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「逃げて人生を切り開く」 自分に合った居場所で生きる - 後編 -

キャリアに悩む40代。会社員を辞めて、自分にあった生き方を目指したMFさん。前編はフリーランスになるまでの山あり谷ありのストーリー。フリーになったはいいけれど、ブログを使ったネットビジネスで突然稼げなくなり、この先どうしようかと真っ青に・・・? 

前編はこちら↓


救いの女神、現る。フリーランスのライターの道へ


青くなったMFさんに救いの女神が現れた。Googleアドセンス(*)講座で知り合ったAさんだ。Aさんは企業の社外向けの記事を執筆しており、このライティングの仕事を引き継ぐことになったのだ。

(*)Googleアドセンスとは所有するブログにコードを貼り付けると広告が表示され、それがクリックされると報酬が得られる仕組み



今までよりも安定的な仕事だ。「僕が死にものぐるいでアドセンスをやっていたことに信頼感を感じてくれたのかもしれない。一部上場企業で働いていた事も評価された点かもしれない」



半年間、MFさんは必死でAさんの仕事をこなした。それが評価され、翌年からの仕事を受託することができた。



「ライティングの世界って人とのつながりや人脈で仕事ができていくのではないかと思っている。僕自身の人生は人とのつながりだけで生きてきた。人見知りをすることもあるけれど、一生懸命、一緒にやってきた。仲間とは疎遠になってもつながっている感じがある。巡り巡って助けてもらったこともある。これからの時代、AIが人間の仕事を奪ってしまうといわれるけれど、人間はそんな簡単なものではない。恩とか誠意とかそんな泥臭く人間臭い部分も大事。人と人のご縁や恩があってこその人生じゃないかと思う」

イメージ画像:つながりがあってこそ、救いもある


理想の働き方に近づいた。フリーランスのBefore/After


安定した日本企業を飛び出して、フリーランスになったBefore/Afterを聞いてみた。「人間関係のストレスは相当減った。会社では同調圧力もあるし、性格が合わない人とも付き合わなくてはならない。そこから抜けることができた」



「会社員時代は無駄なことがとても多かったと思う。通勤、服装、電話、会議、余計なメール。会社員は仕事に集中できない環境にいる。いっとき、集中するために『午前中はメールを見ません』とかトライしたけれど、会社はそうはさせてくれなかった。僕はじっくりやりたい。マーケティングの仕事をしていた時も、時間をかけて資料を作成した。上司がいない方が集中できたから、みんな帰った夜に仕事がはかどるようなタイプだった」



一方、フリーランスになってからは、自分の仕事に集中できる。仕事の範囲が決まっているし、関連するメール以外はほぼ来ない。お付き合いする人も限定的だ。そんな環境はとてもあっているという。

イメージ画像:仕事風景


「今の時代、会社という組織に馴染めない若い人達ってたくさんいるのではないかと思う。僕も長らく会社員をやってきた。だから会社員として生きることができるけれど、心の奥底では『なにか自分にはあっていない』と思っていた。フリーランスは自分でやるべきことは多いが、やらされてやるのと、自らやるのはモチベーションがまったく違う」


フリーランスは自分で仕事を選べる。個人としてのスキルアップは必要だが、組織の不条理を受けることもない。自分軸で仕事をすることができるのだ。


「僕はもともとオンとオフをきっちりわけたいタイプだった。フリーランスになってからそうではなくなってきた。黙々と集中できるので、フロー状態になっているのだと思う。仕事が苦しくないのでその点も今の仕事は向いている」

MFさんお気に入りのスターバックスのソファー席。オフィスビルの2階にあるこの店は、天井が高く開放感があり、リラックスできる。フリーランスのライターであれば、仕事場所の制約はない。


会社は常に成長、上昇、利益拡大志向だ。会社や組織の成長軸に、自分の成長軸を合わせていったら、ある年代で違和感を感じはじめ、それがどんどん広がっていく。出世できなかったという負け惜しみもあるけれど、40代、50代になって働き方が選べないのもどうなのだろうか。


