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【読書エッセイ】引き続き、読書週間ということで『炎上する君』

毎年1027日から119日(文化の日を挟んで2週間)は『読書週間』である。
空いた時間を利用して読書に勤しむことにしている。

11月5日と6日は仕事で東京へ出掛けた。移動は飛行機なので、読書にはちょうどよいかと思い、2冊の本を持参した。飛行機に乗り慣れていない私は、手続きでバタバタするのが嫌なので、フライトの2時間前には空港に到着した(9:45発に対して7:38着)。手続きを済ませると時間が余るが、それでも慌ただしいよりは落ち着く。

朝早く空港に着いたため、搭乗口付近にはまだ誰もいない。椅子に腰掛け、少しスマホを触った後、持ってきた本を開くことにした。

持参した2冊のうち、西加奈子先生の『炎上する君』から読むことにした。以前、又吉直樹先生のエッセイ『第2図書係補佐』で紹介されており、興味を持って購入していた本である。西先生の作品を読むのはこれが初めてだ。この短編集には、表題作の『炎上する君』を含めた8編が収められている。

小説を読み終えた時、作品への感想や様々な考えが浮かぶと同時に、達成感も得られる。この達成感は、読書が得意でない私にとって大切なものである。それが短編集なら何度も味わえる。だから私は短編集が好きなのだ。

読み始めてすぐに驚かされた。最初の作品『太陽の上』の書き出しがこちらだ。

あなたは、太陽の上に住んでいる

二人称での語りである。先日『この世の喜びよ』で初めて二人称小説を体験したばかりだったため、続けて読むことに少し不安もあったが、その不安はあっという間に消えた。物語は私を一気に引き込み、20ページがあっという間に過ぎ去った。この作品で早くも最初の達成感を得たのである。

その後も飛行機の中や、東京到着後の電車の中、ホテルの部屋など、至る所で本を手にした。ファンタジックでありながらも現実感を持つ作品が多く、どれも楽しむことができた。8度の達成感と感動を味わったのである。

特に印象に残ったのは『ある風船の落下』という作品だ。ストレスが溜まると体が風船のように膨らみ、最終的には空に飛んでいってしまう奇病を描いた話であり、人との関わりや距離感について考えさせられた。

巻末には又吉直樹先生の解説があり、

僕らが住む世界は非常に面倒だ。どのような楽しい物語を読んでいても、その裏にあるきな臭い現実は容易に想像出来てしまう。しかし、この物語達は現実から逃げず、真っ向から対峙し生きることを肯定してくれる人間讃歌だ。

まさにその通りだと深く共感した。

そして、読書が遅い私は結局1冊で終わってしまったのである。


表題作の『炎上する君』は映画化されていたようだが、今回の読書で十分に堪能できたため、映画を観るかどうかは少し悩んでいる。



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『もう1冊はさくらももこ先生のエッセイを持っていった者』
ミノキシジルでした。

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