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「どうしてコーヒーで絵を描いているの?」

 コーヒーで絵を描いている自分が
 絵を描いていくなかで
 いろいろ体験したことを書いています

コーヒーで絵を描いていると言うと
必ずといっていいほど
きかれる質問です

わたしはこの質問に
長い間、上手く答えることができませんでした

一言で答えないといけないときには
いつも、とりあえず

「そこにコーヒーがあったから」
と、答える事にしています

・・たまに、少しだけ笑ってもらえます


じっさい
初めて描き始めたとき
何があったかというと

もう10年以上も前
あるとき音楽をやっている友人が
アルバムを作るということで

今度のアルバムは
絵本をテーマに作るので
文章を書いて欲しいと頼まれました

「文章??絵じゃなくて??」ときくと

「うん、書いてみて。きっと書けると思うから」
と言ってくれたので

7つの曲に対応した
7つのお話しを
すぐに書いて送りました

ファンタジーのような不思議な世界観で
一見、バラバラの登場人物が
お互いそれぞれのことをやっているのに
それが最後に1つになって
けれど、そのことに
お互いが気がついていない
みたいな話しだったと思います

物語のような、詩のような
短いものだったけれど
とても気に入っていたのを覚えています

(文章は紛失してしまいましたが
アルバム曲の方は、今でも
Apple Musicで聴けるみたいです)

そして

せっかくだからジャケットも描きたい!
と申し出て
自分で絵を描いてみることにしました

そして
物語りのイメージが
アンティークな雰囲気だったことから
古びたような
昔の写真のような雰囲気で絵を描こうと思い
紙を染めようと思ったのです

当時からアルフレッド・スティーグリッツみたいな
古い写真が好きで

グレゴリー・コルベールに
どハマりしていたこともあって

ザラザラした粒子の粗い古びた質感をだすのに
はじめは
紅茶で紙を染めてみようと思いました

これがうまく行かなくて・・

というのも紅茶は
お湯で溶いても色が薄くてのらないし

濡らした紙に茶葉を直接撒いてみたり
色々やってみたものの
思い通りにいかなくて

なかなか上手くいかないなー
とおもったとき

たまたま目の前にあったのが
インスタントコーヒーのボトルだったのです

これならお湯で溶くだけで
色味も調節できるから
うまくいくんじゃないかな

と思ってはじめたのが
コーヒーを手に取った
本当にはじめてのきっかけでした

ちなみに、そのとき描いた絵は
当たり前ですが
すべてが茶色かったので

もう少しカラフルなものを
イメージしていたという
アルバムジャケットには
実際に
採用には至らなかったのですが・・

なぜかそのまま、今にいたるまで
コーヒーで絵を
描き続けることになるわけです

そして冒頭に
「どうしてコーヒーで絵を描いているの?」
と聞かれて

いつも上手く答えられなかったと書いたのですが

なぜかというと
かなりの確率で
「やっぱりコーヒーを飲むのが好きなの?」
「美味しいコーヒー教えて!」
・・ときかれるからなのです

ここで
「コーヒーには豆からこだわっているし
味も極めているよ
いつもオーガニックコーヒーで描いているんだ」
とか言うと
とてもカッコいいかと思うのですが

「インスタントコーヒーが1番描きやすいです」
というと
なぜか皆んなガッカリして
そこで離れていってしまいます

気持ちはとても分かるのですが
ちょっと悲しい瞬間です・・

味にも、こだわらないといけないのかな
とおもいつつ
わたしにとっての
コーヒーという画材は
そのレスポンスの良さが最大の魅力で
気に入っていると言う感じです

うんと濃くすることで
水飴のように固くなり
彫刻のような立体感が出たり

塗り重ねた油絵のような
重厚感がだせたり

そこに
水を加えるだけで
サッと表情を変えて
水彩画のような繊細なタッチまで
何通りもの質感を見せてくれるし

そこで、いちいち筆を洗ったりしなくていいのも
せっかちな自分にぴったりです

後に旅に出る事になるときも
世界中で手に入るという
フットワークの軽さも良かった点の一つです

画材屋のない街はありますけど
コーヒーのない街は
あまりありません

そういう意味では
とても旅向きの画材だったともいえます

そんなことを思いつつも
いつも全部はうまく説明できずに
「なぜコーヒーで描くのか」という疑問を
自分自身が持っていたころに

1番嬉しかった言葉が

「君は絵から出てきたかったから
コーヒーなんだね」

というものでした

わたしのコーヒーの絵を
手に入れてくださった方が
かけてくれた言葉で

「最初にコーヒーで絵を描いていると聞いたとき、
正直言って何の興味も持てなかったんだ。

ああ、変わった事をして
注目されたいのかなって、

けど絵を見たときに違うって思った

この子は絵から出てきたくて
その境界線を越えれるのが
たまたまコーヒーだったら

コーヒーなんだなって」

すごいと思いました
まさに自分が思っていた
言葉にならない思いを
感じ取って言葉にしてくれたと
感激したのを覚えています

わたしは自分自身が絵を見ていて
絵が画面の向こう側というか
遠くにあるのを見ると
なんだか寂しくなることがあるのを
思い出しました

もっともっと絵の近くに行きたい
絵を描いているときは
絵の中に入って触りたいし
描いた絵から
画面を超えて出てきたい
もっと感情に触れたい

きっとそれが
感覚的に
コーヒーを使う
最大の理由なんだと思います

なぜそれがコーヒーなのかは
やっぱり
うまく説明できないのだけれど

コーヒーが自然なものだからこその
色と独特の質感

画材じゃないから
思い通りにいかないところも

そしてなによりも
出来上がった画面から感じる生命力には
いまでも、いつでもドキドキするし
その全部が面白いんだと思います

そして、そのオマケというか
ご褒美のように
画面からはいい匂いがするし

世界中の人が、どこへいっても
「コーヒーで描いているのか!!」と
驚き、喜んでくれます

本当にコーヒーって
世界中で愛されている
特別な飲み物なんだと
感じます

描き始めた
きっかけは偶然だったけれど
いまでも
コーヒーで絵を描いていて
そしてずっと描き続けていて
良かったなと

とても思っています

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