Mashina Vremeni "Ten Years Later" (1987年、旧ソ連)
マシーナ・ヴレーメニは旧ソ連時代から活動しているロックバンド。バンド名はロシア語で「タイム・マシン」という意味。
このアルバムはまだロックが共産党政府によって禁じられていた70年代に制作されていた彼らの曲が収録されたもの。1985年にゴルバチョフによってペレストロイカが発布され、マシーナ・ヴレーメニも幾分か自由に音楽活動ができるようになるが、アルバムタイトル "Ten Years Later"は10年かけてやっと自分たちの音楽が公にできた、という感慨を表したものだと捉えていいだろう。
このアルバムに収録された曲は当時のロシア音楽には珍しい明るいサザン・ロック調の曲ではあるが、旧ソ連では欧米のロックに強く影響されたメッセージ性の強いアーティストは正式にアルバムがリリースできず、地下活動を余儀なくされていた。こういった「非公認バンド」は自分たちの音源をカセットテープに録音し、その音源はモスクワからウラジオストクまで闇ルートで流通していたらしい。アクワリウムもキノーもライブすらままならず、アパートの一室でひっそりと共産党政府から隠れて行うのがやっとだった。例外がVIA(ヴォーカル・インストゥルメンタル・アンサンブル)というカテゴリーのグループで、主に民謡をロック編成で演奏する音楽グループだった。
なお、このアルバムジャケットの右下に書かれたロシア語を訳すと "I love Beatles"。周囲の目を気にすることなく堂々とそう言える時代になったのだな、と感動を禁じ得ない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?