馬場このみのソロ3曲(「dear…」、「水中キャンディ」、「To…」)から考察する、彼女の「願い」について
(2023/09/09 ミリアニ2幕を見て、全体的に読みやすくなるように細かいところを修正。)
伝えたいこと
馬場このみの歌い上げるソロ3曲は、いずれも歌中の女性の内面を描いた、アイドルソングです。
彼女の歌唱力も相まって、たびたび「名曲しか歌わせてもらえない女」と言及されるシーンを目にされた方も多いと思います。
この文章は、そんな表向きのアイドル・馬場このみの姿だけでなく、ソロ曲がもつ2面性(※)を通じて、彼女個人の存在についてもっと知ってほしいと思い、書き出したものです。
はじめに
それぞれの楽曲に綴られた歌詞を読んで、そこから「馬場このみ」の在り方にスポットライトを当てたとき。
ある時は、大人の女性の苦悩、いじらしさを感じさせる恋の歌を。またある時は、童話をモチーフに、夢に挑む決意の歌を歌唱する。彼女のどのような内面が浮かび上がってくるのか?
結論から言うと、「dear…」、「水中キャンディ」、「To…」の各楽曲を通して「ステージに恋をした、大人のアイドル。馬場このみの内面を描いた歌」という一面が見えてくると考察します。
そんな一面を知ってもらうためのきっかけとして、歌詞に共通する「叶う」というキーワードをピックアップしました。「叶う、叶える」という言葉の先には、誰しも叶えたい「願い」が存在します。
本稿のタイトルでもある、
彼女の願いとは何なのか?
願いを知ることで見えてくる、馬場このみの姿とは?
彼女がアイドルとしての自分に与えられた、楽曲に込める想いとは?
ひとつひとつ、紐解いていきます。
あらすじ
本文に入る前に、あらすじとして、各楽曲のキーワードにあたる歌詞を拾い上げながら、
について、簡単に整理しました。
■ dear...
恋人とのすれ違いを歌ったラブソングであり、歌中の女性の、ありのままの気持ちを恋人にぶつけられないじれったさ、焦燥感が描写されています。
楽曲の進行に併せるように、打ち明けられずにいる想いが最高潮に達する最中。
夢でも構わないから、恋人と以前のような関係に戻りたいという願いを歌詞から読み取ることができます。
アイドルとしてデビューしたばかりの彼女。そんな彼女の、きらめく舞台への衝動、輝きへ至りたいという願いが込められた歌です。
周囲のアイドルと比べて、ほんの少しだけ「大人」である彼女の葛藤。
その葛藤から連鎖する焦燥感にさいなまれながらも、ステージのきらめきを知り、自らも輝きたいという願いを抱くさまが描写されています。
■ 水中キャンディ
人魚姫の物語をモチーフに、夢に挑む決意を描いた歌です。
歌中の女性が、童話のストーリーになぞらえて、自らの夢、困難な願いを叶えるために、一歩を踏み出す姿を描いています。
アイドル・馬場このみとしてデビューした彼女が、トップアイドルを目指すという願いへ踏み出すことを覚悟した、決意の歌です。
大人であるが故に、先に進むことを躊躇ってしまった彼女。
アイドルとしての自分を迎えてくれるファンの想い、自らの願いを再確認し、ステージに立つまでの描写を追っていきます。
■ To...
大人の女性のいじらしさ、自らの想いを素直に吐露できない苦しさを歌ったラブソングです。
ありのままの自分を見て、この恋に気づいて欲しいという、胸中の願い。泣き出してしまいそうなそんな想いが、楽曲で流れていく、夜明け前から明け方にかけての車中の時間と共に描写されています。
素顔のままの馬場このみを見てほしい、アイドルのステージに抱いた感情、恋にも似たその想いに気づいてほしいという願いが込められた歌です。
「アイドルとしてより輝くために、わがままに振る舞う」。そんな自分を見てもらうために、彼女にとって必要な事とは?
