そして流浪の身ふたたび(誰か台本書いてません?)
コーヒーで絵を描いている自分が
絵を描いていくなかで
いろいろ体験したことを書いています
城とクラシックカーにかこまれて
幸せだった時間もつかのま
またしても
明日をも知れぬ身に逆戻り
(↓くわしくはこちら)
「わたしはスイスに
息子に会いに行かなくちゃいけなくなったから
ミノリは日本に帰りなさい」
と,告げられた
なんだよーーー!
なんでみんなして
すぐどっか別の国に行くんだよ!!
(↓そのへんのくだりの詳しくはコチラ)
彼女もなんとかしようと
色々考えてくれて
友人の家やら
なんやらと
滞在先を検討してくれ
一瞬、その家に滞在できるかも
という希望をつないでいたのだけど
やっぱり,その話も
正式にダメになったと
告げられた
えーーーーん!!!
はじめてお茶会をした
あの美しい部屋で
わたしは盛大に嘆いた
わたし日本に帰らないといけないのーー!!!?
・・でも仕方ない
もともと、いつ帰ってもいい旅なんだ
はじめに,行き先を無くしたときに
つぶやいた言葉を
もういちど噛み締める
「とりあえず、隣の牧場へ行ってくる」
なんの解決にもなっていなかったけれど
とりあえず,気分を転換しようと
外に出ることにした
あと数日しか、ここにいられないのなら
彼女が描いて欲しいといった
馬の絵の練習をしたい
あいにく、わたしは
馬の絵を描いたことがないどころか
ろくに生の馬も見たことがなかった
城の隣に牧場があるときいて
わたしはスケッチブックをもって
トボトボと歩いて行く
イギリスの
肌寒くて湿っぽい
重たーい空気が
上着の布に
染み込んでくるような気がした
本当にこの国は晴れないな
白っぽい鼠色の曇り空を
恨めしそうに見上げたけど
それだけじゃ
なにも解決しそうになかった
城から少し歩いたところに
本当に牧場があった
どっちも広すぎて気が付かなかったけど
位置関係からいったら
お向かい,と言う感じだ
牧場の柵沿いに
坂を上がって行くと
馬が遠くにいるのが見える
緑の牧草がきれいだった
でも遠い
よく見えないな
これじゃ描けない
そのとき
金網の破れ目をみつけて
「入っちゃおうか?」と
一瞬おもった
・・もちろん不法侵入だ
なんとなく
さすがにまずいよなーと思い
柵に沿って歩いていくと
しばらくいったところに
正門と見られる
木のエントランスがあって
扉が広くあいていた
扉の横には
白い看板があって
たぶん
「関係者以外立ち入り禁止」
と,描いてある
でも馬が見えそうな柵は
入り口からすぐ目と鼻の先
数メートルといったところだった
うーん
看板が読めなかったふりをして
入っちゃおうか、、
そう、わたしはアジア人
見ればわかる
平らな顔
英語よめませーん!
で、いけないかな、、、、
誰もいないし
ちょこっとだけ、、
そろそろそろーっと
門から2、3歩はいったところで
スケッチブックを広げる
遠くに2頭の馬が
草を食んでいるのが見えた
ちょっと距離はあるけど
さっきの遠目に見えたときよりましだ
シャカシャカと
スケッチをはじめた
当たり前だけど動くから
なかなか描くのは大変だ
もう少し、もう少し近くで見れたらなー
そう思いながら
2頭の馬を描き終えたところで
右側から
ヌッと
とんでもなく美しい
芦毛の馬が顔を出した
えっ!どこにいたの?!
というくらい
突然現れて
トコトコと
至近距離まで近づいてくると
柵からコチラに向かって
顔を伸ばしてきた
恐る恐る手を伸ばすと
おとなしく
鼻の平らなところを触らせてくれる
まつ毛が長い
しばらく無言で
お互い挨拶をしていると
馬はそのうち
ふっと体を返して
ちょうどいいところで止まって
そのまま草を食べはじめた
まるで
「どうぞ、描きなさいよ」
と言わんばかりの
完璧な位置とポーズだった
ありがたい!!!!
わたしは,夢中で
鉛筆を動かした
集中しすぎていたのだろう
突然,後ろから
「ヘイ!!!!」
と声をかけられた
しまった!
不法侵入!!!!
あわてて振り返ると
車の窓から
めちゃくちゃデカいシェパードが
顔を出していた
!?!!!?!!