日本の企業では出世するか窓際か、両極の処遇がまだまだ残っている。ゼネラリストが求められ、年齢を重ねたらマネージメントが常識で、スペシャリストとして残れる道は少ない。年齢を重ねると、日本の会社では生きづらさが増していくのではないだろうか。45歳定年と言われても今はまだ明確な解決策は見出せない。

イメージ画像:通勤風景

フリーランスのお金と幸せ

「収入については額面ベースで会社員時代の1/2以下ではないかと思う。確かにこのままだと将来設計ができないので、増やさないといけないと思っている」


「ただ、幸せはお金ではないと気づいたことがあった。自分も一部上場企業に転職して年収も上がり、天国にいる気分だった。でも周囲の人達は幸せそうじゃなかった。給料が安いと愚痴や文句を言っている。収入が少なすぎてもきついが、ある程度の年収を越えると幸福度と比例しなくなる。

イメージ画像:お金と幸せ


「僕は年収が倍になった時、めちゃくちゃお金を使ってしまった。買い物をして、ローンも組んでバンバン使ってしまった。少しくらいの贅沢は良いだろうと思ってしまった。『おかしいな、年収倍になったのに、なぜお金が残らないんだ』と。おまけに仕事のストレスの代償として浪費し、結局どこかで帳尻を合わせてしまう。そんな経験から、お金がある人イコール必ずしも幸せではないと学んだ」


「確かに、収入面からするともっと働けば?という結論になるけれど、せっかく抜け出した日本人特有の仕事に忙殺される世界には戻りたくない。以前に訪れたオーストラリアの人たちは残業しないし、家族の時間も大切にしている。僕はワーカホリックにならなくても生きてゆける生活にこだわっていきたい」

2017年オーストラリアのゴールドコーストに行き、1週間ホームステイをした。画像はホスト宅のキッチンの様子。ホストファミリーの50代夫婦は、40代の日本人男性が1週間だけ滞在することに最初は驚いていたが優しくしてくれた。 朝晩は一緒に食事をした。昼間は自由行動だったので、英語講師兼ガイドを雇い、街を巡った。

「経営者や企業の役員とも繋がったが、成功した人は、大きな責任やリスクを背負う重圧もあり、悩みや苦しさを裏に抱えていた。今まで、成功と幸せは同じ軸だと思っていたけれど、そうではないと気がついた」


MFさんが受託している仕事は、企業が発信する記事を書くことだ。新製品の発表、スポンサー契約やイベント告知の記事を月間4〜5本書いている。記事単価も高く、約30円/文字だ。こういった仕事は募集サイトには出てこないため、必要とする会社とライターのミスマッチがあるのだろう。


企業側でも面接してまでライターを募集するまでの気合いはない。でも派遣社員ではニーズを満たさず、かといって正社員では過剰すぎる。それなりのライティングスキルがあるライターには本当にニーズがある。そこをうまく見つけることができたら、稼げるのではないかと話してくれた。

イメージ画像:ライティング

フリーランス、これからの時代の選択肢


組織で生きづらい人にとっても、フリーランスという働き方は、これからの一つの選択肢なのかもしれない。


米国のクリントン政権で首席スピーチライターだったダニエル・ピンク氏。彼が8年前の2014年に書いた本がある。『フリーエージェント社会の到来 - 組織に雇われない新しい働き方 - 』フリーエージェントとは、「インターネットを使い、組織に縛られず、独立していると同時に社会とも繋がっているビジネスをしている人」今、そんな生き方をする人が増えている。


MFさんは様々な試練を経て、40代後半で一足先に新しい働き方にシフトした。これからの未来を考える40代の人達に、一つの選択肢を提示してくれているのではないかと思う。MFさんのこれからの活躍が楽しみだ。


参考図書:
ダニエル・ピンク著『フリーエージェント社会の到来 - 組織に雇われない新しい働き方 - 』

                                      了