヨークタイムズの記事では、法律事務所パートナー(協同経営者)女性がスーパーのセルフレジを利用する姿を目撃したコラムニストが、違和感を感じたことが記されていました↓。

高収入(年収3000万円越え)の彼女をタダで使うこれからの社会は果たしてアリか?みたいな論旨です。それを言うなら、彼女はタダで家事・育児をしているかもしれない件にも繋がりそうに思いました。

なぜなら私自身が、この弁護士女性のセルフレジのような違和感を自分の中に感じたことがあるから。夫から一銭ももらえない専業主婦が、ある日突然、テレビでも度々取り上げられるラスベガスのショーの制作スタッフとして、きらびやかな居場所を得たのですから……。

人の価値なんて、置かれる場所でコロッと変わるもの。弁護士事務所のパートナーとして出世しやすいのは、統計によれば発音しやすい名前の人だそう。やっぱり発せられる言葉がものを言うのです(心理学を極めたマーケティング学博士による↓。そこそこ聴きやすい英語)。

彼によれば実験の結果、西洋と東洋では状況についての認識が反対だとか。東洋では、同じ状況は長く続かないと考えるそうです。(冒頭あたり)

確かに。平家物語の冒頭も「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」と始まります。「人の世は移ろうもの」が日本人の価値観かも。

SNS発信だけを比べれば、日米インフルエンサーのライフスタイル動画の内容はほぼ一緒です。子持ち否定派の女性の投稿も、日米似たり寄ったり。中には、「翻訳してそっくり真似たのでは?」と疑うほど、両国で酷似した内容のものも。(自分の稼ぎや時間を好きなことに使いたい系の発言群で)

日本の民間レベルの意識は、一見グローバルになってはいるのですが……。

ニューヨークに住んでいるから言うわけではないですが、眞子さまご結婚に関する一連の騒ぎには閉口しました。日本人特有の”出る杭は打たれる”様がモロに見えて……。

女性の場合、イケメンの夫を得たお姫さまを妬む感情丸出しです。「女の敵は女」って本当だなと、ひたすら感心。

ナッツが食べられなくなったから言います。人は言葉に縛られます。

「眞子さまが好きな相手と結婚するのはけしからん」と言う人は、「人は好きな人と結婚するわけにはいかない」という呪縛を自分にかけています。

そのマインドだと、ベストな相手と結ばれ損なう確率は高そう。

既婚の人の場合は、「自分は好きな相手と結婚できなかった」という呪縛。

確かに、理想の相手ではないかもしれないけど。(私の夫もチビデブハゲだけど。) 離婚のつもりが当面ないなら、わざわざ「好きでない相手」とレッテルを貼らなくてもいいのでは……。

だって、明日にはちょっと小粋なコーデで見違えて、珍しく嬉しいことを言ってくれるかもしれない相手なんですから。シャドウワークと同じで、ものは言いよう。

世の中便利になってきているとはいえ、家事が面倒な無賃労働でなくなったわけではないでしょう。けれどスッキリしたお部屋で颯爽とやれば、オシャレなライフスタイルに。SNS投稿すれば、人気次第でお金だって儲かるかもしれません。

シャドウワークと呼ばれた家事は、今やキラキラワーク!?