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知りたかった人、それは知らなかった人

急に出会って急に冷たい空気になって
急に離れてしまった人がいる。
ステキな人だった、とても。
心が好きだった。
もっと知りたかった。
2回しか会っていないのに懐かしくて
変に緊張しない。
もう何度も会っているみたいだった。
一緒の空間にいるととても落ち着く。
いつも、不安で仕方のない私の心が
一気に安定した。
まさに支え合える人だった。
私だけが思っていたこと、だったとしても
彼のことが好きだった。
きっと好きだったんだと思う。

素直になれた。
2回しか会っていないのに
甘えてしまった。
自分に嘘をつかなくても大丈夫な人だったから。
嫌われてもいいと思った。
だから自分をさらけ出した。
2回しか会ってないのに
自分から距離を縮めてしまった。
そう、嫌われてもいいと思ったから。
もしかしたら今日が最後かもしれないと思って
彼に寄り添った。

後悔ないはずだったのに
もっと彼に触れたかった。
時間が経てば経つだけ想いは募っていった。
もっと彼に寄り添いたかった。
あの時間をもっと噛み締めて過ごしたかった。
今日が最後だと思って会った日だったのに
やり尽くしたつもりだったのに
彼のこと、知らなかった。

知りたかった。
彼のこと。
知らなかった、彼のこと。

彼が生まれ育った町を知りたかった。
彼の思い出を知りたかった。
彼の好きな場所を知りたかった。
彼がどんな世界で今の彼をつくったのか、
彼はどんな世界を見てきたのか
私は知らなかった。

好きな季節はなんだったのだろう。
彼はどんな景色が好きなのだろう。

知らなかった。知らなかったこと。
こんなにある。

全部、急なことだったから私ね
気持ちが追いつかなくて
寝ても覚めない生まれ変われない。
まるでずっと夜の暗闇に沈んでいるみたい。
起き上がれない気持ちが続いている。
急に出会って急に好きになった。
気持ちは冷めていないのに
2人の間の空気は急に冷たくなった気がした。
そして彼のもとを去ろうと決めた。
何故だろう。
私は彼の大切な人にはなれないと、ふと予感してしまったから.
彼は私のことを好きにならない気がしたから、
自分から去った方が傷付かないと思った。
だから私は急に離れてしまったみたい。

彼の大切な人になりたかった。
私の大切な人にしたかった。
時間がかかっても
彼のことを、彼しか知らないことを
全て知りたかった。
そして
私のことを、私しか知らなかったことを
全部彼に知らせたかった。
そういう人だった。
まるで夢みたいだった。
もしも夢の中で出会っていたら
彼と現実では出会えなかったのだろうか。
だから今、夢で会えたら
現実ではもう二度と会えないのだろうか。

知りたかった人。
知らなかったのに
好きになった人。
たった短い時間
好きだった人。

自分から抱きしめたかった人。
守ってあげたかった人。
悲しい時に寄り添ってあげたかった人。
弱いところも
人には言えないことも
全部受け止めてあげたかった人。
分かってあげたかった人。
他の人が分かってくれないことを
分かってあげたかった人。

きっともう二度と
会えない人。

知りたかった人。

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