研究書評 2022年度_Vol.1
原田克己・滝脇裕哉(2014)『居場所概念の再構築と居場所尺度の作成』「金沢大学人間社会学域学校教育学類紀要」第6号,p119-134
若者の社会的孤立の問題を考える上で、この問題の解決のゴールを孤立状態から抜け出すこと、すなわち「居場所を獲得する」ことと設定した時に、今後研究を進めていく上で「居場所」の定義づけが必要となる。そのために、居場所の定義について先行研究から知見を得るため、本稿では原田・滝脇(2014)の論文をとりあげる。
この論文では、学校現場に焦点を当て、不登校問題など、生徒が学校生活における適応に関する問題を理解し、より効果的な適応支援の検討に向けて、居場所概念の再構成及び居場所尺度を開発することを目的としている。
はじめに、数多くの先行研究から、従来の居場所概念の定義と居場所を測定する尺度について取り上げている。それらを踏まえた上で、居場所は、生活の質を高める要因(学校への適応や精神的健康など)に関連し、尺度については、主体が居場所である実感に繋がる要素として、自己有用感・役割感・本来感・被受容感・帰属意識・安心感・自己肯定感が挙げられることが示唆されると述べている。次に、居場所が持つ二つの方向性について述べている。それは、自己実現に向けて自己像や自己概念を明確にしていくための前向きな居場所と、居られない場から逃げ出し安心と回復のために必要な後ろ向きな居場所とされている。また、「居場所がない」という感覚が生まれる背景には、自分の思い描く自己の存在や自分らしさの喪失があると考えられている。すなわち、居場所を実感するときは、生きづらさを感じるなど否定的な自己意識が高まった時であり、居場所を持っている状態のときは、自分らしさを実感している状態であると述べている。
このように、自己を意識したり認識したりする際には、他者との関係性によって自己規定がされるとしており、他者との関係性によって「社会的居場所」と「個人的居場所」とに分類している。これらに関する先行研究を踏まえた上で、本論文では他者存在の有無によってこの二つ分類を再定義している。社会的居場所は、「他者から得られる自己対象に触れることにより、自己の存在や自分らしさを確認できることで自己にまとまりを与える体験ができる場」と定義されている。さらに、前述した居場所感に関連する感覚を踏まえた上で、これは➀承認的居場所、②受容的居場所、③所属的居場所の三つの要素から再構成されている。個人的居場所は、「一人になることで、情緒を安定させたり、自己受容したりすることにより、自己の存在を確認し、自分らしさを取り戻せることで自己にまとまりを与える体験ができる場」と定義されている。そして、④解放的居場所、⑤内省的居場所の二つの要素から再構成されている。
こうして再定義された居場所概念に則り、作成した上記の➀~⑤の居場所の保持の程度を測定する尺度の妥当性を検討するために、18歳~23歳の大学生男女を対象とした調査を行った。その結果、➀~⑤の構成要素の妥当性が確認された。また、A居場所充足群、B社会的居場所不足群、C個人的居場所不足群について、肯定的な自己意識についてはA>B,C、否定的な自己意識については、A<B,Cの結果を示し、妥当であると判断される。他にも、男性より女性の方が社会的居場所が多いこと、一人暮らしをしている人の方が同居している人よりも受容的居場所と解放的居場所が多いことも結果として得られた。
以上の調査結果から、尺度の妥当性が確認され、学校現場において生徒が抱える様々な問題への対応に活用していくことが今後の課題とされている。
この文献を通して、居場所の概念が大きく二つに分類されること、また、その妥当性が確認できたことは、今後自身の研究を進めていく上での成果であると考える。一方で、今回明らかになった社会的居場所と個人的居場所の性質の違いから、居場所の獲得には、それぞれについて異なる対策が必要であると考えられる。したがって、両者の違いを考慮した上で、今後自身の研究で扱う居場所の性質・定義を再考することが課題となる。また、前回テーマとして掲げた社会的孤立の内容の細分化と対象の設定、地域間での比較の妥当性についても今後考えていきたい。
