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リアルワークとテレワークのハイブリッドの難しさ

コロナの感染者数が増加の一歩を辿っています。
緊急事態宣言が解かれたのち、都市部を中心とした感染者の増加は、夜の街だけでなく職場や家庭にも広がってきています。

自分を守れるのは、自分だけ

コロナウイルスに罹らない方法はない。コロナウイルスを治す方法はない。
人を守る方法は、接触制限しかない。
でも、政府は、これ以上経済を止めることはできないと考えているようですね。僕は、これから先、4月と同じような緊急事態宣言はもう二度と出ないと思っています(それがどんなに感染拡大を引き起こしたとしても)。

緊急事態宣言の時は、ある意味楽でした。
「自宅で巣ごもりしろ」それに忠実に従っていけばよかった。
でも今は、どこで感染するかも分からない状況。

「自由は最大の不自由」
今は、自分自身で考えて、行動をしなければならないから。
全ての行動が、自己責任になっています。

「会社は出勤しろという。でも、感染したら、自己責任」
「クライアントとの打ち合わせがリアルに、感染したら、自己責任」
「街中に出て食事をしなければならない。感染したら、自己責任」

今は、自分を守れるのは、自分だけ
自己の判断で、自分の健康や生活を決めなければなりません。
恐らくこれは、あと1年近く、下手をすればもっと続くと思います。

コロナ禍のBCPの難しさ

僕は、東日本大震災の時のBCP(Business Continuity Plan)を、体験しています(以下の記事の「寺岡課長」)。

BCPとは、「緊急事態が発生した時に事業継続を行う舵取りの方法」です。
今回のコロナもまさしく、BCP案件に該当します。

ただ、コロナ禍がこれまでのBCPと異なり、とても難しいのが「人の接触によりリスクが発生する」という点。つまり、人と人とのコミュニケーションに影響しているところだと考えています。

震災やその他の災害など、物理的にコミュニケーションが分断されることはあっても、寧ろコミュニケーションをシンプルにどう復活させればよいかを考えればよかった。でも、今回のコロナ禍は「これまでのコミュニケーション手法自体がリスクになっている」のです。新しいコミュニケーション手法を編み出さないといけないという点が、大きく異なる点なのです。単純に緊急事態宣言が終了したから元に戻せばいいというものではない。「コミュニケーションの戻し方(新しいスタイルも含めて)」自体を考えていかねばならない状況に直面しているということだと考えています。

社員の安全を守るのは、とても難しい

企業がBCPを実行する上での最大のポイントは、

①事業をどのように継続していくか
②社員の安全・安心をどう守っていくか

ということです。

事業プランは、経営者も社員も、苦しいけれど比較的イメージが湧くと思うのですが、「社員の安全が会社として担保できるのは限界がある」。この点が、これまでのBCPプランとは大きく異なる点です。

会社が一生懸命コロナ対策に取り組んでいても、会社外のどこかで拾ってしまうかもしれません。それは夜の街に出かけなくとも、自己防衛策をしっかりとっていても生まれてしまう可能性がある。自己責任といっても、しっかり予防策をやっていたとしても罹ってしまう可能性も高い状況です。

それぞれの企業で働き方が異なってきている

多くの企業が、緊急事態宣言で、望む望まないにかかわらず、数か月リアル出勤が難しくなり、テレワークや時差出勤を導入せざるを得ない状況になりました。

しかし、組織のルールを変革していくには、あまりに時間が短かったように思います。慣れないテレワークの中で、利便性より運用の難しさを感じてしまったり、組織課題が顕在化しているけれど解決できず、結局ビフォーコロナの状態に戻している企業も多くあると思います。

①ウィズコロナでも出社を義務付けていた企業のパターン
事業モデルがリアルを前提にしている企業。多くはリアルワークを前提とした働き方を崩せずにいます。このパターンの企業は、リアル前提の事業モデルをこの短期間で変えていくのは難しい(余力のある大企業が徐々に変えるくらい)のと、緊急事態宣言期間の事業マイナスが大きく、事業立て直しが急務なので、リアルワーク前提で感染リスクを最低限にして(ある程度の感染者発生は仕方がない)いくしかないと思います。

②ビフォーコロナの状態に戻した企業のパターン
事業モデルはリアル前提ではないけれど、企業文化としての働き方がリアルワークを前提としている企業。
テレワークを導入したけれど、社内の働き方がリアルワーク前提で回していたので、仕事の進め方が追い付かず、生産性が低下して、結局戻さざるを得ないと判断した企業も出てきているようです。

