短編「枕の奥で爆ぜるから」
――夢のつづきを上手に見たことがある?
彼は私の髪を梳きながら、ふいにそう聞くことがあった。私はそのぬるい手のひらに自分の頬を押しつけて、彼の皮膚の奥に自分の体温が染みていくことを願いながら、ない、そう答えた。
――僕はいつもくじらのことを探してる。
彼は幼少期から繰り返し見ている夢がいくつかあった。そのうちのひとつは特に彼のことを惹きつけたらしく、付き合っていた三年間で私は何度もその話を聞いた。
くじらの話。大きくて真っ黒なくじらなんだ、真夜中の海で会うんだ、いつも