■政 治 資 金 の 問 題 点■
G・Wの真っ只中、有権者としては非常に不愉快な報が入った。
3/22に法学者である上脇教授が、萩生田氏・世耕氏に対し政治資金規正法虚偽記載などの告発状を提出していたが、5/2証拠不十分で不起訴となったのだ。
自民党の裏金問題については、ニュースなどでほとんどの有権者は知っているだろうが、読者の皆さんはどうしてこのような事が起きるのか考えた事はおありだろうか。
筆者なりの見解を書いてみたいと思う。
❏ザル法 政治資金規正法・政党助成法❏
まず第一に挙げられるのが、政治資金規正法・政党助成法の緩さだ。
どちらも国民の監視の下、議会制民主政治の重要さに鑑み、政治活動の自由を確保している。
これらによって、政治資金は政治家の政治活動であるなら<自由>に使って良いとされている。政治資金規正法が『規制』ではない理由もここにある。これを逆手に、政党助成金は例えキャバクラだろうが風俗だろうが、使って良いなどと豪語する輩もいるくらいだ。
そして、政治団体・政党の収支報告書の監視は、<国民>が行わなければならない。
あの法学者の上脇教授ですら自民党の裏金を告発する為に、相当の時間と労力を使ってやっと告発までに至ったのに、一般の有権者が収支報告書を確認する事など、実生活においてはほぼほぼ無理だ。
つまり、政治家・政党・政治団体の収支は、実質ノーチェックだと言える。
次に挙げるのは、罰則の少なさと罰則に至るまでの判断が非常に甘く曖昧な事である。
ニュースなどを見てご存知の方も多いと思うが、何千万円単位での裏金議員らしか起訴されていない。百万円単位の議員は党内での規定に則った懲戒のみだ。その上で、遡って収支報告書を訂正して終わりだ。
これが、一般の国民であればどうであろうか。収入を故意に隠していたのだから追徴課税は免れないだろう。
❏収支報告書ー収入ー❏
次は収支報告書についてだ。収支報告書についても、先程の政治資金規正法・政党助成法に規定されているわけだが、個別に見ていく。
まずは、国会議員の収入とはどんなものなのか見ていこう。
見てお分かりの通り、国会議員ともなると多くの優遇措置がある。
旧文通費と言われているものは、年間約2千万円も領収書も無く使用できる。
こんな事、一般の会社において考えられるだろうか。国民の1人当たりの平均収入は461万円(国税庁HP Ⅱ1年を通じて勤務した給与所得者 1平均給与より)の中、その何倍もの金額を自由に使える。これは税金から支給されている。
そして収入の報告だが、寄附金については贈収賄などの観点からも割と細かく規定されているが、それ以外はほとんど規定は無い。法で定められているのは、この収入はこの項目で書くことといったぐらいだ。ちなみに政治資金パーティーについては、機関紙誌の発行などその他の事業による収入へ事業ごとに合計して書くことになっている。
当然ながら、この収入は非課税である。裏金議員達は何故、収支報告書へ未記載しなければならなかったのだろうか。ニュースで聞く限りでは政策活動費という認識だった等といった言葉しか聞かれない。
政治には実際カネがかかるというが、それは<選挙の為>ということが大半ではないかと思われる。つまり、選挙にカネをかければかける程、当選しやすくなるということか。
このことには、甚だ疑問を禁じ得ない。
❏収支報告書ー支出ー❏
次に支出についてである。これも収入同様に政治資金規正法・政党助成法によって決められている。
※共通していること
・会計帳簿は1円単位で記入
・会計帳簿・領収書は3年間保管
※国会銀関係政治団体(注釈1)のみ1円単位で領収書の徴収義務がある
この表をご覧になっても分かる通り、収支報告書に記載すべき経費は合計のみであり、大きな支出のみである。世の中はインボイス制度が始まり、中小零細、個人事業主は悲鳴を上げているにも関わらずである。全くお気楽なものだ。もし領収書を取れなくても、収支報告書に記載しなくて良いものであれば徴難明細書の必要もなく、仮に記載しなくてはならないものであれば領収書等亡失等一覧表の記載・徴難明細書を記載し会計帳簿と合ってさえいれば問題無いとされている。
参照元(徴難) 総務省資料
領収書等が不存在のケースについて
https://www.soumu.go.jp/main_content/000310153.pdf
政治資金監査における誤りやすい事例集
https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/whatsnew/doc/%E3%80%90%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%92%E3%80%91%E6%94%BF%E6%B2%BB%E8%B3%87%E9%87%91%E7%9B%A3%E6%9F%BB%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E8%AA%A4%E3%82%8A%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84%E4%BA%8B%E4%BE%8B%E9%9B%86.pdf
