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賃金と物価の好循環のためには生産性向上が絶対条件

 企業価値を本質的に見極めるのは自己資本の成長を見ることです。事業基盤が強いかどうかは自己資本の成長が本質的な価値を表しています。短期目線では期待と誤算が生じる可能性が高く、中長期目線で見る必要があります。
 春闘の賃上げが過去最高となり還付もあり個人消費に好影響と期待されていますが、実際のところはどうなのでしょうか。賃上げが持続的に見込めない限り貯蓄に回ってしまいます。政府の短期政策では期待が見込めないと思います。
 同様に企業の本質的な価値を予測するには中期経営計画を見ることです。企業が中期的に目指すあるべき姿と現状とのギャップを埋めるための計画を中期経営計画といいます。中期経営計画は5-10年を念頭に設定された経営ビジョンを実現するために中期(3-5年)でやっておくべきことを明確にしたものです。
 賃金の持続的な上昇には生産性の向上が絶対条件になります。生産性の向上は企業の責任です。企業が生産性の向上を行うために海外のITプラットフォームを購入するのでデジタル赤字がメディアで騒がれています。これが円安進行の原因だと言われています。日本企業は株価純資産倍率(PBR)が1を切っているのが大半ということは市場から日本企業は解散したほうがましと評価されていることを意味するのです。日本の賃金上昇は嘘だろうと市場から判断されているから円安が進行するのです。
 日本経済が上向くカギは企業が生産性を向上させるかどうかにかかっています。中期経営計画には企業のビジョンや戦略が明確に示されており社員と企業の目的や方向性について容易に共有できます。自らのタスクの意味や重要性の理解により社員のモチベーションが向上し業務に対する意欲や取り組み姿勢が高まる効果が期待できますが従業員にとっては賃金が上昇するという見込みが最も大切です。
 実質賃金がマイナス状況では先行き楽観はできません。物価上昇は確実ですが、問題は持続的な賃金上昇です。生産性向上のために海外ITツールを日本企業は購入していますが、これを確実に新規事業の創出や労働生産性の向上に結び付けていかなければなりません。生産性向上とは一言でいうと「企業が効率よく利益をあげられるようにすること」です。少ない労働力で多くの利益や商品を生み出すことができるようになれば生産力が上がったということです。限られた人でより多くの利益を生み出して企業を成長させるには生産性向上が欠かせない課題です。
 欧米のビジネスモデルを輸入し続けてもうまくゆかなければ自らが考えて自らにあったビジネスモデルを創出しなければなりません。稼ぐ力が欧米企業のほうが遥かに上で、日本はもはや先進国ではないと言われています。欧米から無条件になんでも受け入れるのではなく日本は歴史と文化、思考形式は欧米と違いますので自らにあったビジネスモデルとは何かを考えながら日本企業は稼ぐ力をあげていかなければなりません。
 中長期的課題は巨額なデジタル赤字をいかに貿易黒字につなげるか。それが日本国の価値の本質的な問いです。資源を海外からの輸入に頼る宿命にある日本は付加価値をつけた商品・サービスを海外に輸出することで成り立ちます。自己資本利益率(ROE)が欧米企業と比べて劣っているという事実は日本企業の経営陣は無能と等しいと自覚することです。

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