中藤信哉(2011)『青年期における居場所についての研究』「京都大学大学院教育学研究科紀要」第57号,p153-165
居場所概念について、他者との関わりの有無によって「社会的居場所」と「個人的居場所」の2つに大別されることが前回より分かった。そこで今回、他者との関わりを含む「社会的居場所」に焦点を当てていきたい。これは、社会的居場所の定義における「自己の存在や自分らしさを確認できる」という部分から、アイデンティティの形成との関連性がうかがえるからだ。今回の書評では、社会的居場所における自己形成の性質及び、それらとアイデンティティの問題との関係性について検討し明らかにすること、そして、青年期における居場所の必要性と重要性を確認することを主たる論文の選択理由とする。また、前提として、本論文で論じられている居場所は「他者との関係において形成される居場所」と示されており、すなわち「社会的居場所」である。以下で述べる「居場所」は全て「社会的居場所」を指すものとする。
まず、本論文では青年期における居場所を論じる意味を次のように述べている。それは、青年期が社会的要素の多い以降の時期であることだ。思春期から成人への移行段階にある青年期においては、個人にとって過去と将来が社会的要素を伴って交錯し、ときに自己の混乱を生む可能性がある。こうした移行段階では、その過程を支える拠り所となる居場所の存在が重要だと述べている。また、居場所における作業が、個人にとって自己形成の側面を持つこと、そしてその自己形成にとってはアイデンティティの確立が重要であることも指摘している。本論文は、居場所の存在とアイデンティティ形成がどのように関連しているのかを検討することが主な目的とされている。
続いて、居場所における自己形成が持つ性質について、以下の2つが述べられている。1つ目に、個人が自分の存在の連続性を実感するには居場所は継続的なものである必要があるということだ。2つ目に、「ありのまま」の自分は、他者との共感的な関係を通して、受容され肯定されることで保証され、主体である「私」の存在を実感していくことができるということだ。すなわち、自己形成の場は、継続的であり、共感的・受容的な他者が存在する場において成り立つことが分かる。
こうした性質を持つ居場所における自己形成とアイデンティティの感覚との関係については次のように述べられている。まず、アイデンティティの感覚は、自分自身が連続してあることと、自分と他者から見られる自己が一致していることによって支えられているということだ。また、アイデンティティの主観的感覚として4側面(「自己連続性・斉一性」・「対他的同一性」・「対自的同一性」・「心理社会的同一性」)に分類した上で、居場所において他者とのかかわりを通して、自分の存在の連続性を実感することは、アイデンティティ感覚のうち「自己連続性・斉一性」・「対他的同一性」と関連が深いものであるということを明らかにしている。
以上より、本論文から、居場所の持つ自己形成の場としての性質、及びそれらとアイデンティティの感覚との関連性が明らかにされたことは、青年期における人との関わりを含んだ居場所の重要性の再確認に繋がったと考える。一方で、論文中ではアイデンティティの形成・確立段階と居場所の関連性については論じるまでには達していないため、アイデンティティの形成過程で居場所形成がどのように関わっていくかどうかは別途での検討が必要になるだろう。
【補足:アイデンティティ感覚の4側面の意味について(谷,2001より)】
「自己連続性・斉一性」…自分が自分であるという一貫性を持っており、時間的連続性を持っているという感覚
「対他的同一性」…他者からみられているであろう自分自身が、本来の自 分自身と一致しているという感覚
「対自的同一性」…自分自身が目指すべきもの、望んでいるものなどが明確 に意識されている感覚
「心理社会的同一性」…現実の社会の中で自分自身を意味づけられるという、自分と社会と の適応的な結びつきの感覚
津富宏(2014)「地方の若者就労支援の現場からみる若者と家族の課題」『家族社会学研究』26 巻 1 号 p13-18
