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【読書エッセイ】思い立ったが吉日に読む『吉田修一作品』

先日、note内のコメントで、私の恋愛系の掌編小説をとても良いと言っていただいた。その際、その方が吉田修一さんの作品がお好きだと仰っており、これはもう読むしかないと思った。

思い立ったが吉日。仕事帰りに書店へ寄り、吉田修一さんの著書を探すことにした。コメントでは初期の短編集がお好きとのことだったので、その辺りを読んでみたい。

「この辺が初期の短編かなぁ」

そう思いながら、直感で選んだのは『パーク・ライフ』『日曜日たち』『7月24日通り』の3冊だった。調べてみると、『パーク・ライフ』は芥川賞受賞作、『日曜日たち』は帯に「連作短編集」と書かれていて面白そうだ。そして『7月24日通り』は、タイトルだけで選んだ。

次の休日、朝からどっぷりと読書に没頭することにした。まずは『7月24日通り』。書店で目次を見たとき、10タイトルが並んでいたので10本の短編集だと思ったのだが、実は全10章の長編だった。しかし、せっかく読み始めたのでそのまま読み進めることにした。

読み進めるペースは相変わらず遅いが、とても面白い。情景が自然と頭に浮かんでくるのが良い。多少恋愛が絡む作品を読んだことはあるが、しっかりとした「恋愛小説」を読むのはこれが初めてかもしれない。胸が熱くなるような展開に惹き込まれた。
最後の第10章に差し掛かったとき、帯に書かれていた『吉田修一の罠』の意味が腑に落ちた。「なるほど、そういうことか。すべてがここに詰まっていたのか」と鳥肌が立った。読み終えたときには、主人公のこれからを純粋に応援したくなるほど感動していた。

地味で目立たぬOL本田小百合は、港が見える自分の町をリスボンに見立てるのがひそかな愉しみ。異国気分で「7月24日通り」をバス通勤し、退屈な毎日をやり過ごしている。そんな折届いた同窓会の知らせ。高校時代一番人気の聡史も東京から帰ってくるらしい。昔の片思いの相手に会いに、さしたる期待もなく出かけた小百合に聡史が切り出したのは……。もう一度恋する勇気がわく傑作恋愛小説!

吉田修一『7月24日通り』文庫版裏表紙内容解説文より

その勢いのまま、次は『日曜日たち』を読むことにした。帯には「連作短編集」とある。今度こそ間違いなく短編集だ。それぞれの主人公の日曜日が描かれているが、共通して登場する人物がいて、微妙に絡み合うストーリーがなんとも魅力的だった。
これもまた読んでいて心地よかった。頭には情景がはっきりと浮かぶ。読み終えた後は、とても清々しい気持ちになった。

ありふれた「日曜日」。だが、5人の若者にとっては、特別な日曜日だった。都会の喧騒と鬱屈した毎日のなかで、疲れながら、もがきながらも生きていく男女の姿を描いた5つのストーリー。そしてそれぞれの過去をつなぐ不思議な小学生の兄弟。ふたりに秘められた真実とは。絡みあい交錯しあう、連作短編集の傑作。

吉田修一『日曜日たち』文庫版裏表紙内容解説文より

こうして新しい本、新しい作家に出会えたことがとても嬉しい。残りの『パーク・ライフ』は、次の休日に読む予定だ。そして、この勢いで別の吉田修一作品にも手を伸ばしてみたいと思っている。

(※サイマチ ハジメさん、コメントありがとうございました。)



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『思い立ったが吉日な休日を過ごす者』
ミノキシジルでした。

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