そしてオークションがはじまる
コーヒーで絵を描いている自分が
絵を描いていくなかで
いろいろ体験したことを書いています
なりゆきでいったイギリスで
なりゆきでクラシックカーの
オークションに参加することになった
(↓くわしくはこちら)
わたしたちが最前列の席に着席したところで
オークションがはじまった
壇上では
スーツを着こなした男性が
流暢な様子で
次々と車を紹介していく
分厚いカタログには
ぎっしりとクラシックカーがならんでいた
「見てもいいけど、ページをさわったり
ゴソゴソ動かないでね
それでオークションに参加してる
サインになったりするから」
いたずらっぽく彼女が言った
わたしは緊張して
両手をきっちりと膝の上にそろえることにした
絶対うごかさないぞ!
「わたしね、この車が欲しいの」
彼女は赤い車の写真をみせてきていった
・・うん、赤い。
あと,なんか平べったい
そのくらいしか私にはわからなかった
そうこうしているうちに
最後の車になった
本日の目玉というやつなのだろう
あの赤い車だった
そのとき彼女が
スッとゼッケンのように
番号が書いてある紙をあげた
「おー!!僕としては
ぜひ,君に落札してほしいね」
司会の人が、そう
マイクを通して言うと
最前列の彼女に向かってウィンクする
・・・そんなこと
他の誰にも言ってなかったじゃないか!
ほんとうに彼女は有名人らしい
そして値段が釣り上がっていく
会場の札がどんどんと下りて
数がへっていく
とうとう彼女ともう一枚になった
「ワンハンドレッドフィフティサウザンドポンド!」
えーっと、150と千だから
いくらだ??
「ワンハンドレッドフィフティサウザンドポンド!」
150...1000...ポンドだから200円くらいかけて
「エニバディエルス?」
司会の人が会場に向かって
手のひらを差し伸べながらきいている
ちょっと自信がないので
コソコソ携帯で計算してみる
「エニバディエルス?」
15000、、ちがう、、もういっこ0がいるわ
150.千・・✖️200円=
「オーケー!ユーアーザ・オゥナァーーー!!」
3000万円??!
カンカンカーンと
気持ちいいハンマーの音が響いた
オークションが終わった彼女は
「ちょっと話しをしてくるね」といって
どこかへ消えて行った
彼女が競り落とした車は
ジャガーのEタイプという車だったらしい
じつは彼女はもう一台
会場に展示されてる車を
欲しそうにしていたのだが
「えー!どうしようかなー!
でもなー高いしなー!!」
といって悩んでいた
緑色とシャンパンゴールドの
車高の低いその車は
コロンとしてて確かに可愛い
ためしに運転席に座らしてもらうと
ものすごく狭くて
膝が体育座りのようにキュッとして窮屈だった
車のことが分かっていれば
本当に面白かったんだろうとおもうのだけど
・・意外と座り心地が良くないんだなぁ
以外の感想が出てこなかった
彼女はなかなか帰ってこない
ヒマをもてあましたわたしは
カフェの店員さんに話しかけたりして
時間をつぶしていた
「あなたも車に興味があるの?」
店員さんにきくと
「ぜんぜん笑」
と言って笑っていたので
「わたしも笑」
というと、だよねーといって
爆笑していた
「ごめんごめん,遅くなって」
だいぶたってから
彼女が帰ってきた
そして言った
「きいてー!!もう一台も買っちゃったー!!」
・・なんかそんな気がしたんだよなー!!
その車は
アストンマーチン
なんかナンバーがついてたから
レースに使っていた車なんだろう
幾らだか知らないけど
ワンハンドレッドフィフティーサウザンドを
落札した彼女が
高いというのだから
めちゃくちゃ高額なのだろう
「だって!かわいかったんだもん!」
・・女子高生のようなことを言う
値段は、ぜんぜん可愛くないけどな
「どうしよー!ミノリー!
あたし破産しちゃうよー!」
楽しそうに彼女はそう言って笑った
だけど、その彼女の
「お買い物」のすごさを思い知るのは
それからだった
イベントは2日にわたっていたので
一泊、泊まってから
次の日も同じ会場に向かったのだけど
通る人,通る人が
彼女に
「きいたよ!2台も買ったんだって?!」
「あんないい車を、、本当に君はすごいな!」
と,声をかけてくる
まるで,この広い会場中に
名刺を配ったみたいだ
オークションっていうのは
どんだけお得に買い物をするかじゃない
どれだけカッコよく買い物をするかという
場所なんだと思った
その効果は絶大だった
・・お金の使い方って
なんか、なるべく
バカバカしいほうがいいんだな
昨日にまして
次から次に声をかけられる彼女を見て
ぼんやりと私は思っていた
その中には
あきらかにアジア人を見下している人もいた
「で?君は何者なんだい?」
全身で言いながら自分の車の自慢をしていた
・・うわぁーなんか嫌なタイプのお金持ちだー
その時,本当に偶然に
「君に絵を描いてもらった一点もののストールを
オバマ大統領の奥さんのスタイリストが買って行ったよ!」というメールがきた
メールを見て喜んでいる私をみて
その嫌なタイプのお金持ちさんは
ピラッと手のひらがひっくり返って
愛想がよくなった
オバマ大統領というのがテキメンだったらしい
ふん(笑)
やっぱり、誰が買ってくれたとかって
大切なんだな
あのストールはそのあと
いったいどうなったのだろうか・・
実は1日目は恐縮して
縮こまっていたのだけど
2日目は開き直って
堂々と色んな人と話すことにしていた
どうせ私のこと誰だかなんて
誰も知らん
誰も知らんなら
遠慮するより
自信ありそうにしてるほうが
お互い気持ちがよくてお得だろう
「さあ、今日はレースよ!」
人混みを抜けたところで
彼女はそう言うと
広い会場にあるサーキットへ向かった
「耳栓をしてね」
会場に入るとき渡されたグッズのなかに
はいっていた耳栓をつける
小高い丘に登ると
眼下にテレビで見た
丸いサーキットが広がっていた
そしてレースがはじまった
わたしがめちゃくちゃ
驚いたことは
なんと、ほとんどの車が
ゴールできなかったことだった
なにしろクラシックカーはとても古いので
メンテナンスしても
途中で壊れて
リタイアしてしまう車が多いんだそうだ
彼女が応援していた
友達の車も
そうそうに姿が見えなくなっていた
えーっと、あとどの車を応援しようかな
残っている車の中から
お気に入りをさがす
その中から
ボルボルボルボルという
重厚なエンジン音が心地よかった
大きな深緑のベントレーを
応援することにした
飛行機のようなエンジン音が
カッコよかった
がんばれー!と
心の中で応援して
レースをみまもった
・・・最下位だった(笑)
応援してる車が
最下位になっても
こんなに楽しいレースがあるだろうか
彼女がまた知り合いと話すというので
1人になったわたしは
車のメンテナンスを,しているエリアを
通りかかった
あ!