馬場このみ個人の在り方、そしてアイドルソングとしての「To...」から、楽曲に込められた想い、彼女が表現するステージについて考察していきます。
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各楽曲から読み解く、彼女の「願い」について
以下では、GREE版ミリオンライブ!から、今現在のミリシタに至るまでの、彼女の歩みを踏まえながら、アイドルとしての成長、それに伴って変化していく「願い」について、考察していきます。
また、各楽曲を考察するにあたり、ミリシタ内での時系列に対応する、各コミュのワンシーン、あらすじをピックアップしています。
■ dear...
「dear...」の項目では、メモリアルコミュ①~⑤そして、メインコミュ17話「お姉さんに必要なコト!」(※)に触れていきます。
アイドルとしてデビューしたばかりの彼女。新人である一方で、最もデビューが遅い彼女の焦りと、その裏腹にあるアイドルのステージへの想い。
馬場このみの境遇と、憧れから生まれる葛藤が、歌詞とリンクしていることに触れていきます。
彼女の焦燥、葛藤とは
メインコミュ17話で、初めてのソロ曲を披露するために挑むセンターのステージ。
彼女がデビューしたシアターのステージから見た景色、今度は自らがその正面に立ってファンを迎えるという重圧。
39プロジェクトの中では、少しだけ「大人」であり、周囲が良く見えてしまう。そんな彼女の不安な気持ちが、顔を覗かせるところが描写されています。
アイドルとしてのデビューが遅いという事実、自身に与えられた時間の少なさを誰よりも理解している。そんな彼女の胸中は、メモリアルコミュ5の営業活動という形でも描写されています。
新人アイドルとして、華やかな面ばかりでない仕事をこなしつつ、先行きの見えない日々を送る。それは、大人の彼女にとっても苦しいものだったと思います。
そんな彼女を支えたのは、プロデューサーから伝えられた、ステージで輝くアイドル・馬場このみの姿。
そして、自分のために用意された初めての楽曲。
「dear…」と向き合うことで、より鮮明になっていった想い、アイドルとして自らも輝きたいという憧れ、願いなのだと思います。
メモリアルコミュ3でデビューしたばかりの彼女が経験した、初めてのステージから見えるサイリウムの海。その光景は彼女にとって、恋のようなきらめきと、ときめきを覚えるものだったに違いありません。
彼女の「願い」とは
歌中の女性が抱いている、気持ちのすれ違いから生まれる葛藤。恋人に想いを素直にぶつけれられないじれったさ、焦燥感。
馬場このみがステージに向かう自身に抱いている葛藤。自らのタイムリミットを意識せざるを得ない焦り。アイドルとして輝きたいという願いとは裏腹に、パフォーマンスとして、楽曲に宿る想いを表現できない未熟さ、もどかしさ。
焦がれれば焦がれるほど苦しい。そんな彼女の胸中が、歌中の女性が抱いた気持ちと混ざり合うことで、より鮮明に表現されています。
「夢でもいい、叶えてよ」という祈りにも似た願い。そんなふたりの「願い」が重なるステージは、定期公演の成功という形でファンに届いていることが描写されています。
誰よりも、まだ彼女自身がはっきりとイメージができない、アイドル・馬場このみの姿。
けれど、ステージで彼女を迎えるファンが作り出してくれる光景。その光景は、誰よりも愛おしく想っているから。
まるで「恋」のようなその感情を、自らの輝きでファンに伝えたい、共有したい。そんな想いが聞こえてくるように思います。
■ 水中キャンディ
「水中キャンディ」の項目では、メインコミュ72話「大人だから、こそ」(※)に加えて、GREE版アイドルマスターミリオンライブ!の「ミックスナッツ」のストーリーに触れていきます。
2曲目のソロである「水中キャンディ」。
楽曲では、人魚姫の物語になぞらえて、歌中の女性が抱いた憧れに想いを募らせるさま。楽曲で流れる時間とともに、夢へ向かって歩き出す姿を綴っています。
「dear...」のステージで、彼女の胸中に生まれた、アイドルとして輝きたいという願い。
彼女の願いが、アイドルとして経験を積んでいく最中で、もっと輝きたい、トップアイドルという高みを目指したいという想いに変化していく。その様子は、まるで水中キャンディの歌詞とリンクするようです。
