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食品卸売り業 造田英則|「北海道の食材」で世界は変わる!【職業図鑑No.001】
百貨店やスーパーで「北海道物産展」の文字を見たことがある人はいるでしょう。
それもそのはず、全国の物産展でダントツの人気を誇るのが北海道だからです。
北海道に行ったことがない人も、北海道の食材がおいしいことはよくご存知ではないでしょうか?
今回は、北海道札幌市で食品卸売り会社を営む、造田 英則さんにお話を伺いました!
ただ食べておいしいだけではない、北海道食材の魅力や世界を変える可能性について、熱く語っていただきます!
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業務用から個人用、ジビエへと展開予定
―― 造田さんは現在、北海道の食材を全国へ販売する事業をなさっていますが、なぜそれをはじめようと思われたのでしょう?
もともとはうちの娘が居酒屋を札幌でやろうということで始めたんです。でも開業したのが令和元年でコロナが流行り、居酒屋を始めるのをやめてノースシーロード株式会社を作りました。
和訳すれば「北海道」なんですけど…(笑)
―― あ、たしかに!(笑)
現在は業務用食材の売り上げが95%ですが、ネットショップも立ち上げて、これから個人向けの販売にも力を入れていこうと思っています。
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もうひとつはジビエ。北海道で増えているエゾシカを、食用として販売するつもりです。
今は「ふらの和牛」の販売も行っていますよ? 柔らかくておいしいお肉で私も好きなんですが、なぜジビエをやろうと思ったのか。それは北海道にとっても、買ってくれた人にもいいことばかりだからです。
私はジビエを「究極のお肉」だと思っているんです。適度に運動しているから脂肪も少ないし、自然のもの(ハーブ)を食べているし…。ある大学の先生がエゾシカのお肉は「食べる漢方薬」との研究結果も出していました。特に女性におすすめという研究結果も出ています。
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―― それスゴイお肉ですよね…!
あと、エゾシカは捨てる部分が内臓ぐらいしかないんです。肉はもちろん、角はキャンプ用品やインテリアに、皮は工芸品にと…。デザイナーさん曰く「イイもの」だそうです。デザインのことはわかりませんが(笑)
何より食べておいしい!全国のジビエ料理店さんや焼肉屋さんにエゾシカを提供したいというのが、いまの私の目標です。
で、北海道にもいいことがありまして…。
エゾシカは増えて害獣扱いされていて、農業被害は50億円とも。北海道の中にはそういう被害を感じていない地域もあるんですが、野菜だけじゃなくて花も食べられてしまう地域もあるんです。
それを駆除するだけではなくおいしく食べたり、工芸品として加工したりすれば、三方よしになるんです。
長くなっちゃいましたけど、これが私のビジネスで、やっていることですね(笑)
ストーリーが詰まった北海道の食材を全国へ
―― 造田さんが飲食店さんやコックさんに卸す食材を購入するメリットは、ズバリなんでしょう?
生産者のストーリーが詰まった食材を、お客さんが欲しい形で提供できることです。
コックさんがお客さんの目の前で、食材のことを語りながら焼くらしいんです。例えば北海道のリゾートホテルなんかで出す「ふらの和牛」もそう。実際に牧場に来てもらって、どうやって育てているのか、なぜ柔らかい肉質になるのかを現場で知ってもらえます。
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必要ならお客さんが希望する形に、提携している工場で加工してから卸しすのもやっています。「地元の食材」だからでは伝わらない食材の良さもあり、PB(プライベートブランド)になる食材でブランディングできる良さもあります。
ただ、本当は調理の現場もイチから食材を調理したいらしいんです。でも今はコックさんの人手も少なくて若手が勉強できる機会もないから、加工品を使わざるを得ない。うちなら大手の食品加工会社にはできない、ストーリーを持たせられるのが強みですねぇ。
―― なるほど!じゃあ「おいしい」と言ってもらえる機会も多いのでは?
去年から今年にかけて、サロマ湖の牡蠣を東京に向けて販売してみたんです。そしたら「おいしい」「こんなの食べたことない」と評価をいただきました。でも私は食べ比べしたことがないのでわからず、生産者さんに聞いてみたんですね。「なんでこんなにおいしいの?」って。
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(引用:北海道ぎょれん「浜通信 ひと・くらし」)
生産方法とかに違いがあったんですが、とにかく「おいしい」と言ってもらえるのが、メチャクチャうれしいんです!