あのベントレーだ!!
そこではレース後に
整備されてる
あの最下位ベントレーがいた
「わたしの1番のお気に入りのベントレー!」
思わず叫びながら駆け寄ると
中からお兄さんが出てきて
笑顔で
「乗ってみるかい?」
といってくれた
えー!!ほんとにーー????
そして、緑の
がっしりした車体に
乗せてもらった
あのエンジン音は
本当に昔の飛行機と同じ
エンジンを積んでいるということだった
すっかりウキウキ楽しんでいたのだけど
すぐに戻ってくるからと言った彼女は
待っても,待っても,待っても
いつまでも帰ってこなかった
・・・もしかして、はぐれた、、?
そう思ったときに
いまさら,そのヤバさに気がついた
わたしの日本の携帯電話は使えない
(あれ?でもメールは受けてたな
ちょっと記憶が定かではないのだけど
とにかく彼女とは連絡がつかない状態だった)
この広い会場で
彼女を見失ったということは・・・
ここはイギリス
しかも車で何時間も走ってきて
ここがイギリスのどのあたりかも分からない
・・もしかして、置いて行かれた?
連れてはきたものの
面倒くさくなったのだろうか
そうだとしても文句は言えない・・
不安すぎて
考えたくない思いがよぎる
もし彼女にそんなつもりがなかったとしても
会えなければ
彼女のほうにも
心配をかけてしまうだろうし
やっぱり大変なことになる
えーーー
ここから自力で
空港まで行って帰らなければ
ならなくなったら
・・どうしよう、、大変すぎる
広い会場は、どこに何があるかも分からない
誰に相談したらいいかも分からない
・・・ほんとにどうしよう
だんだん、あたりの日がかげって
肌寒くなってきた
わたしは,悩んで
悩んで
・・とりあえず
そのへんの
屋台のホットドッグを
食べることにした(笑)
彼女は健康志向で
家で食べるものは
野菜が中心のヘルシーなものだったから
なんかこう
不安な時くらい
ジャンクな肉を
ガッツリ喰らいたいよね!
ガシッとしたパンに
でっかいウィンナーをボン!と置いただけの
無骨なホットドッグを
屋外のテーブル席に陣取って
かぶりつく
・・味がなくて
ぜんぜん美味しくなかった😂
さすがイギリス!!!!
テーブルの上の
塩やら胡椒やらマスタードやらで
どうにかこうにか味をつけて
平らげると
少し元気がでてきた
よし、とりあえず
彼女と仲がよさそうだった
あのオークション会場までいってみよう
たしかボンハム・・みたいな名前が
会場にかがげてあった
ボンハム、ボンハム
Bonhams
これはね、ボナムズとよみます
サザビーズと並んで有名な
オークションハウスらしいです
それもこれもあとで分かったことなのだけど
ボンハム,ボンハムと連呼して
色んな人に道を聞いていると
どうにかこうにか
会場にたどりつくことができた
あたりは真っ暗になっていた
「ああ、君は」
オークション会場で
坊主頭の背の高いおじさんが気がついてくれた
たしか彼女とも話していた顔だ
「どうしたの?今日はもうここは終わりだよ」
優しく声をかけてくれた
たしかに会場は
絶賛片付け中で
椅子を撤去しているところだ
「わたしね、迷ったの!」
彼女とはぐれちゃって
どうしたらいいか分からないの
と助けをもとめると
「わかった、とりあえずそこにいなさい」
といって、どこかに連絡をとってくれたのだろう
結構な時間がたってから
「ここへ行きなさい」と
なんだかよく分からない名前をつげられた
どこだよそこーー(涙)
お礼を言ってオークション会場を出る
イベントの会場はものすごく広い
あたりは真っ暗
目的の場所は名前から察するに
どうやらレストランっぽかったけれど
どこなんだか
全然分からなかった
とりあえず
だんだん少なくなってくる人を
つかまえては聞きながら向かった
もうクタクタだった
そしてようやく
電飾の輝くレストランにたどりつく
すると、そこに
彼女がいた
「ああ良かった」
えーーん!!!!
まさか、こんなに大人になってから
リアル迷子になると
思わなかったよね!
レストランには
彼女の友人だと言う男性が
一緒に食事をしていた
「明日ね、彼に家に来てもらうことにしたの」
いいアイディアでしょ?
と、彼女は言って
いかにいいアイディアかを
説明してくれていたのだけれど
疲れ過ぎて
英語がまったく頭にはいってこなかったので
どんなアイディアなのか
その時はよく分からなかった