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【読書エッセイ】何もない、何気ない今日の読書『パーク・ライフ』

昨日から娘が発熱しており、今日は家で過ごすことにした。病院で薬をもらって飲ませたおかげで、幸い熱はだいぶ下がり、本人はすっかり元気そうだ。大人しくしているのはどうにも難しいらしく、ゲームに夢中になっている様子を見ていると、特に心配はなさそうである。

昨夜から雪が降り始め、気温はぐっと下がった。道路や車には薄っすらと雪が積もっているが、まだ根雪になるほどではない。それでもいよいよ本格的な冬の始まりを感じさせる。
家の中は暖房のおかげで暖かいが、その分暖房費がかさむ現実的な心配も頭をよぎる。そんな中、私は暖かい室内でのんびりと読書をすることにした。

先日購入した吉田修一さんの残り1冊、『パーク・ライフ』を手に取る。

公園にひとりで座っていると、あなたには何が見えますか?スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、地下鉄でぼくが話しかけてしまった女だった。なんとなく見えていた景色がせつないほどリアルに動きはじめる。日比谷公園を舞台に、男と女の微妙な距離感を描き、芥川賞を受賞した傑作小説。

吉田修一『パーク・ライフ』文庫版裏表紙内容解説文より

主人公の「ぼく」と「スタバ女」の、何もない、何気ないやり取りが描かれている。あらすじにもある通り、微妙な距離感には何ともいえない切なさが漂っていた。読み進めるうちに、日比谷公園という舞台の風景と共に、二人の不思議な関係に自然と引き込まれていった。

読み終えた時、いくつかの疑問が頭に浮かんだ。だがその答えは、結局のところ作者にしかわからないのだろう。セリフの一つひとつにどんな意味が込められているのか。この場面は何を意図しているのか──考えてみても、確かな答えを導き出すことはできなかった。
それでも、この日比谷公園で起きたささやかな出来事に、ただ心が惹かれていた。

こんな素敵な作品に出会えたことを嬉しく思う。そして、また別の吉田修一作品を手に取ってみようと思うのであった。



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『娘の熱もだいぶ下がり一安心している者』
ミノキシジルでした。

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