私は(生産者とお客さまの)中間業者ですけど、生産者さんは私以上にうれしいと思いますよ。
―― 「思います」ってことは、「おいしい」って声は生産者さんに届かないんですか?
届かないみたいです。
会社を立ち上げたときにお話した、私と同じ年ぐらいの農家さん(牛を飼育されている方)の夢は「かわいく育てた牛がすき焼きになったとか、スーパーで売られているとかをわかるようにすること」だったんです。
大切に育てた牛でも、農協さんに売ったらそれ以降はわからなくなっちゃうんですって。
非常に残念なお話ですが、牡蠣の話もそうでしたけど、生産者さんに「おいしい」を届けるのも私の仕事かもしれませんね。
「天狗」からの挑戦は北海道から世界へ羽ばたく
―― 今日のインタビューで、造田さんがパワフルで積極的な方だとよくわかりました!でもそうなった「きっかけ」とかあったんでしょうか?
私、たしか56歳のころに会社を辞めたんですね。職人気質のコックさん相手に30年営業をやってきたので「一人でもビジネスできるだろう」という自信があったんです。
―― 言い方はアレですが、天狗になっていたと…?
でも、20代でビジネスをやっている人たちを見て、自分の惨めさを感じましたね。彼らは学生時代から頑張ってやっている。私が20代のころなんて、生きるのに必死でしたからねぇ(笑)
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(引用:マイナビ独立「【2020年版 意識調査】 独立・開業に興味がある人の割合はどう変わった? 独立・開業後の目標年収はどれくらい?」)
だから、この人たちと「何か」やったら変わるんじゃないかな?と思って…。ネットショップの立ち上げもそれが動機です。5円、10円高くても「北海道のおいしいものが食べたい」という方に届けたいんです。
それを含めてなんですけど、エゾシカのジビエ販売も、私は通過点だと思っています。これで終わりじゃないです。
―― …といいますと?
最後は海外においしいものを持って行って、人を幸せにしたいんですね。
カンボジアに目を向けているんですけど、農業国で経済発展していると言っても貧富の差は激しくて…。知り合いに聞いたんですが、ビルが建ってもその掃除の仕方を知らないらしいんです。やり方を知らないんですから当たり前ですけどね。
だからこういう人たちを育てるために、現地法人を作って現地で育てる。お金の問題を解決できると思うんです。
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(引用:厚生労働省「外国人労働者の現状」)
そこに北海道のおいしいものを持って行く。そうすると、食べたいものを食べてもらえるようになります。人間っておいしいものを食べたら幸せになるじゃないですか?だからやりたいんです。
年齢的に時間もないんですけど、そんな仕事もやりたいなと思うんですね。
―― スゴイ…!壮大ですね…!
日本の労働力問題も解決できるんじゃないかな?とも思っています。
知り合いの加工工場は人がいなくて困ってるんです。日本人は何かと文句つけるのに、一方でベトナムの方はすごく頑張るんだとか。
それに東南アジアの人は、日本に来るのが夢っていう人もいるらしくてですね。技能実習生でもいいんですけど、現地で育てて日本に来てもらえれば、日本の労働問題も解決できるし現地の人も幸せになるんじゃないかな?と思ってますね。
どんな形でやっていくかは考えますけど、焼肉屋さんか回らないお寿司屋さんか何かがいいんじゃないかと考えてます。
まぁ、腹決めないとできませんけどね(笑)
―― 造田さんにとって「仕事」ってなんですか?
知り合いに言われたんですけど「人に迷惑かけなければ、自分の好きなことやっていいと思う」と言われたんです。このまま年金もらって終わってもよかったんですけど、自分のやりたいことをやろうと思ってますね。
それがたまたまこの仕事だったんですよね。ありがたい話です。
編集後記
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今回、私たちの食生活を支える食品卸売り業の造田さんを取材させていただき、北海道と食材に対する情熱にあふれた人だなというのが率直な感想です。
ただ売るだけではなく、そこに物語を持たせる。しかもその物語は関わる全ての人を幸せにすることまで考えていることがよくわかるお話でした。
食材への愛情、お仕事の展望や情熱を1時間という短い時間で語っていただいた造田さん、本当にありがとうございました!
造田さんのお仕事をもっと知りたいという方は、ぜひこちらもご覧くださいませ。
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