しかし、あらすじで語られるように、彼女はステージに立つことを躊躇してしまいます。
その理由は、彼女が大人であること。とりわけ、「大人としての考え方」が根底にあると考察します。
「大人だから、こそ」
彼女の「大人としての考え方」に触れるために、GREE版アイドルマスターミリオンライブ!の「ミックスナッツ」のストーリーを紐解いていきます。
「リーダーとして、ユニットのコンセプトを纏める役をプロデューサーから買って出た彼女が、紆余曲折のうえ、ライブを無事成功に導く」。このあらすじは、ミリシタ内でのコミュと概ね変わっていません。
ですが、GREE版のストーリーからは、ミリシタでは幾分かこぼれ落ちってしまった、彼女の大人としての責任感、最年長としての矜持を感じ取れるものになっています。
ユニットのコンセプトが定まらず、ミックスナッツとしてのパフォーマンスどころか、ライブ全体の進行に影響が出てしまう。そんな追い詰められた状況で、彼女は「自らは練習を休んで、コンセプトを纏め上げることに注力する」という選択肢を取ります。
この描写からは、彼女が自らが「アイドル」であることを差し置いて、ひとりの「大人」として考え、振る舞おうとしていることが伺えます。
「大人だから、こそ」。問題に直面したときに、ひとりで解決するのが当たり前。
大人としての責任感があり、自分の実力、現実を理解している。そんな彼女が、歌中の女性の姿、叶えられるかも定かでない夢に向かう決意と対峙したとき、浮び上がる問題。
「水中キャンディ」を歌う、自らに、アイドルとして高みを、トップアイドルを目指す覚悟があるのか?
そう自問自答したときに、立ち止まってしまったという背景が感じ取れます。
彼女の「願い」とは
「トップアイドルを目指す」という願い、その願いに向かって再び歩き出すための鍵。
それは、シアターのステージで見た、自分のためだけの景色。アイドル・馬場このみを迎えてくれるファンが作り出す、サイリウムの海の記憶です。
アイドルとして経験を積むことで、彼女の中でより明確になったイメージ。
海中を想起させる「水中キャンディ」のステージ、その客席に浮かぶ薄桃色のサイリウムから思い描いた光景。
それはまるで珊瑚礁の海にも似た、幻想的な景色を想像させるもので、そのステージで輝く自分自身を見てみたい、夢を諦めたくないという想いを再起させるきっかけとなったに違いありません。
叶わぬ恋を実現するために、声という犠牲を払い、陸を目指した人魚姫。
自らの夢、実現可能かも定かでない願いを叶えるために、一歩を踏み出した歌中の女性。
輝く景色を見るために、ステージに立ち、高みを目指すことを決めたアイドル・馬場このみ。
彼女が表現する、それぞれの想いを楽曲に重ねて困難な夢に向かって踏み出す決意を歌うパフォーマンス。それは、自ずとファンにも伝わっていることが描写されています。
2度目の定期公演を経て、彼女の内に秘める願いが、より明確な決意へと変化した瞬間と言えるでしょう。
■ To…
アイドル・馬場このみが「To…」の楽曲で表現するステージ。それは、2度のセンターステージを経て彼女自身が成長したからこそ、形にできるものであると考えます。
メモリアルコミュの描写から考察できる、馬場このみの在り方。「To…」に託された、アイドル・馬場このみの「願い」について触れていきます。
アイドルとしてもっと輝くために
メインコミュ17話で、彼女がステージの光景に抱いた恋にも似た感情。
そして、メインコミュ72話で、その光景に支えられた彼女が決意した「トップアイドルを目指す」という願い。
彼女がアイドルとしてもっと輝くために必要なこと。それは、そんな彼女の胸中をステージでアイドル・馬場このみを迎えてくれるファンに伝えること。共有し、共感されること。
つまり、双方向のコミュニケーションをもって、初めて意味を持つものです。
そのために、アイドル・馬場このみにとって求められるエッセンスとは何か?そのヒントがメモリアルコミュ5で描写されています。
「アイドルとしてより輝くため、聴衆を惹きつけるために、ワガママになること」
プロデューサーが営業活動を通じて、彼女に語った、ステージに立つアイドルとしての在り方。
