ごめんなさいっ
この前の歩くだけで汗をかくほど暑かった日、私は青色のシャツを着てサングラスを掛けて家から駅まで歩いていました。
家を出てから5分ほど歩き、信号をわたって細い歩道を歩いていた時のことです。
反対から歩いてきた、中年の真顔が少しばかり怖いおじさんとその細い歩道でお互いに左右同じように避けてお互いに失速してしまいました。
暑い日でしたから、戸惑いつつもさっさと先に進みたかった気持ちが勝って、小さな声で「すみません」と笑顔でお辞儀してその場を去ろうとしました。でも、相手のおじさんは「ごめんなさいっ」と笑顔でお辞儀して、「はははっ」と笑っていました。
今考えれば「だから何だ」という話ですが、そのときはものすごく心を打たれたのです。おじさんの「ごめんなさいっ」に。
私は一瞬の出来事だったからと口から一番簡単に出てくる「すみません」を選びました。この言葉はあまり口角を動かさなくて良いので、かなり重宝して使っていたのがそのときにも発揮されました。
でもおじさんは、口角を大きく動かして濁点のある「ごめんなさい」を瞬時に選んで発したんです。それはとても普通のことでありながら素晴らしいことだなと感じました。
いまのところ私には「ごめんなさい」がとっさに出てきません。
だからこそ、さらっと「ごめんなさい」を伝えられることが羨ましいのです。
日々の生活で使う言葉は、慣れ親しんだものであるだけに個人の性格が露呈すると考えます。だからこそ、私は「ごめんなさい」が清々しく口に出せる人でありたいと思いました。
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