この論文では、静岡県における若者の就労支援において、働きたいけど働けられない若者とその家族が孤立化しがちであるという問題に対していかに乗り越えるかを課題としてとりあげている。ここでは、以上の課題に対する一つの政策として存在する「静岡方式」の実態、また、特に家族の孤立を乗り越えるための「家族戦略」について述べられている。若者の孤立化に対する支援・政策の先行事例に関する知見を得ることを主な目的として、この論文を選択する。
まず、論文中において、静岡方式は「一般市民のネットワークによる、働きたいけれども働けない若者を、一般市民のボランティアが伴走しつつ支援する、就労支援の手法」と説明されている。NPO 法人青少年就労支援ネットワーク静岡(以下、SSSNS)が平成 17 年頃から徐々に完成させたもので、現在は静岡県内の 100 名近いジョブサポーターがボランティアとして活動している。筆者は、この静岡方式の持つ特徴を 2 つ挙げている。1 つ目に、「リカバリー志向」である。これは、働きたいけど働けない若者の多くが精神障害を抱えていることを前提に、彼らの伴走型就労支援方式 IPS の原則(※1)から明らかにされるものであり、静岡方式はこれを指導原則としている。IPS は、本人は就労準備のための訓練を経由せずに、一般の職場で働きだすことが可能であるという、本人のポテンシャルに対する信頼を基盤として成立している。2 つ目に、「地域志向」である。地域志向をもとに静岡方式が持つ 3 つの特徴として、➀就労支援のための場を持たないこと、②支援者は一般市民であること、③お節介(他者を見捨てない包括的な)地域を創ることが挙げられる。このように、SSSNS での活動は、地域において地域の力で地域のためのものであるとされ、従来のように本人にのみ焦点を当てる就労支援方式とは違い、それを支える地域に焦点を当てている点が静岡方式の特徴である。これは、公助と自助が機能不全にある現状下で、地域を創り直さない限り雇用による若者の社会的包摂は困難だという考えに基づいている。
次に、若者本人と家族の戦略及び地域と静岡方式による対処についてみていく。若者本人と家族は、他者からの否定的な評価を回避することで、自らに誇りを感じられる存在としてのアイデンティティを守ることを最優先にした「家族戦略」をとっている。現状のプライドを保持するためのこの戦略は、若者本人の場合は家族内における孤立化に、家族の場合は地域内における孤立化につながるとされている。こうした戦略に対して、プライバシーの壁や若者・家族のニーズや期待との齟齬により、地域行政は適切な対処ができていない現状にある。一方、SSSNS がつながった場合は解決策が見通しやすく、彼らのプライドに比較的邪魔されずに支援が展開できるとされている。SSSNS の静岡方式は、全県各地にボランティアを配置し面的展開をすることで、若者の支援へのアクセスコストを軽減する工夫をしている。また、静岡県では地域の流動性が低く、年配者に社会関係資本(コネ)が蓄積していることから、年配者がもつコネを孤立する若者や家族に移転・共有するため、SSSNS では年配のボランティアも多く活動している。
最後に、論文内では理想的な家族戦略として、複数の家族間連帯により、子ども・若者の支援団体に転化することで、家族の孤立化を解消するということが提案されている。
この論文を通して、孤立化に対する自助及び公助の限界・困難さが指摘されるとともに、課題解決に向けてはボランティアなどをはじめとして地域の人々の間で支え合う共助が大きな可能性を持つことが明らかになった。一方、自助・公助の限界や困難さを示す具体的事例、孤立化に対する行政の対策の実態、働きたいけど働けない若者が精神障害を持つとする根拠が論文内では十分に分からないこと、また、静岡県という特定の地域を対象とした事例であることが、不足点であると考える。今後、こうした不足点を明らかにすることを目指して文献選びを行い、研究を進めていきたい。
※1:IPS の原則(Becker and Drake 2003; Drake et al. 2012)
1除外される人はゼロ:適用基準は当事者の選択による
2援助付き雇用は他の支援サービスに統合される
3一般就労がゴールである
4個別の給付金受給相談が重要である
5迅速な職探し:当事者が働くことに興味を示したら、すばやく職探しを始める
6就労後のサポートを継続的に行う
7当事者の好みが重要である
