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とりはくー八王子市夢美術館『ムットーニワールド からくりシアターⅤ』

※この記事は『博物館紹介サイト とりはく』のコンテンツです。
 博物館にご興味のあるかたは、ぜひ『とりはく』も見てみてくださいね(^^)


八王子駅から徒歩18分ほどの場所にある八王子市夢美術館
現在、『ムットーニワールド からくりシアターⅤ』という特別展を開催中です。

からくりシアターとは…

箱の中に収められたジオラマとからくり人形が、音楽やライトに合わせて動き出すというアート作品です。
……って、どんなものよ?という感じだと思いますので、こちらご参考に。

実は前回この美術館を訪れたときも人形の展示会だったのですが(過去記事『とりはく―八王子市夢美術館『チェコの現代糸あやつり人形とアート・トイ』展』参照)、同じ人形でもまるでタイプが違います。
今回のからくりシアターの人形達は、まず「動いている」ことを前提に展示されています。
稼働していない時は箱やジオラマの向こうに隠れていて、人形は見えません。作品によっては外へ出ているものもありますが、室内の照明が暗いので顔もよく判らない状態です。
それが、電気が流され、ライトを浴びた途端、息を吹き返して歌ったり踊ったりし始める。
この沈黙と躍動の対比が、人形の持つ妖しさやそこはかとない恐ろしさといった性格を強調するようで、とても興味深い。
からくりシアターは、人形そのものではなく、音楽、ライティング、それらすべてを含めた総合芸術なんですね。そういう意味では舞台や映画に近いのかもしれません。

受付でタイムテーブル表をもらおう!

そんな性質の展示品なので、テーマ別に5部屋に分かれた各展示室では、1作品ずつ順繰りに稼働するようになっています。
どの作品がいつ稼働するのかを示した二つ折りペラのタイムテーブル表を受付で配っているので、それを片手に見学することをおススメします。
一応展示室内にもタイムテーブルを記したボードがありますが、部屋ごとに掲示されている場所が違う&室内が暗いので、手許にあったほうが便利です。

印象に残った作品は…

あくまで個人的な所感で、次のみっつを挙げておきます。

【D展示室15:カンターテ・ドミノ】2005年制作
からくりシアターは別名『ボックスシアター』とも呼ばれていて、その名のとおり箱の中で物語世界が展開します。
箱と言ってもあちこち開くので閉鎖空間ではないのですが、それでも「箱」という境界線がある。
でもこの作品は、最後にその境界線が突如破られ、我々の世界へ進出してくるんです。
別におどろしい物語が展開していたわけではないのですが、それでも、どこか別世界を覗き見ている気分でいたところへ突然距離を詰めてこられ、背筋にぞわっとするものを感じました。
これは現地のあの雰囲気の中で、実物を間近に見て初めて体感できるものかもしれません。

【E展示室19:花、根源、そして愛】2020年制作
からくりシアターは、基本的には真正面から見ることを想定してつくられています。
でもこの作品は、チャンスがあれば横並びになっている21『ローズ・オブ・ウィンド』の前辺りから斜に見てみていただきたい。
横合いからだと箱の側面が邪魔するので、中の人形は前方に出てきてやっと手や足が見えるだけなのですが、実はその向こうの内壁に鏡が貼られていて、そこに映る横顔がなんとも物憂く蠱惑的です。
正直、正面からよりも斜の角度から見た時の方が、私はこの作品に魅力を感じました。
そこまで計算してつくられているかどうかは判りませんが、自分なりの楽しみ方が見つかる作品に出会えるのも、こういった展示会の醍醐味かなと思います。

【A展示室6:サーカス】2019年制作
詩人・中原中也さんの『サーカス』に触発されて制作された作品だそうです。
起動すると、録音された詩の朗読が流れます。
内容はぜひご自身の目と耳で確認していただければと思いますが、そこから感じ取る印象や思い描くストーリーは、きっとひとりひとり異なるだろうなと考えさせられた作品です。
中也さんの詩も読み手によっていろんな解釈ができると言われていますが、このからくりシアターも、一応作者の考えたストーリーがあるものの、見る者によっていろんな展開の幅があるのではないでしょうか。そういう意味では、とても「詩的」な造形物と言えるのかも。

でもって、なにがすごいって、この詩の朗読も作家であるムットーニ(武藤政彦)さんがみずからされているんですよ!

すごいものをつくるひとがいるもんだ!

実は土日祝日の午後に限り、ムットーニさんご自身の語りと共に作品を見る上演会が開かれます。
これがまた、とてもお上手で。
上の世代の方なら城達也さんのラジオ『JET STREAM』辺りを彷彿とする、落ち着いた語り口。しかもおもしろい!
ただ……個人的には作品の仕組みなどについてももっと説明を聞きたいなぁと感じましたが、それは野暮ってものでしょうかね(^^;)

ところでこの作品群、もちろんお子さんも見て楽しいと思いますが、年配の見学者のほうがより楽しめる気がしています。
まず、使用されている音楽の多くがジャズやシャンソン。
どことなく古き良き時代のハリウッド映画を思い起こさせるロケーション。
マリリン・モンローやオードリー・ヘプバーンに胸をときめかせた世代の方には、グッとくるものがあるのではないでしょうか。
そしてなにより、コンピューター制御されているわけではなく、ライティングなどの配線までムットーニさんご自身が手掛けられているというアナログ&ハンドメイド感!
いや、ホントに、すごいものをつくるひとがいるもんだ!というのが素直な感想です(笑)

こちらの展示会は24日(日)まで。
ご興味持たれた方は、ぜひ足をお運びください。
上演会は20日、23日、24日。
ものすごく混雑するので、作品をじっくり見たい場合は平日に行くことをお勧めします。
上演会のある日の午前中から入ってひととおり見ておくという手もありますが、作品が時間差で稼働するので、全作品を見ようと思うとそれなりの時間を要します。
ひとりで見ても充分楽しめるので上演会にむりして参加する必要はないと思いますが、でも本当にムットーニさんの語りがステキなので、時間が取れるなら一度は参加されるといいですよ(^^)


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