けれども、その立ち振る舞いは、馬場このみのバックボーンと真正面から衝突するものです。彼女の「妹」の存在を通じて、馬場このみの人となりを考察していきます。
彼女の在り方とは
メインコミュ72話「大人だから、こそ」でフィーチャーされる、彼女の「妹」。
話中では、二人で買い物に出かけているところ、その際に妹の進路相談を受けている描写から、妹との仲の良さ。
ひいては、彼女の「姉」らしい振る舞いが伺えるものになっています。
そんな彼女の性格は、メモリアルコミュ、オファー、個別のコミュでシアターのメンバーの相談役になるなど、様々な形で描写されています。
彼女の「しっかりものの長女である」という性格。
ここからは、つい自らを後回しにしていまい、周囲の人間に頼ること、自らの気持ちに素直になる経験が少なかった。そういったパーソナリティが読み取れます。
「誰にも遠慮せずにワガママに立ち振る舞う」ステージ上のアイドルとは、真逆のものであろう彼女の性格。
そんな彼女が、「To…」の楽曲と向き合ったとき、歌中の女性の「願い」を受け止めたとき、どんな想いでステージに向かうのか。
アイドル・馬場このみが、楽曲に託す「願い」とは。最後に考察していきます。
彼女の「願い」とは
歌中の女性の願い。口には出せないけれど、自らの想いに気づいて欲しい、素顔のままの自分と向き合って、弱さを知って欲しいといういじらしさ。
彼女が、今にも溢れ出してしまいそうな感情、声に出せない願いを表現しようとしたとき。どこか自らの境遇と重ね合わせてしまうのではないでしょうか。
定期公演のステージで、アイドル・馬場このみを迎えてくれるファンが作り出してくれる光景。託された想いは、その光景に恋をしている彼女が一番良く分かっているから。
自らに与えられた時間、スポットライトを浴びるその一瞬。その瞬間だけは、しっかりものの長女としての自分を脱ぎ捨てて、ステージで我儘に振る舞う姿をただ見ていて欲しい。
歌中の女性の想いにそっと重ねるように、静かな願いが伝わってくるステージなのではないでしょうか。
今日までのステージで、彼女が抱いた想い、アイドルとしての成長を通じて変化していった願い。それらを確かな軌跡と決意を胸に、ファンに向けて届ける。
そんなアイドル・馬場このみの姿は、きっと目が離せないものに違いありません。
「大人だから、こそ」
「大人だから、こそ」。素直に面と向かっては言えないような想いを、歌にのせて紡ぎあげる。
シアターの最年長であるそんな彼女の在り方は、とてもセクシーでアダルティだと、そう思います。
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おわりに
事務員の面接として訪れた彼女を、プロデューサーが思わずスカウトせずにはいられなかった才能(ギャップ)。アイドル・馬場このみとしての最大の「武器」。
ときに、彼女の抱えるコンプレックスこそが、アイドルとして、注目を集めるフックになったことは間違い有りません。
けれど、周知を集めた、その後。ファンの心を掴んで、離さなかったのは、ひとえに彼女がアイドルとして積み上げてきた努力。
劣等感を物ともせず、内面だけに留まることのない、"大人の"女性のとしての魅力、輝きがもたらしたものです。
彼女の担当として「アイドル・馬場このみ」が魅せる、そんな側面に目を向けて貰えたなら、幸いです。
最後に。
いつか歌われるであろう、「To…」までに紡ぎあげた今の先へ繋がっていく、アイドル・馬場このみの次のソロ曲。
次の楽曲が彼女にもたらしてくれるであろう、新しい一面。そして、彼女が次に目指す先の物語はどこに向かうのか、それが本当に楽しみでなりません。
おまけ:EVERYDAY STARS!!
アイドル・馬場このみの直近の露出にあたる、EVERYDAY STARS!!のソロパート。
歌い分けのセリフからは、シアターに足を運んでくれるファンとの双方向のコミュニケーションの様子が伺えます。お互いの認知があるからこその、彼女の余裕、優しげな微笑みが浮かんでくるようです。
これからシアターの外に飛び出していくであろう彼女の行く末もまた、見逃せないものに違いありません。
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