インバスケット演習で部下に依頼してダメなこと
インバスケット演習でかなり見かける「確認・調査」
今回のコラムはかなり短めです。
インバスケット演習で「確認をお願いします」「調査をお願いします」といったアウトプットは基本的に低い評価に留まります。案件の中での不明点、つまり運営側やケース作成側が問いたい部分について確認、調査で終わってしまっては分析や創造など「考える力」のコンピテンシーの評価が不可能になるからです。
例えばこんな感じ…
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早川さん
全国145店舗のリニューアルの必要性について確認・調査をお願いします。報告は私が着任する日にお願いします。
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いかがでしょう。おそらくこの案件は、関係者から当事者である【あなた】にリニューアルの必要性について問い合わせがきているといった内容かと考えられます。
インバスケットの作成者やアセッサーは、この案件で「分析」「創造」「計画」「決断」といったコンピテンシーを確認・評価しようと目論んでいるのに、このようなアウトプットは全くのゼロ回答、評価したくても評価できないことをご理解いただけるのでは?
一方、特にこの確認・調査についてかなり細かく記述する受講者の方も中にはいらっしゃいます。
例えばこんな感じ…
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本間さん
全国145店舗のリニューアルの必要性についての個別判断をお願いします。リニューアルは「全面改装(移転含む)」「レイアウト変更」「店舗什器の入れ替え」「床や壁の張替え」「特別清掃」の5段階で報告すること。ただし各店舗の店長の意見は参考に留め、あくまで〇〇さんが最終個別判断を行うこと。当然、最終個別判断の根拠は必要です。同時にリニューアルによる店舗利益へのインパクトを1ヶ月・3カ月・1年単位で報告してください。この場合、全国145店舗の各リニューアルについて休業期間の見込みを算出、そして売上損失も当然ですが織り込んでください。各リニューアルの費用概算も必要ですが、こちらはグループ会社にリニューアルを依頼した場合と新規のベンダーに依頼した場合の2路線でお願いします。新規のベンダーについては、なぜそこを選定したのかの理由も付してください。なお、新規のベンダーから上がってきた概算値をグループ会社に通すべきかの判断はお任せします。お手数ですが私が着任する日までにお願いします。
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いかがでしょう。シンプルな確認・調査であれば分析や創造は低い評価に留まりますが、このレベルの確認・調査であれば分析や創造、そして計画も高い評価となる可能性が高まります。
「確認・調査」の構造にする意味は?
この本間さんへの確認・調査の指示ですが、分析や創造、計画については6段階評価で【5】以上となりますが、残念ながら「決断」については【4】をキープできるかなといった水準です。
そこでもう一度、以下を考えてみます。
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早川さん
全国145店舗のリニューアルを実施します。開始時期は2カ月後、着任日にリニューアル計画の策定に向けた会議を開催します。
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いかがでしょう?
分析や創造、計画については6段階評価で【3】以下となりますが、「決断」については最低でも【4】になります。
そこで前にあった本間さんへ指示文を次のようにリライトしてみましょう。
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本間さん
全国145店舗のリニューアルを実施します。
リニューアルは「全面改装(移転含む)」「レイアウト変更」「店舗什器の入れ替え」「床や壁の張替え」「特別清掃」の5段階で実施します。
この段階の見極めに向け、各店舗の店長の意見を参考にしたいので、着任後、ただちに店長向けのヒアリングを開始します。ヒアリングの形態はWebアンケート形式、内容はシンプルに以下の2点とします。
・リニューアルの5段階の要望
・その理由
同時にリニューアルによる利益へのインパクトを1ヶ月・3カ月・1年単位で試算します。この場合、全国145店舗のリニューアルについて上がってきた5段階の要望をもとに休業期間の見込みを算出、そして売上損失も当然ですが織り込みます。各リニューアルの費用概算も必要ですが、こちらはグループ会社にリニューアルを依頼した場合と新規のベンダーに依頼した場合の2路線で今後、考えます。新規のベンダーについて、そこを選定した理由も明らかにする必要があります。なお、新規のベンダーから上がってきた概算値をグループ会社に通すべき必要はありません。
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いかがでしょうか?
内容に大きな違いはありませんが、前者は「確認・調査の依頼」、後者は「案件についての具体的な所信表明」、そして決断は間違いなく【4】、他の案件や他の演習との横串によって最終的に【5】となる可能性が大きくなります。
ただ、デフォルメしてリライトしたので「計画」が弱含みとなりますね…。
なのでそこはカバー、「各リニューアルの費用概算も必要ですが、」から始まるダラダラ文章を、もともと前の構造であった「依頼」のトーンで記述すれば「計画」が評価される内容に変化していきます。
思い込みの怖さ
インバスケット演習で記述する内容について、受講者の皆さんは「部下などに対する指示や依頼」と思い込んでおり、インバスケット演習の構造も「あなたはこの後、約1週間、職場を離れます」になっている点がそこを後押ししています。これが確認・調査の指示に結び付く背景なのかもしれません。
だからといって案件のポイントを全て確認・調査とするのはNG、また、確認・調査の内容をかなり細かく記述したとしても、「決断」のコンピテンシーだけは低くなってしまう恐れがあります。
「現時点(案件処理をする日)で物事を決めてはいけない」と思い込んでいる受講者の皆さん、インバスケット演習では決めた仕事がいかなる結果になろうとも責任を問われることはありません。解答の前半で「案件についての具体的な所信表明」、後半で「確認・調査の依頼」、この簡単な構造にするだけでアセッサーからの評価は変わります。どうぞご参考に…。
受講者の方からのご質問などは以下のサイトから
どうぞよろしくお願い申し上げます。
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