③リアルワークとテレワークのハイブリッド企業のパターン
事業ではリアルワークが主流だが、ハイブリッドで働き方を変えていく企業。なかなかチャレンジングです。コロナを契機に今後の事業リスクとしてテレワークに舵を切る決断をしています。僕が特に注目しているのはデニーズ。飲食業というリアルワーク中心の企業であるにも関わらず、管理部門は原則テレワーク中心に。かなり大胆に決断しています。

④テレワークを前提にした働き方にシフトチェンジした企業のパターン
事業モデルがテレワークに適しているIT企業や、コロナを契機に一気にシフトチェンジに舵を切った企業。IT企業は、テレワーカーが増えてオフィスを減床する企業も多く出てきています。注目すべきは一気に働き方をシフトチェンジしたところでしょう。日立製作所は、人事制度をジョブ型にシフトをすることまで手を入れることを表明しています。富士通やカルビーは、課題だった単身赴任制度の見直しまで着手。ただ、このようにドラスティックにシフトチェンジできるのは、体力のある大手に限られるのではないかと思っています。

インフォーマルコミュニケーションが好きな経営陣

事業モデル、働き方の文化の違いは仕方がないにしても、僕が気になっているのがインフォーマル文化が大好きな経営陣が思考停止している企業も多いのではという点です。

「飲み会(リアルコミュニケーション)が好きな経営陣」
「ゴルフコミュニケーションが好きな経営陣」
「”俺の背中を見て覚えろ”という経営陣」

このような経営陣が、自分の価値観でマネジメントスタイルを「元に戻す」という動きで企業での政策決定をしてしまっているようなケースです。

日本は、このような新しい文化へのアレルギーが強い企業があまりに多いと感じます。アフターコロナは明らかに元には戻れないのは必然です。このような企業の大多数は、事業でも冒険ができず、社内風土も変えたがらない企業が多い。新しいものに触れざるを得ない環境になったにも関わらず、自分たちの価値観で判断しまうことは企業の将来を潰すことになるかもしれないということをしっかりと考えてほしいと思います。

「ニューノーマル」についていけない社員の行く末

もう一つ、僕は気になっていることがあります。

それは、「コロナを契機に”新しい企業の働き方”であるニューノーマルについていけない社員は、未来がないかもしれない」ということです。

前出の新たな働き方を表明した富士通は、2018年から配置転換制度、昨年は早期退職制度で大量退職しています。

新たに変わっていく大手企業では、これまでなんとか抱えてきたパフォーマンスが上がらないシニア層の未来を、奪ってしまうかもしれません。

ここはまた、別のnoteで改めて書くことにします。

2020.7.17 追記
アフターコロナの「自立してないおじさん」の行方で、noteを書きました。

本当に難しいのは、リアルワークとテレワークのハイブリッド

話を戻しましょう。

それぞれの企業が、事業モデル×企業文化(働き方)により、パターンが増えてきているのが分かると思います。多様化する社会、アフターコロナではさらに多様化が進むので、パターンが多様化するのはいいことだと思います。

経営と人事の視点では、一番難しいのはリアルワークとテレワークのハイブリッドではないかと思います。社内に、ダブルスタンダードの制度を作るのに等しいからです。全社ベースでの公平な制度という視点では、明らかに働き方が異なる社員をマネジメントしていかねばならない。日立製作所がチャレンジしようとしているジョブ型への転換は難しいと言われていますが、僕はそれより難しいのが、リアルワークとテレワークのハイブリッドではないかと思っています。

また、企業としてスタンスを決めず、状況に応じて決めていく、というスタンスは、あまりおススメしません。これからも確実に感染状況などが変化してくのは間違いありません。スタンスを決めずに流れに任せてしまうと、社員は徐々に疲弊して、コミュニケーションの分断が起こり、いつの間にか組織風土が悪くなることは想定できます。しっかりと方向性を決めていくことが大事だと思います。

今はまだウィズコロナの真っただ中にいます。
これからさらに環境は大きく変化していくと思います。その中で、どのように経営判断をし、どのように働き方を変えていくのか。
難しい課題ですが、人事の手腕が試されています。

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髙橋実@マイクロ人事部長
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