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日本語でしゃべらない

どうにも立ち行かなくなると、
わたしはいつも、外国語の勉強をしはじめてしまう。

だいたいの悩み事は、日本語で考えるものだから、外国語をしゃべっているときくらい、悩むのをやめにしよう。


最近、英語の勉強をふたたび始めた。

読む英語は人並みくらいにはできると信じているけれど、
しゃべる英語にかんしてはチンパンジーなもんだから、おしゃべりの練習をはじめた。
(チンパンジーの方、もし読んでいたらすみません)


英語で悩めるほど、英語が使えるわけではないから、勉強しているときだけは、むずかしいことを考えなくていい。

せいぜい考えるのは、
発音の苦手な、「あ」と「え」のあいだの音のこと、だけだ。




名前も聞いたことのない国に行って、ふらふらしていたいと、ときどき、思う。
そんな国、あるのか。名前だけ知っている国が、どんどん増えていく。

だいいち、わたしはパスポートをもっていない。
パスポートももっていないくせして、
いろんな外国語を勉強し始めている。



祖母。

祖母は、パスポートを持ったことがないひとだった。
だけれど、外国語は堪能だった。

去年亡くなって、遺品のなかから、フランスに住む男性との文通が出てきらしい。

わたしはフランス語が読めないから、
祖母がなにを書いていたのかはしらないけれど、きっと、なにかとても、素敵なことを書いていたのだと思いたい。

なにかを知らないでいるという美学もあるはずで、だから祖母は、フランスに行かなかったのだと思う。
わたしは、これからもフランス語は勉強しない。



いまからパスポートとります。


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みなと
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