❏収支報告書ー監査ー❏
次は特に重要な監査についてである。どのような形で監査が行われるかを見ていく。
閣僚などを巡る「政治とカネ」の問題が相次いだ為に、2007年12月に改正された政治資金規正法において、国会議員関係政治団体については、収支報告書、会計帳簿、領収書等について政治資金適正化委員会が行う研修を修了した、登録政治資金監査人(※)による政治資金監査を受けることが義務付けられた。また、1円単位の領収書徴収義務が規定された。
登録政治資金監査人は、弁護士・公認会計士・税理士のみしかなる事が出来ず、総務省に登録されなければならない。
政党や国政政党のみが持てる政治資金団体においては、公認会計士・監査法人及び党則、規約その他これらに相当するものに基づいて設けられた会計監査を行うべき者(注釈2)によって監査が行われる。
よって政党内に公認会計士がいれば、監事として監査を行う事が可能である。この場合は、第三者ではなく、いわゆる身内が行うことになる。
ここまで監査する者について説明してきたが、監査そのものに実は幾つも問題がある。
問題点①
派閥などの政策集団・その他団体は監査の対象外であること。
これは上の表にもあるが、これらには法律で監査は決められてない。
問題点②
2007年の支出に関する問題を受けて、2008年に国会議員関係政治団体に関して全ての領収書の開示や第三者による監査義務付けを柱とした改正法施行(2009年分の収支報告書から適用)された為、支出の数字と領収書の金額が合っているかという、支出に重きを置いた外形的なチェックであること。
問題点③
収入そのものはチェックされていない。
問題点④
監査人には妥当であるかどうかなどの判断権限はなく、議員の判断に委ねられている。
問題点⑤
何かあっても会計責任者からの説明のみで、監査人が銀行等へ確認することは出来ない。
❏法律改正に向けて❏
上でも記載したが、2007年に大幅な政治資金規正法改正が行われ、国会議員が関係する政治団体の範囲を法律上明確にし、この範囲に該当する政治団体に対して、収支報告の適正の確保及び透明性の向上のために一定の義務を課す事となったが、この度の自民党裏金議問題を見て分かる通り、この時の改正では全く足りていない事が明白となった。
そして現在、衆参共に<政治改革特別委員会>を設置し、再び改正を行おうとしている。
各党より、案は様々出ている様だが、話は簡単だ。上に述べた事と反対のことをすれば良いだけだ。
・判断を国民に委ねるだけではなく、全ての政治団体に対し監査するチェック機関を設ける
・罰則を強化し、また判断基準を明確にする
・旧文通費は、使途公開と領収書取得を義務付ける
・政治資金パーティーについても、寄附金同様に細かい規定を作る
・全ての費用に対し領収書取得を義務付け、収支報告書にも細かく記載する
・監査人及び監査機関の調べる為の権限を強化し明確にする
ここからは、みんつく党の動きを紹介したい。
まず、どの党よりも先駆けて2023年12月18日総理大臣・総務大臣へ宛てて出した要望書についてである。
画像では見づらいと思うので、上記リンクよりみんつく党HPで是非ご覧頂きたい。
この内容を説明すると
このように変更する事で、政治団体代表者(政党代表など)の責任をより追求しやすくなる。
また、合わせて「秘書並びに会計責任者の違法行為について国会議員の監督責任懈怠の罰則強化」を要望する事により、政治家の責任逃れを防ぎたいとするみんつく党の意思がある。
5年間で50億もの政策活動費を使っていた、自民党二階元幹事長の場合、約3500万円の政治資金パーティーの金額を収支報告書への未記載で、<梅沢秘書>が略式起訴され、罰金100万円公民権停止3年の略式命令が出された。
次はあけど幹事のブログからである。
あけど幹事はこの中で
・透明性の確保にはすべての寄付行為やパーティ券購入の金額について1円からすべて提供した個人、企業、団体の氏名を公開すべき
・1円からの領収書の添付必須化は当然の対処等述べている。
続いて大津党首のXの投稿である。
旧執行部による不正会計解明に奮闘している大津党首だからこそ、政治とカネ問題は他人事ではなく、政策の一丁目一番地とする事は当然であると思われる。
❏今の政治家に求められるもの❏
政治家が政治家の為に作った法律が、政治資金規正法であり、政党助成法である。自分達で作っておきながら、また立法府に携わる者でありながら、守れないのであれば厳しく改正するより他は無い。
筆者も政治家の良心や政治倫理観の欠如に対して強い憤りを感じている。
政治家自身が公正公明に政治活動が出来ないのであれば、国民の命と財産を守り、国民の為の政策など作る事は出来ないのではないだろうか。
今の日本には、強い正義感と政治倫理観を備えた政治家が必要であると考える。
債権者破産申し立てによる破産手続き開始命令が出されたみんつく党や大津党首には、まだまだ困難が待ち構えているが、それすらもバネにし、今の強い正義感と正しい政治倫理観を持ち続け、素晴らしい党・政治家になって欲しいと心から願うものである。