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みんなのジェンダー勉強会#4「ジェンダー平等と父親の育児休業の国際比較 」回レポート

みんなのジェンダー勉強会は、「ジェンダーに問題意識を持って自分なりに学んできたけれど、一度体系的に学んでみたい」「同じように関心を持つ仲間と一緒に学ぶことで、学びを深めたい」。
そんな方のために、有志で始めた自主勉強会。

京都大学の男女共同参画推進センターが無料公開中の「ジェンダー論」8つの公開講座(https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/activity/ilas_seminar/)を題材に、オンラインで勉強会を開催しています。

11月21日、4回目となる勉強会を開催しました!
今回の題材は、甲南大学中里教授の「ジェンダー平等と父親の育児休業の国際比較」です。

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育休取得率88.3%のスウェーデンと、やっと12.56%の日本

父親の育児休業といえば、記憶に新しいのは、今年6月に改正育児介護法が可決したことでしょう。今回の法改正によって大きく変わるポイントの一つは、企業に対して以下が義務化されること。

雇用環境の整備
個別の周知・意向確認

これまで「本人の申し出」がなければ企業側から制度説明をする必要はなかったのですが、今後は、当該社員に対して「あなたは育休を取る?」と意思確認をすることになるのです。男性の育休取得のハードルの一つである「育休を取得したいけれど会社に言い出しづらい」ことを解消したいという狙いがあります。
この実質的な「男性育休義務化」については賛成意見も反対意見も含めて大きな話題になりました。その背景にあるのは、男性の家事育児参画への価値観が、今まさに社会全体で変化している過渡期だからかもしれません。

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厚労省の調査によると2020年度日本の男性の育休取得率は12.56%
20年前の2000年度の取得率が0.42%であり、そこから2007年、2010年、2014年に育児休業法の改正を経て少しずつ取得率は上昇しているものの、女性の取得率が8割以上であることと比べると、まだまだ低い水準です。

他国では男性の育休取得状況はどうなっているのでしょうか。
講座では、スウェーデンとドイツの実状について解説がされました。

法改正によって男性の育児参画を推進した国

スウェーデン
スウェーデンには有名な「パパクウォータ制度」という制度があります。

この制度では、父親に一定の育児休暇日数が割り当てられており、割り当て分の休暇を利用しなかった場合は権利が消滅するという仕組みになっています。制度導入がきっかけとなり、2004年には男性の育休取得率は88.3%になりました。

2004年と統計データが古いのは、もはや「男性が育休を取ることが当たり前」の社会になって、取得率を追跡する必要がなくなったからです。北欧では育休取得率がジェンダー平等指数のひとつであり、次のステップとして取得日数の平等化を目指しているのです。

ドイツ
2007年に育児休業制度が改正され、育休中の給付金の額を大幅に引き上げる「両親手当」が創設されました。これにより、2006年に3.5%だった取得率は2015年には過去最高の35.8%にまで上昇。3人に1人が育休を取得するようになりました。
あまり知られていませんが、法改正前のドイツでは性別役割分業意識や3歳児神話が根強く、女性に育児の負担が偏る上に保育所不足も重なって、女性が出産後も働き続けるハードルが高いなど、今の日本と似た状況だったそうです。
法改正をめぐっては「家族の在り方に国が介入すべきではない」という激しい議論も巻き起こる中、若い世代から「男女ともに子育てに関われる社会を目指したい」という声が高まったことが、新制度制定の後押しとなりました。

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日本において育休を取得した男性は❝パイオニア❞

このようにスウェーデン、ドイツにおいては法改正が男性の育児参画推進に大きなインパクトを与えました。先述の通り、日本もより男性が育休を取得しやすくなるよう育児休業法が改正されたばかり。今後の取得率の上昇は期待ができるかもしれません。
しかしながら、法改正をする前の日本の育児休業の制度も「先進国では唯一男性が6か月以上取れる」など、世界各国と比較しても充実している内容でした。
それにもかかわらず、これまで男性が育休を取得しなかった背景にはどんな理由があるのでしょうか?

講座では、男性の声として「職場に制度がない」「職場に迷惑がかかる」「復帰後の業務評価が心配」「育児は母親がするもの」「所得補償の少なさ」といった要因が紹介されました。

このように、職場を長期間離れることに対して、キャリアや収入面から不安を感じている男性が多いことがわかります。
ただし「職場に制度がない」というのは実は誤解で、法律上は男女ともに育休を取得することが可能です。
そもそも男性自身に「育休を取りたい」という気持ちがなければ、職場の制度を調べたり、懸念点を解決するための具体的なアクションをすることがない、というのが実情なのでしょう。

