季節がひとつ進むたびに人は成長する
ドラマ「プロデューサー」を完走。
季節は春。大手放送局のバラエティー局にプロデューサー(PD)として入社した、新入社員スンチャンの新しい人生のスタートと共に物語が始まる。
キム・スヒョン演じるスンチャンは、高学歴だがウブで気が利かない不器用な新人。そんな彼と深く関わることになるのが、スンチャンの先輩PDジュンモ(チャ・テヒョン)とイェジン(コン・ヒョジン)。ちなみにこの二人は幼馴染という設定。そこにトップスターのシンディ(IU)が絡み、それぞれの想いが交錯しつつ、共に成長していくというお話。
「愛の不時着」の脚本家パク・ジウンの作品ということでトライしたこのドラマ。韓国のテレビ局の様子がリアルに描かれいるところがとても興味深い。また「猟奇的な彼女」以来お気に入りのチャ・テヒョンを堪能できて満足度高↑。
それにしても、チャ・テヒョンを観てるとほのぼのと幸せな気分になるのはなぜだろう?
「いつも側にいてくれそう」とか、「わがままを聞いてくれそう」とか、とにかく優しさが滲み出てるというか。彼が醸し出す「イイ人安心感」は最強レベルなのだ。
そして、もう一人の主演男子、キム・スヒョンはいつものイイ男を封印しダサめの男子を好演。
個人的にはこの役柄のキム・スヒョンがお気に入り。
誠実で純粋だけど、おどおどしていてカッコ悪い。でもそこが魅力のスンチョン。今は未熟でも「将来良い男になる要素満載な新人」という潜在能力に惹かれるのかも。
主演女子はイェジン役のベテラン女優コン・ヒョジン。
このドラマではイライラするほどの鈍感な女を演じているが、一方で痛いアラサー女子っぷりがとてもリアルで好感が持てた。
「椿の花咲く頃」のドンベク役では「男に守られる女」感が強くあまり入り込めなかったが、このドラマでは彼女の魅力全開(と個人的には思う)。
最後の主要登場人物、人気歌手シンディ役のIUはこのドラマで初見だったけど、本業は歌手。でも演技が上手い。そして肌の白さと美しさに惚れ惚れ。
俳優陣はもちろんだが、ドラマ「プロデューサー」は、脚本(数々の名言含)も素晴らしく、また、インタビュー形式で登場人物の気持ちを表現して行く手法も面白い。心温まる、そして前向きな気分になれるとても良質な成長ドラマだった。
さて、このドラマには唸るような名言が数多登場する。
その中で心に残ったのが、第14話で、ロバート・フロストの詩 “The Road Not Taken”(選ばれざる道)がスンチャンのナレーションで引用される場面だ。
ドラマでは全文ではなく以下のように要約されている。
森の中で道が二つに分かれていた
両方の道に進むことができないことを残念に思いながら
長い間立ったまま
一つの道が途中で折れる、先の方までずっと眺めていた
同じくらい美しいもう一つの道を選んだ
草が生い茂り、人の足跡が少なくて
もっとたくさん歩く必要があると思ったから
遠い未来に、私はため息をつきながらこう話すでしょう
昔、森に分かれ道があり
人が選ばない方をえらんだと
そしてそのせいで 全てが変わったと
この詩は、スンチャンが自分を可愛い後輩としてしてしか見てくれないイェジンに、自分の気持ちを伝えた夜、詩の内容に想いを馳せるという形で引用される。
それにしても、「The Road Not Taken(選ばれざる道)」の内容はとても深い。
道(人生)はひとつしか選べないことの意味を我々に問いかける。
その選択が正しかったのか、あるいは別の道(人生)の方が幸せだったのか、それは誰にもわからない。また、人が選んでいない道を選ぶことが意義のあることなのかどうかも同じく誰にも判断できない。
人生において、分岐点に戻って別の道を歩きなおすことはできないことを鑑みれば、選んだ道が正解だったかどうかを確認する術はないのだ。
そして、確認できなければ比べようもない。
結局のところ、人生に正解などない。
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さて、このドラマを完走後しみじみ思ったことは、たったひとつの季節が過ぎる間に人は様々なことを経験し、また変化することができるのだということ。
そうなのだ。
季節がひとつ進むたびに人は成長する。
スンチョンが物語の最後に語った言葉がそれを実感させる。
今日だけ頑張ってやめよう
明日までやってダメなら逃げよう
毎日を必死で過ごしていたら、気がつけば 春はいつの間にか過ぎていた
恋をして僕は幸せだった この春を忘れない
私は次の季節までに、どんな経験をし、どんな成長を遂げることができるだろう。それは日々を懸命に生きたからこそ得ることができる結果。
あるいは、ロバート・フロストの詩 のように、選ぶ道次第で全てが変わってくるのかも。
トップ画像:KBS「プロデューサー」公式サイトより引用
http://program.kbs.co.kr/2tv/drama/produca/pc/index.html
(day 98)