東京駅で買ったいちご大福との出来事

徳山へと向かう東京駅の構内で、いちご大福を買うことにした。その直前にはラーメンを食べており、全然お腹は空いていなかったのだけど、どうしても新幹線でいちご大福を食べたかったのだ。新幹線の中でちょっと美味しいものをおやつとして頂く。ちょっとした旅の贅沢を楽しむために、こういった駅での出費は欠かせない。

東京駅構内は知らぬ間にリニューアルされまくって、まるでダンジョンのようだったが、そんな罠にはかからないぞ目指すはいちご大福。まっすぐ向かうは以前から存在する和菓子ゾーン。流行っているのか流行っていないのか、いつも微妙な雰囲気を醸し出している和菓子ゾーン。この日も、大混雑しているエキナカで、まったく待つことなく、いちご大福と巡り会えた。
「これは冷凍ですか?」「冷蔵です。保冷剤いれますか?」「いえ、いいです。すぐ食べられますか?」「はい、食べられます」
……なんて会話をしながら(いや、すぐ食べないし。なぜ私は保冷剤を断っているのだ)と考える。いつも心と言葉は裏腹だ。買い物すら思い通りにできない。
「ありがとうございます」と手渡らされたいちご大福。まさか、個包装のままで、手提げ袋さえも頂けないのか! しかたなく、ハンドバックの一番上にいちご大福を置く。落ちないように、つぶれないように、ベストポジションを探し出して、置く。くう……カメラにパソコン、キャリーバッグと荷物の重さで心折れそうなときに、いちご大福がつぶれやしないかという心配りまで求められることになろうとは。

それでも私は頑張った。いちご大福をつぶすことなく、運びきった。なんとか指定席に座ると、丸い形のいちご大福を窓枠にのせて新幹線は走り始めた。

1時間たったところで考える。
お腹が全然空いてこない。しかし、このいちご大福には保冷剤をつけていない。いったい、いつ食べればいいのか。
もしやこのまま放置したら、中のいちごから水分がしみ出して、べちゃーとなってしまうのではないだろうか。水分過多な大福など、おいしくないに決まっている。食べたいのは、フレッシュないちごの果実ともっちもちの皮とのコラボレーションとかマリアージュとか、そんな感じの世界なのに。

ここで問題が起きた。

考えながら、いつの間にか寝落ちしてしまったのだ(マジです)。言葉だけでなく、睡眠すら自在にコントロールができないって、どれだけ老化もしくは幼児化しているのだ……! ハッと目覚めたら、東京から名古屋まで到着している。ついにドラえもんが新幹線をどこでもドアに通したに違いない。
窓際に置きっぱなしのいちご大福はというと、東京駅のときと変わらず、ビニールの皮に包まれて、時空の歪みなど存在しないかのように凜と佇んでいる。

タイミング良く、「ホットコーヒーにアイスコーヒー……」と車内販売の声が聞こえてきた。まさに神さまが与えしタイミング!「ほ、ホットコーヒーください!」寝起きの頭で、必死に車内販売のお姉さんにすがりつく。

テーブルの上に、ホットコーヒーといちご大福。なんということだ、新幹線で和菓子カフェが完成したではないか。寝ぼけなまこにとって、少し崩れたいちご大福と車内販売クオリティのコーヒーは、最高のおめざとなった。

※反省
次からは絶対保冷剤をつけてもらうんだ……。

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