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みの虫

私は病気になる以前一緒に暮らしていた人がいました。

彼は年下でしたが、勤めていた会社での先輩に当たる人でした。彼と一緒に住むことになったタイミングで私はその職場を退職しました。

次の職場は受付の仕事で、入社した翌年に行政のキャンペーンが始まり、その業界が全体的に忙しくなった時期でした。会社ではクレーム対応なども多く、プライベートでは彼とのすれ違いも増えました。

彼は少し古風なところがあり、亭主関白な人でした。優しいけれど、どれだけ忙しくても私にきちんと女性としてあるべき理想を求める人でした。

仕事の忙しさと、家での家事、彼との精神的なすれ違い、価値観の相違…そんな中、結婚の話しもあり、離れて暮らす両親と彼の実家のこと。その時、たくさんのことが私の周りではまるで濁流のように流れていて、ある日身体の中でプツンと何かが切れました。

それは表現としてでは無く、実際そこからしばらく私の記憶はありません。

いつの間にか私は実家の布団にいました。彼は時々私の様子を見に来ます。そして、たまに私の布団の中にぬいぐるみを入れていくのです。

彼は最後のぬいぐるみを私の布団の中に入れると、もう二度と来なくなりました。

彼がいなくなってからの私は本当の冬眠生活でした。ただ布団を蓑にして、ひたすら長くて暗い冷たい冬に耐えました。

私の「みの虫」と言う名前はそこから来ています。でも、それだけではありません。冬眠を終えた「みの虫」は空へと羽ばたきます。

あれから、私はある人の助けをきっかけにたくさんの人の助けを借りることができました。今はやっとまた不器用に羽根を動かしています。

まだ上手に飛べるわけじゃない。

ただ、以前より自分のことを考えるようになりました。考えてみるとこれが意外と面白く、また、人の考えにもとても心動かされるようになっていきました。

今は10年止まっていた時を必死で埋めるようにたくさんの考えに触れ、我武者羅に羽根を動かすように色んな物に手を伸ばしています。

まだまだ、人の助けを借りている私です。こんな私の発展途上な話と私が見ているものをこれからぽつりぽつりと発信していきます。

よろしくお願いします。


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