阿寒湖の木彫りの現状
阿寒湖には木彫りの作家がたくさんいます。店頭に出ている人間だけでも十数人か、もっといるかもしれません。こんなに多くの作り手がまとまって生活している土地は北海道広しと言えど阿寒湖だけです。おそらく全国でも有数なのではないでしょうか。
しかし、そんな阿寒湖でも昔に比べると随分と作家の数は減っているそうです。これは親方調べ(親方と呑むと昔はもっとたくさんの職人がいたんだと言う話がよく出てきます)なので確証は取れていませんが、まず間違ってないだろうと思っています。毎日挨拶する新聞屋のおじさんも、会うたびに「これから仕事かい?頑張ってるね」と声をかけてくれる近所のおじさんも、「実は昔木彫りの職人だったんだよ(今もちょっと彫ってたりする)」というようなことが結構あります。そこはさすが木彫りの街だと感心します。
現在私は43歳ですが阿寒湖では未だに若手に入ります。それもそのはず、20代どころか30代の作家もほとんどいません(30代後半が数名)。阿寒湖は長年観光産業とともに歩んできた街で、景気のよかった時期はたくさんの作り手、売り手を雇っていたわけですが、現在ではなかなか雇うに至らないというのが事実です。木材の仕入れや作ったものの販路が分かりにくい業種なのも新規で作家になろうという方にとっての障壁になっているように思います。
私はこの仕事のほとんどを親方から学びました。その事は同時に作るという大好きなことを仕事にする喜びをもらったと思っています。きっと親方もその親方(大親方)からそれらを受け継いで来たんだと思います。それが阿寒湖という街の一端を支え、伝統に近いものとなってきたのだと思います。私もできることならこのバトンを次に繋げたい。現在の阿寒湖の状況では、それはなかなかに大変なことかもしれません。それでも、そこにチャレンジしていくことが私の使命だとも思っています。そしてそのために巨匠になることが必要で、阿寒の森間伐材アート展の取り組みを成功させることが必要だと考えています。