山本耕平(2009)「若者のひきこもりを精神保健福祉課題としてどう同定するか」『立命館産業社会論集』第 45 号第 1 号,p15-33
この論文を選択した目的は、前回の不足点として挙げられた「働きたいけど働けない若者が精神障害を持つとする根拠」についての補足をすることである。論文では、若者のひきこもりが社会的課題となるなかで生じている適応主義的支援とその背景にある先行研究を批判的に検討した後、ひきこもりの若者がもつ生きづらさの中核を明らかにすること目指して、取り組む精神保健福祉的実践課題を提起することが目的とされている。今回は、中でも「ひきこもりと精神医学」及び「ひきこもる若者のもつ社会参加の困難さ」に着目し、書評を行うとする。
初めに、精神医学的視点からひきこもる若者の持つ精神障害について検討している。若者のひきこもりは、それら論じてきた精神医学者や臨床医たちによって、臨床増や精神科学的背景が明らかにされてきた。その一つに、「ひきこもりシステム」論が挙げられる。これを提起した斎藤環(2003)によると、「個人・家族・社会それぞれの境界で誤解と葛藤,罵倒と断絶のみが生み出され続け、それぞれのシステム内部において悪循環が生じるディスコミュニケーションを再生産するシステム」と定義されている。個人の中で生じる悪循環を神経症レベルで捉えると、ひきこもり状態に伴う対人恐怖症と強迫症状があり、これらの症状は社会との接点が欠如することさらに助長されると述べている。他の研究では、ひきこもり問題の背景要因を「脳と心」と「環境」に大別し、脳と心の問題を「生物学的要因=精神疾患、発達の遅れ・偏り」「心理的要因=思春期的な防衛機制、スキゾイド・ジレンマ、自己愛的な傷つき、アイデンティティ拡散症候群」の2つに分けて考えられている。
これらの先行研究は、精神医学的関心からのものであり、若者と社会との関わりについての分析は不十分であるが、こうした研究からひきこもりの若者がもつ精神障害についての詳細は明らかにされているといえるだろう。
続いて、ひきこもる若者の持つ社会参加の困難さについてである。論文内では、ひきこもりの若者がもつ中核的な障害を次の 5 つに分けている。それは、関係障害(他者との関係を主体的に紡ぐ力の障害)、日常活動への主体的参加の弱化、身体機能の低下による社会参加困難、就労獲得の困難さ、低い自己尊厳と反社会的行動である。特に、就労獲得の困難さに関して、若者のひきこもりは 1990 年代に社会的課題として台頭し始め、1990 年代から続く不況下において、自己実現の手段としての職業選択という理想が後退しフリーターの増加に繋がったとされている。さらに、財団法人社会経済生産性本部による「ニートの状態にある若年者の実態及び支援策に関する調査研究」(2008年3月)からは、ここでは一般的な対人関係を含めコミュニケーションの苦手意識は、ニート状態にある若者で広く共通する特性であることが指摘されている。また、1990 年代以降、経済、教育、社会のいずれの場面においても、個性を重視し主体的な選択による自己実現を当然とする風潮が強まっていき、こうした風潮に順応し努力できる人もいる一方、自己実現への絶望や疲弊を持つ者も一定数いることが、ニートが増加した背景だと指摘されている。
以上より、ひきこもりの若者が直面する障害の一つとして、就労獲得の困難さが挙げられ、これらは 1990 年代以降の景気後退や自己実現に対する風潮の変化といった社会的背景との強い関連性があることが分かった。これまで、若者の孤立化問題に対して、主に本人とそれを取り巻く環境という比較的ミクロな視点から考えてきたが、今後はそれに加えて社会全体の変化というマクロな視点からその影響も踏まえて検討していくことが必要だと考
える。
増淵裕子(2021)「貧困や就労困難等の問題を抱える若者たちへの支援」『青年心理学研究』33 巻 1 号 p75-81
〈選択理由〉
今回取り上げた文献は、日本青年心理学会研究委員会企画のシンポジウム記録である。当委員会では、3 年 1 クールとして設定された長期的テーマをもとに、各年で短期テーマを立てている。今回の記録は、「青年期から成人期への移行の多様性」という長期的テーマのもとで「貧困や教育格差などの問題を抱えた青年に希望はあるのか」という短期的テーマを掲げ、若者たちの背景と現状、それに対する政策や対策について議論されたものである。前回までの書評を終えて不足部分として挙がった、「若者の貧困と就労問題の背景」及び「若者支援の政策事例」についての知見を得ることが、文献の主な選択理由である。
