新しい社会貢献と健康増進「プロギング」をご存じですか
毎朝、散歩していますが、その中でジョギングしながらゴミを拾う人が散見されるようになりました。「プロギング」とは、スウェーデン語の「拾う(PlockaUpp)」と英語の「走る・ジョギング(jogging)」を掛け合わせた、スウェーデン発祥のジョギングしながらゴミを拾うスポーツです。2016年、ストックホルム出身のアスリート、エリック・アルストロム氏が始めたことがきっかけで広まりました。今や、世界100か国以上で楽しまれています。
プロギングをするメリットとしては、高いフィットネス効果やストレスの解消、コミュニケーションの促進、環境問題に貢献できることなどが挙げられます。ジョギングとゴミ拾いの動作は、筋肉や体幹を鍛えます。プロギングの消費カロリーは、単なるジョギングと比較した場合、1.2倍にも増すと言われています。運動しやすい服装、タオルや水を用意し、トングではなく軍手で、しっかり腰を落としてゴミを拾います。できるだけ足を止めないことで、より効果的なエクササイズにつながります。
ジョギングをすることで、快感や幸福感をもたらす脳内麻薬「エンドルフィン」が分泌されると、リラックス効果が表れます。「プロギング」に参加した仲間や地域の人と交流する機会が増え、SNSでゴミ収集の成果をシェアすることで、世界中のプロガー(プロギングしている人)とつながることができます。
プロギングでゴミを集めることは、海洋プラスチックのような環境問題にもダイレクトに貢献できます。町や海をきれいにすることで、住民の意識や行動にもいい影響や変化を与えることができます。運動をしながら環境美化に貢献することができるプロギングは、スポーツ庁を中心にSDGsスポーツとして広まりを見せています。
プロギングは、フィットネスや健康促進に効果的なのはもちろん、ビーチやトレイルコースをゴミ拾いしながら走ることで、社会課題に対して誰もが気軽に貢献できるのがポイントです。プロギングが広まった背景には、生態系にも人間にも重大な悪影響を及ぼす「ごみ問題」があります。海洋プラスチック問題やごみ問題は、大量のペットボトルやプラスチックレジ袋を生産している日本にとって責任重大であり、これらの問題解決は地球環境の持続性にとって喫緊の課題です。
プロギングは、楽しくゴミ拾いをして走ることが目的で、基本的にはゴミの重量を競うことはありません。ただし、チームの成果を称賛しあったり、互いのモチベーションをアップさせるための仕掛けとして定期的なイベントが名古屋などで行われています。
科学技術の力で環境問題の克服を目指すことを事業目的に掲げるソーシャルベンチャー「株式会社ピリカ」が運営する、ゴミ拾いSNS「ピリカ」は、これまでに世界中に2億個以上のごみを回収した世界最大級のごみ拾いアプリで、現在、800以上の企業・団体に使われています。拾ったごみの量を記録し共有すると、大勢のユーザーから「ありがとう」が届きます。仲間が増えるだけでなく、社会貢献している実感が持てる仕組みがユニークです。
ジョギング以上のシェイプアップ効果に加え、きれいになった海岸や町を見ることで、満足感や心身のストレス解消も得られます。金銭的コストもかからず、いつでも、どこでも、誰とでもできるポイ捨てゴミを拾うアクションを通じて、参加者同士の出会いやつながりが生まれるのもプロギングの特徴です。個人がプロギングを楽しみながら環境美化や問題解決に貢献するもよし、働く場所でコミュニケーションを図る目的で取り入れれば、SDGsの認知やチームの結束を高める絶好の機会にもなると思います。