第1回 "深心塾” 手術を「見る」を極める!【小児心臓外科編】 2024.5.25
深心塾は「心臓外科医になりたい!」という研修医や学生さん、心臓外科医を目指して日々励んでいる若手外科医に向けて、「心臓」も「心」も深めることを目指した勉強会です。
詳しくは下記をご覧ください。
記念すべき第1回のテーマは ”手術を「見る」を極める”
「手術を見て学ぶ」とは言っても、どんなことを見ているかは、外科医の習熟度によって違ってきます。どんなポイントを見るべきかを知っておくだけでも、得られるものが全く違ってきます。
第1回は、深心塾の目指す「早いラーニングカーブを描く」に沿った内容です。
いろんな視点からのコメントがあったほうがよいと思い、今回2人の小児心臓外科医の先生にオンラインで講師としてお願いしました!将来的には成人版も行う予定です。
1人目は、弘前大学 胸部心臓血管外科 講師 小渡 亮介先生!👏👏👏
「10年目で0.8人前の外科医になる道:とある地方医の表の顔と裏の顔」の著者です!
別のnoteでこの本については紹介したいと思いますが、この本の中の「モノマネを極める」というところを読んで、手術の観察力がすごすぎる!と思い、講師をお願いした次第です。
2人目は、東邦大学医療センター大森病院小児心臓血管外科 准教授 片山 雄三先生👏👏👏
横浜市立大学卒で、実は当院にも手伝いに来てもらっており、後輩の指導がとてもいいなぁと思って、講師をお願いしました。
そして…Zoomを録画する予定だったのですが、立石の大失態で録画を忘れてしまいました😨
参加できなくて録画を楽しみにしていた方、本当にごめんなさい🙇
現地参加して頂いた、横浜市大 外科治療学の鶴雄斗先生に議事録を作成頂き、それを元にぜひ共有しておきたい内容について、文字起こししましたのでご参照ください。
今回は、京都府立医大の山岸正明先生が今年(2024年)の3月に出版された「先天性心疾患の外科治療」の左心低形成症候群に対するNorwood手術(chimney法)のビデオを供覧させて頂きながら、3人がコメントをするという形で行いました。
なぜこのビデオを選んだか?のは、手術自体は超上級者向けですが、血管縫合のシーンが多く参考になりそうというのと、あまりにも第一助手が手練過ぎる!という理由からです。第一助手が完璧にできて、認められてこそ術者になれる、ということを理解してほしいという意図もあったためです。
以下、当日の3人のコメントをまとめたものです。
縫合について
立石 どういう組織にどういう太さの糸を使うか、どれくらいのピッチで、縫う幅をどれぐらいとって縫うか、というところも観察したほうがいいですよね。
小渡先生 山岸先生の運針って、針を持針器で持つ場所が完全にfineな場所じゃなくても、次の針がベストの場所に入れられる幅が大きいと思う。
自分は練習する時もそれを意識していて、どれぐらいfineに針を持てなかったら、次の一針のクオリティがどれぐらいになるかを考えて練習していて、例えば右房を縫う時とかに試している時もある。
立石 fineに持っていなくても、ちゃんと組織に対して垂直に正確に入ってるところはすごいですよね。
小渡先生 組織に垂直は大事ですね。
立石 あとは血管吻合で絶対に狭窄を作りたくない場所で、外反させて縫うことも大事ですよね。
小渡先生 内縫いだけど、内反させないために確実に1針1針塗っていくのも大事ですね。
立石 このビデオでもですが、山岸先生ってステイスーチャーがめちゃくちゃ多くて、スーチャーホルダーをずっとかけてるんですよね。組織が捻れないように、出来上がりを意識して縫うことも大事ですよね。
針糸の選択
小渡先生 組織のフィットで困ったら8−0で縫っている。細い糸で縫うと、組織がよりフィットすると思っている。
立石 強弯針か弱弯針は?
小渡先生 先端の意識が強いと強湾好きが多い気がします。
第一助手について
立石 このビデオの前立ちの先生、本当にうまいですよね。
小渡先生 組織のテンションのかけかたとか、ベストですよね!
この前立ちのすごいところは、手術の流れを全て把握してるのは当然ですが、その瞬間瞬間が100点の前立ちじゃなくて、ずっと80点でできるような前立ち。その瞬間の100点を意識しすぎて、次の予測ができていないと次の場面で60点とかに下がる。それよりも次を意識しながらやって80点を持続する、みたいなイメージだと思うんですよね。
あとは、前立ちは動きすぎないのが大事。場に安定感があるのが大事ですね(3人同意)。
片山先生 吸引も含めて視野展開をしている、ドボン(フレキシブルサッカー)を意図的に倒して視野出してるところとかもすごい。
小渡先生 人のビデオを見て、前立ちも真似して勉強してます。
片山先生 やっぱり、流れを覚えていないと、細かいことを気にしても意味が無い。全体の流れをまずは把握することが重要だと思う。はじめから細かいところは無理。
---「下手な前立ちを見ても勉強になるのか?」という参加者の質問に対して
小渡先生 例えば手術見学している時なら「自分だったらこうするなー」と考えながら見て、実際の前立ちが違うことをやって術者に怒られたら「やっぱりね」と答え合わせしたりしてますwww
片山先生 当たりでもハズレでも自分だったらどうするかを考えることは良いこと。当たりでも誉められることはあんまりないけど、ハズレだったら怒られるから、その時はこれはダメなんだと教訓にすれば良いと思う。
あとは、術者をやったことがない前立ちと、術者をやったことがある前立ちは全然違うよね。やっぱり若い人にも早めに術者やってもらうのが良いいと思います。
第一助手の糸さばき
立石 この前立ちの先生って完璧で、糸を持って離した後に、近くまでそっと指を添えて誘導するの、大事ですよね。
小渡先生 そう、これはできればやって欲しいですよね。
立石 あと、縫う時の糸のたるみ具合や、術者が針を引いた時の手癖を知ってて糸を持つ場所(4:6)も完璧で。こういうところで上司の信頼を得るのも大事かな、と。
深心塾でも、ドライラボで2人1組になって前立ちの練習も将来的にはやりたいと思ってます。
立石 糸を組織に落とす瞬間に、糸をコントロールするのは、自分でやってますか?助手にやらせてますか?
小渡先生 自分でやっちゃってるかな。縫う進行に引いてもらうと、縫い目がいいところに落ちやすいので、縫う方向を考えたりしてます。
片山先生 僕は助手にやらせるようにしてる。
他、参加者からの質問で、
「手が震えるのはどうすればよいか?」の答えですが、
小渡先生 後輩には、本態性振戦に使うβブロッカーを飲んでる人がいますね(一同衝撃!)
自分が意識していることは、針を刺す時にはリリースできる状態にしておく。持針器を握りながら刺して、リリースする時には外れてるみたいな。動きが止まると震えるので、筋肉が収縮する途中で縫い終わるイメージ、振り子のイメージで縫うようにすれば震えは少なくなるのではないかと思います。
あとは苦手意識があるところでは震えやすいので、練習ですね。
立石 リリースする時に力が入りすぎると震えるので、先生の言ってることよくわかります。あとは、呼吸?スポーツでも同じですが「ここぞ」という時はふーっと息を吐く。でもやっぱり自信がない時に震えるかも。
片山先生 本当に怖い先生との手術だと震える。そして、先がわかってないと震える。数をやれば先の流れがわかるようになって、震えなくなるんじゃないか?(笑)
録画せず、本当にすみませんでした🙇
次回以降は必ず!!
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