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働き方改革法による人事の役割

いよいよ目前に迫ってきた働き方改革法本格施行
もっと先だと思っていたらあっという間にいよいよ本格化のタイミングにきてしまいました。

企業人事の方は、この同一労働同一賃金の対応に頭を悩ませていると思いますが、いよいよ事業側でも真剣に考えていかねばならないフェーズにに入ってきます。
僕も「マイクロ人事部長」として入っている複数の会社でもすべてで対応を進めています。

基本的には、どこの会社でも「手当廃止」をベースにお話ししています。でも実態はなかなか難しい。

というのも、前述の記事に書いてあるような、「基本給のベースアップを手当で賄っていた」というのは主に大手の話で、労働組合のないような中小企業は、ほぼ全ての会社が「多様化するニーズに応えていくために、(場当たり的に)手当を活用していた」というのが実態だからです。

で、これをニーズごとにパッチワークで作っていっているものだから、もう使っていない手当がずっと残ってしまっていたりする(就業規則改訂は承認プロセスが面倒くさいので、廃止するときに就業規則改訂を行っているところは稀)。

だから「手当の一覧を作りましょう」と言うと「これ何に使ってたっけ」というような手当が出てきたりする(中には手当の項目を別の対応項目にすり替えて使っていたりするケースもある)。

出来る限り基本給に包含する形をとっていくやり方を多くはしていますが、既得権益になっているのでモチベーションを考えるとそうそう廃止は出来ないし、非正規社員は対象外という手当を使っている企業は山ほどある

単純に「法令対応が必要だからやらねばならない」と対象範囲を非正規社員まで一気に拡大すると、非正規社員が多い企業は人件費インパクトが大きすぎて、事業側への影響が甚大になり収益を一気に圧迫する(固定費上昇ですからね)。ここをどう落とし所にするかを企業の人事は大いに悩むわけです。(人件費比率の上昇インパクトは人事の方も絶対にシミュレーションしましょう)

日本郵政のように「非正規と同条件にするために正社員の条件を引き下げる」なんてウルトラCをやるところもあるとは思うけれど、社員一人一人の役割が重い中小企業にはモチベーションを下げられないのでなかなかハードルが高い。

法令施行後に、社会的影響の強い企業に労基の立ち入りがあって、いきなり是正勧告でも出ようものなら、それが判例になり、企業は対応を時間的猶予なく対応を迫られることになる。それこそ事業の息の根が止まる企業も出てくる可能性がある

この点を行政がどう考えて対応するのか。「法令だから」と杓子定規にバサっとやられてしまったら大変。人件費インパクトが強いということは日本経済への影響も甚大で景気減退要因にもなり得る。行政はしっかりと関連行政と連携をして考えてもらいたいと思っています。

また、手当は、働きかたの多様性には対して活用できる要素の一つで、様々な条件の社員に対して対応する時に全社員への適用は難しいけれど手当で対応する、といった活用方法としても使える要素です。同一労働同一賃金に頭が向いてしまい、勤務条件バリエーションが狭められるようなことになると、働きかたの多様性の推進の阻害にもなる可能性はある。

企業にとって、一番頭を悩ます人件費インパクトは、この同一労働同一賃金対応と、そして最低賃金引き上げで、まだ最低賃金が低い地方企業は、今後の最低賃金引き上げに対するインパクトを考慮できていないところが大半なので、下手をすれば地方企業の地盤沈下に繋がる可能性もある

決してこの動きに否定的なわけではないのだけれど(寧ろ進めなければならないと思ってる)、うまくやらないとほんとマイナス基調に触れるリスクがあるので、ここから人事は腕の見せ所が始まる。事業側のことをしっかり理解した上での対応をしなければ、本業にとどめを刺すことにもなりかねません。

これこそ、人事戦略であり、経営戦略そのものだと思います。

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髙橋実@マイクロ人事部長
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