また、“単独”で育休を取得した男性6名へのインタビューからわかったことも紹介されました。

育休を取得した後の意識や行動の変化を聞いてみると、家族との関わり方としては、「専業主婦の大変さを理解した」「家事育児を自分の責任としてとらえるようになった」、仕事に関しては、「仕事を効率化して定時帰宅するようになった」、「同僚や顧客への理解が深まった」といった回答が得られたそうです。
このような男性側の家事育児・働き方への意識・行動のポジティブな変化は、必ずしも妻の継続就業に結びついているわけではないものの、「妻側のキャリアの選択肢が広がり、再就業の可能性が高まっている」と結論づけていました。

一方で、講座ではこのような男性はまだ一般的ではないという意味で「パイオニア」と表現。

男性育休がもっと広がっていくためには、「数少ないパイオニアの影響が広がるのを待つ」ことと、「父親の育休取得が“得になる”、あるいは取得しないことが”損になる“仕組みへの転換が必要

とお話されていました。

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講座外情報
~育児介護休業法改正までの道のり~

ファシリテーターの新井さんからは、講座外情報として育児介護休業法の改正に向けて、勤務先の株式会社ワーク・ライフバランス男性育休プロジェクトでどのように政府やキーマンに働きかけ、どのように世論に働きかけていったかの道のりの共有も。

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厚労省のイクメンプロジェクトが開始したのは2010年。
2020年に男性育休取得率13%」を目指して男性の育児参画の必要性について周知活動をスタートさせたものの、2018年の時点での取得率はわずか6.2%。この現状に危機感を募らせたメンバーたちが作戦会議をするようになったのが2018年の12月でした。

そこから、たくさんの政治家の方に男性育休の推進の相談をしに行ったり、経済界からの後押しも得るべく企業トップから男性の育休推進へのコミットを引き出したり、メディアを活用して世論に働きかけたりと、それぞれの方法で法改正への土台を固めていったのです。そこまでして男性の育休推進をすすめていったのには、大きな理由がありました。

「産後の女性の死因の1位は自殺」
女性は産後のホルモン変化によって気持ちの浮き沈みが起きやすく、そこに赤ちゃんとの不規則な生活が重なることにより、産後の女性の10人に一人は産後うつを発症すると言われています。このピークは産後2~4週目頃。
この期間に男性が育児に関わり、育児を女性だけのものにしないことが、産後うつ、そして悲しい自殺や子どもへの虐待を防ぐことにもつながります
つまり男性育休は「男も家事育児をするようになった」という価値観の変化の話ではなく「妻と子の命を守る」という話なのです。

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こちらをもとに数人ずつに別れてのディスカッションタイムへ。
各グループで議論された内容をご紹介します。

自分も家事育児に関わりたいという学生は多いのに、社会人になると「できない」という気持ちになってしまうのはなぜだろう。
上司だけをみて社会や、お客様を見れなくなってしまうのだろうか?
日本には行政主導の父親センターはなく、その役割を今は民間が用意している状態。
そもそも法的根拠が「母子保健法」だから、男性の子育てサポートのための法的根拠が薄いのかも。
男女の家事分担意識は地域差がありそう。自分の住む地域はまだ封鎖的な雰囲気だけれど、他の参加者の地域では、ショッピングセンターにあるおむつ台のほとんどをお父さんが使っているという話に驚いた。
学生と接していると、悩みの根本に家庭問題があることも多い。夫婦のパートナーシップ、話し合いも常に行われる家庭であることも必要ではないか。その時間を作ることもスキルのひとつ。
育休制度についてきちんと理解してる人、誤解をしている人がいる。例えば「育休中は会社から給料が出ている」という誤解から、不必要に育休取得者を攻撃する人もいるのではないか。当事者にならないとアンテナが立たない分野だから、情報のギャップを埋めていくことも考えたい。
会社として動くにはどうすべきか。機関投資家がジェンダーギャップ指数を重要視していることも、ひとつの外圧になるかもしれない。
自分も介護で休みを取る。育休に限らず、色んな事情で休みを必要とする人が休みを取れる職場でないといけない。育休の問題は、育休だけの問題ではないということに気づいている人はまだまだ少なそう。

これまで「育休は女性だけが取得するもの」という価値観だった社会が、「女性も、男性も育休を取得する社会」へ移りつつある今。新しい価値観に触れ、男性だけでなく女性にとっても戸惑うことや、自分のものさしでは測れないことも増えてくるかもしれません。
けれども、男性の育児参画が当たり前の社会は、きっと家庭に対してこれまでにない幸福や喜びをもたらしてくれるはず。
そんな期待を心の中で抱きながら、勉強会終了時間後も、熱い議論は続きました。

次回の勉強会開催予定

日程:2022年2月6日(日)10時~11時半
次回は、一度京大の動画講座から離れて、「情報生産者になってみた ――上野千鶴子に極意を学ぶ (上野ゼミ卒業生チーム、ちくま新書)」をテーマに勉強会を開催します。

ご関心のある方、ぜひご参加ください!

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