一瞬,シェパードに
声をかけられたのかとおもった
よく見ると、その奥の運転席に
ほとんどスキンヘッドのような頭に
バンダナを巻いた
サングラスの
かなりボーイッシュな女性が
「何してんの?!」と
声をかけてきた
あの、、ごめんなさい、、
えーっと絵を描きたくて、、、
わたしがゴニョゴニョ言い訳をしているのを
横目に
彼女は
「あ!スケッチブックね!
絵を描いていたの??
見せて!!」
といって手を伸ばしてきた
そして
「ああ、これはあの子ね
これはそっちの子
よく描けてるわ」
といって笑顔を見せてくれた
かなりサバサバしてる雰囲気だったけど
怒っているわけではなさそうだ
「あの、ごめんなさい
入っていいか分からなかったんだけど、、」
というと
「あなた、もっと近くで描きたくない?」
と言って、牧場の
もっと奥の坂の下を
親指でかっこよく指し示した
「わたしが見ていいって言ったって言えば
入れてくれるから」
そう言って彼女は名前を告げると
じゃね、がんばって!
といって
車で去っていった
かっこいー!
お言葉にあまえて
わたしは牧場の坂をくだっていった
坂の下には
ログハウスがあって
また2,3人の女の人がいた
なんだかこの牧場,女の人ばっかりだな
「彼女が入っていいって、、」
恐る恐る
さっききいた名前を告げると
お姉さんたちは
すぐに入れてくれた
「奥の左がポニー、右側に大きいのがいるから」
かまれないように気をつけてね
と言って
送り出してくれる
ほんとに中に入れちゃった
言われた通り
左側の小さなエリアには
たくさんのポニーがいた
そして右側の広い牧場には
ものすごく美しい
真っ白な馬と,真っ黒な馬がいた
きれーーーーい
さっそく描き始める
本当に幸せだった
よく見ると
白い馬は穏やかそうだったけど
黒い馬はかなり気性が荒そうだった
暴れて白い馬を噛もうとしている
あらあらーと見てると
黒い馬はこっちに近づいてきて
「なんだお前!!!」
みてんじゃねえよ!!!と
見慣れない部外者のわたしを
威嚇しはじめた
イカつい馬だ。。
噛まれないようにとはコイツのことか
妙に納得しつつ
日が暮れるまで
たっぷり描いて
お姉さんたちにお礼を言うと
わたしは城に帰ることにした
「ああ、どこにいたの?待ってたのよ!」
城にもどると
ドアを開けたところで
彼女が慌てた様子でかけよってきた
なになに?どうしたの???
玄関先で私がビックリしていると
「泊まっていいって!!!!
部屋が見つかったのよ!!」
と言われた
どゆことーーーーーーー!!!!!
すると玄関先に
ヌッと、ちょっと無愛想な雰囲気の女性が
現れた
小柄なのに、なんだか迫力がある
数日前に紹介はされていたけど
彼女のガチのイギリス英語が
全く聞き取れなくて
会話に苦労した覚えがある
庭師をしている女性だった
「あのね、さっきのあなたの
行くところがないという話し
彼女、窓の外できこえてたんだって」
それで、行くところがないなら
うちに泊まればいいって!!
なにそれーーーーーー!!!!!!
わたしがお茶会をした部屋で
盛大に嘆いていたとき
たまたま庭師の彼女は
すぐそこの、窓の外で
花壇の世話を
していたんだそうだ
それで
私の声がきこえたらしい
・・なんて偶然だろう
これって偶然なのか?!
「私の家はここみたいに
ファンシーじゃないけど」
またちょっとぶっきらぼうに彼女が言った
「2匹の犬と
27匹のチキンがいるわよ
あなた、犬は大丈夫?」
犬・・かぁ!
・・正直いって
小さい頃に吠えられてから
犬は大の苦手だった
ちょっと怖いし本当は苦手だけど、、
いや!ここはがんばろう!!
そのくらい、がんばって克服するしかない!!
「大丈夫!大好きよ!!」
わたしはお腹に力を入れて
そう言った
あと、パートナーがいるわね
正直、ロクデナシだけど
そんな話しもチラっと聞こえてきた気がした
なんだろう、なんだか
また状況が見えないのだけど・・
とりあえず、ありがたいー!!
また、皮一枚でつながった
この旅は、まだもう少し続きそうだ
ねえ、コレってだれか
台本書いてます???
そうしてわたしは
お姫様の城から
2匹の犬と27匹のチキンのいる
森の中の小さな家に
引っ越すことになった