〈内容〉
まず、日本の若者の状況として、➀高等教育の大衆化→親への依存の長期化→晩婚化・非婚化・少子化、2(社会経済的視点から)高度経済成長期・バブル期→バブル崩壊→労働市場の不安定化→自立や就労に問題を抱える若者の増加、という流れがある。また、若者の貧困・就労の背景としては〈戦後型青年期モデルの成立と崩壊〉が挙げられ、4 つの時期に区分される。第一の戦後復興期には、教育が大衆規模で拡大した。第二の高度経済成長期には、教育水準の上昇・拡大と製造業の躍進により、日本型雇用制度(新規一括採用、年功序列、終身雇用、学歴主義化)が確立した(戦後型青年期モデルの成立)。第三の移行期には、学生期が長期化した(高校進学率が 9 割、大学・短大進学は 3 人に 1 人)。さらに、この 1980 年代のこの時期から、サービス経済化によってパート・アルバイトの急増、フリーターの誕生、教育現場での受験・学歴競争、いじめ、不登校などが問題となるようになった。第四の構造転換期には、バブル景気とその崩壊の影響で、IT 革命と経済のグローバル化による日本型雇用の崩壊と再編、就活状況の悪化による学校から仕事へのストレートな移行型の崩壊が起こった(戦後型青年期モデルの崩壊)。さらに、バブル崩壊後(1990 年代半ば以降)は、学歴による労働市場の選別化や若者の二極化が起こり、フリーターやニートが増加し、格差が拡大した。2000 年代には、親の所得減少を背景に、貧困家庭とそうでない家庭で二極化し、学校現場では複合的な困難を抱える生徒が目立つようになった。そして、学校にも職場にも帰属できない若者が急増した。
こうした流れの中で、2000 年代以降、若者の問題が認識され、若者たちの自立と就労支援のための政策が動き始めた。若者支援の過程で、労働市場で不利を経験している若者が、学校現場や家庭内において多様な問題を抱えていることが明らかになってきた。内閣官房社会的包摂推進室の分析より、社会的排除に陥るキー・リスクとして➀本人の持つ生きづらさ、②家庭環境の問題、③学校や職場の問題が挙げられており、若者支援機関にたどり着く若者の多くが孤立無援の状況にあるといえる。
続いて、貧困と格差に向き合う地域づくりの活動事例としてNPO法人「さいたまユースサポートネット」の取り組みが挙げられている。現在、人間が共生していく社会をつくるための地域社会のネットワークやコミュニティの構築に向け「人の共生と社会の統合」というミッションが考えられている。主な取り組みの一つとして、若者・子供たちの居場所である「たまり場」が挙げあれる。ここでは幅広い年代のボランティアが、子供たちの話し相手になったり勉強を教えたり相談に乗ったりする場となり、様々な複合的要因を抱えた子供たちを受け入れている。長期化する可能性の高い子供たちの無力感を防ぐためには、成功体験が大切であり、そのために自律性の感覚及び自己効力感の形成、仲間から受け入れられる経
験を積み重ねる必要がある。しかし、現在の行政の支援制度では不十分であるため、子どもたちの年代に沿った必要な支援を、地域社会で作っていく必要があるとしている。
〈総評〉
今回、文献の選択理由として挙げた「若者の貧困と就労問題の背景」について、戦後まで遡って確認できたことが大きな収穫となったと考える。これまで若者の社会的孤立の問題に対して断片的に考えてきたが、より広範な視点から社会全体の変化がどのように影響して現在の状況に至るのかを確認できたためである。また、さいたまの支援活動事例では、若者・子供たちに社会的居場所を提供することが果たす役割について再確認できた。
今後は、本文内でも指摘されている行政の制度の不十分さについて確認するため、現在行政が困難を抱える若者・子供たちに対してどのような支援制度・法律が施行されているのか詳細を見ていきたい。
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